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第6回 : "S コーポレーション"とは

前回までのコラムで、株式会社や有限会社など有限責任法人を設立する場合の州法上の利点についてお話しましたが、同時に、それには経費が伴うことも紹介しました。株式会社にとってその経費のうち大きなものは、連邦所得税です。たいていの株式会社では、法人レベルでの課税後の利益が株主に分配され、株主もまたその収入につき課税されるという、「二重税」が生じるのです。個人ビジネスなら一度の課税で済むことと比べると対照的です。

そこで連邦議会は1950年代に、小規模ビジネスの株式会社にとってこの二重課税は負担が大きすぎるとの立場をとり、一定の小規模ビジネス株式会社経営者は法人の収益または損失を直接、自身のものとして取り扱えるものとしました。この法律が内国歳入法典に S 章として編入された結果、該当する法人は「S コーポレーション」または 「S コープ」と呼ばれています。株主が S 章適用を選択するにはその会社が、A)米国内の会社であり、B)株主は、非永住権者でない個人か一定の資産または信託であること かつ C)株主数が75人以下で D)株式は1種類のみ、であることが必要です。

以上のように、この S コーポレーション法は、小規模ビジネス株式会社の経営者にとって便利なものですが、いくつかの点で注意が必要です。

まず、株主の1人でも非永住権者の場合は適用できません。これは、S 章適用の開始要件であるばかりか、継続要件でもありますので、もし株主の1人が日本に永久帰国すれば、S コーポレーションとしての扱いができなくなります。 いったん S コーポレーションでなくなった場合、再度 S コーポレーションになりうるのはそれから5年目のことです。このような事態に対しては、株主の帰国の際には株式を会社に売り渡すものとするとの合意を取り付けておくとよいでしょう。

日本人経営のビジネスとしてもう1つ気をつけなければならない点は、S コーポレーションのオーナーは法人であってはならないことです。日本法人は往々にして100%子会社として米国法人を設立しますが、例えば日本の「株式会社クスノセ」が米国に「クスノセ(USA)社」を設立した場合、「クスノセ(USA)社」は S コーポレーションにはなることはできません。S 章適用の利点は大きくとも、会社が所有する場合は S コーポレーションになることは認められていないのです。

ところで、大きな問題でありながらあまり日系のビジネスに知られていないのが、1種類以上の株式を発行した株式会社は S コーポレーションになることはできないことです。「一般株」と「優先株」が存在する場合や、「議決権のある株」と「議決権なき株」がある場合は、S コーポレーションにはなることはできません。

以上でお分かりのように、S コーポレーションとなり得るのは、どちらかと言えば単純構造で小規模なローカル・ビジネスです。一旦これらの要件を満たせば、二重課税がなくなるための税率低下を主なものとして、S 章適用の利益は大きいものがあります。なお、法人設立に際し、S コーポレーションとなるには期限の制約があることにご注意下さい。また、C コーポレーションとして設立された法人も S コーポレーションに変更することはできますが、変更前までの資産利得については法人税が課税され、それは S コーポレーションを選択してから10年以内にわたって継続されます。S コーポレーションの選択または S コーポレーションへの変更については、会計士または弁護士にご相談下さい。


(2005年11月)

= お断り =
このコラムは一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的勧告もしくはそれに代わるものと見なされるべきではありません。このコラムは、執筆担当者と読者の間に、弁護士とクライアントという関係を意図するものでも、そのような関係を築くものでもありません。ここに含まれている内容は概括的なものであり、読者個人の法的なまたは事実に基づく状況には適合しない可能性があります。このコラムから得られる情報に基づいて何らかの行動を起こされる場合は、必ず専門家に相談するようにしてください。
第32回 米国ビジネス法についての指針
第31回 小規模ビジネス売却にあたっての税法上の考慮
第30回 『1031Tax Exchange』 を利用する場合における注意事項
第29回 有限会社メンバーシップによる債務保証の完全化
第28回 資産売却に際する債務不継承についての例外
第27回 州法5373 ワシントン州失業保険プログラムの対象拡大
第26回 2007年の特許法改定について
第25回 ワシントン州消費者保護法(Consumer Protection Act:CPA)後編
第24回 ワシントン州消費者保護法(Consumer Protection Act:CPA)前編
第23回 責任制限条項(Exculpatory Clauses)
第22回 共有財産の売却に際しての配偶者・家庭内パートナーの同意
第21回 なぜ有限責任会社(Limited Liability Company)は人気があるのか?
第20回 バラード・スクエア判決とシングル・プロジェクト法人
第19回 リース契約と賃料支払能力
第18回 個人保証の重要性
第17回 商標の上手な選び方
第16回 米国著作権
第15回 地役権(ちえきけん)
第14回 ワシントン州の不動産消費税(REET)
第13回 取締役及び役員の賠償責任保険(D&O Insurance)について
第12回 不動産を担保とする貸金契約
第11回 株式プラン
第10回 単独所有と有限責任主体 (法人) (2)
第9回 担保権の重要性
第8回 Buy-Sell Agreements ("売り渡し・買い取り規定")
第7回 既存ビジネスの買収
第6回 "S コーポレーション"とは
第5回 単独所有権と有限責任法人 (1)
第4回 国際商標登録
第3回 商標
第2回 コマーシャル・リース
第1回 ビジネス・ライセンスの取得
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