第10回: 差別訴訟を防ぐ人事対策(4):履歴書と求人広告
「採用から解雇に至るまで雇用の全過程において、差別訴訟を防ぐ上で雇用者にとり最も重要なのは、従業員を業務遂行能力のみで評価すること」という点を過去のコラムで強調しました。この原則は採用に至る段階、すなわち人事募集時にも通用します。今回は、企業のみならず応募者へのアドバイスも加えた上で、履歴書と求人広告に焦点をおいてご説明します。
■ 履歴書
日本で伝統的に用いられてきた履歴書の記載事項には、日本の雇用文化が反映されていると言えるでしょう。写真の添付に加えて、生年月日や家族構成、趣味などを記入する欄があるという事実は、主観的な判断によって採用・非採用を決定しやすい日本企業の姿勢を表しているという見方ができます。アメリカの人事担当者も主観的な要素に頼って採用を決断することは多々あります。主観的要素そのものが全面的に違法となるわけではありませんが、タイトルセブンを中心とする雇用機会均等法では、人種・肌の色・出身国・性別・宗教・年齢・身体障害など一定の基準に従って採用を絞ることを違法にしています(詳細は過去のコラム第1-6回をご参照下さい)。この観点から見ると、日本の履歴書には問題があることになります。まず、写真添付によって、応募者の性別や人種、年齢、また場合によっては身体障害があるかということも一目瞭然になります。家族構成や趣味の記入は、時おりアメリカ人による履歴書にも見かけることがありますが、これは職務との関連性に欠けるため、不必要な情報です。企業側が独自の応募用紙を準備する際には、差別と受け止められる記入事項が無いように細心の注意を払うべきです。
経験や技能を重んじるアメリカ企業において、履歴書で最も重要視されるのは、
"Accomplishments"、すなわち、どのようなプロジェクトを手がけ、どう評価を受けたかということを示すヵ所です。応募者へのアドバイスですが、このヵ所に具体的に業績を記し、積極的に自分をアピールするようにしましょう。その点、学生だと不利になるように思われるかも知れませんが、在学中のパート・タイム・ジョブやインターンシップ、ボランティア活動なども経験として加えることができます。それも無い場合には、授業の一環として手がけたプロジェクトや教授の元でのリサーチ、執筆した論文なども選択肢として考慮しましょう。
■ 求人広告
求人広告を出す上で注意が必要なのは、差別的と解釈されない言語の使用です。日本企業の求人広告では、「新卒者」などのように年齢差別につながる言葉や、「女性ならではの柔和さが生かせる仕事です」といった固定観念を連想させる文章が用いられることがありますが、アメリカでは許されません。特定の性別を連想させないように、"man"、"woman"、"male"、"female" などの代りに"person"、"individual"、"applicant"、また、"attractive" の代りに "well-groomed" を使うといった配慮が必要です。
アメリカでも、かつては性別を明確にした職業名(例: stewardess、 maid、repairmanなど)が使われていましたが、それも大きく変わりました。求人広告で用いられるべき中性語の例を挙げてみます。
| 差別的とされる用語 |
代替用語 |
| stewardess/steward |
flight attendant, cabin attendant |
| waitress |
server |
| sales lady |
salesperson/sales clerk |
| policeman |
police officer |
| fireman |
firefighter |
| maid |
housekeeper |
| repairman |
repairer,technician |
次回は採用面接についてお話しします。
(2005年4月)
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お断り = このコラムはあくまでも一般的な情報を読者に提供するのが目的です。法的トラブルが起こった場合は個々のおかれた具体的な状況によって法律の適用が異なることもあり得ますので、個人的に弁護士に相談されることをお勧めいたします。また、当コラムでは連邦法を中心に説明していますが、雇用関係には州法、更にはローカル法(市や郡の条例など)が関連してくる場合もあります。
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