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第4回 : 起業に際しての事業形態

アメリカは日本に比べて「起業がしやすい」とよく言われます。確かに、個人事業にしても、法人登記にしても、手続的には簡単で、ステップを踏めばスムーズに事業を始めることが可能と言えます。そこで、今回は起業をテーマに、起業に際してのさまざまな事業形態について少し解説したいと思います。


はじめに:起業するということ

さて起業するということ、つまり自分自身でビジネスを始めるということ、それはとてもエキサイティングなことです。それは、自分の持っているアイディア・技術・製品などをビジネスとして事業化することにより、自分自身の夢や希望などを具体的に実現することが可能になるからです。また起業した場合、自分自身で事業の経営をになうことにより、努力の成果を直接体感することもでき、また、自分の将来や今後の方向性を自分自身で決断し、無限の可能性を持ってさまざまなビジネス・チャンスに挑戦し、自らビジネスを大きく発展させることができます。

一方、成功の過程でリスクを伴わないビジネスはもちろんありません。起業すると経営者として社会・取引先・社員などに対し多くの責任が増えますので、将来の可能性を得ると同時に、大きな社会的責任をになう覚悟も必要となります。起業は決して楽しいことばかりではないかもしれませんが、適切な準備と計画性を持って臨むことにより、リスクを回避することや、将来起こり得る被害を最小限に抑えることは可能ですので、あきらめずに成功を追求する思いを持ち続けることがとても大切と言えるでしょう。また、事業を成功に導くやり甲斐、困難を乗り越えた時の達成感などは、会社勤めではなかなか味わうことができない経験とも言えます。人生は一度だけですし、皆さんの夢を実現するためにも、起業は1つの選択肢として、考えてみられてはいかがでしょうか。

ところで起業する際には、事業名や所在地などの決定、または登録など、諸々の手続きを踏むことになりますが、その中でも事業形態の選択は重要な決断事項の1つといえます。米国には、Sole proprietor(個人事業)、Partnership(パートナーシップ)、Corporation(法人)、Limited Liability Corporation(LLC有限責任法人)いう事業形態がありますが、事業の経営的・税務的、あるいは法務的観点、また連邦法、各州法とのかねあいなどから判断し、ご自身のビジネスに最適な形態を選択することが大切といえます。各々の事業形態がどのように異なるのか、以下に簡単に解説したいと思います。


さまざまな事業形態

Sole proprietor(個人事業主)

Sole proprietor = 個人事業主は、起業が最も簡単で、維持する上でも容易な事業形態と言えます。ビジネス・ライセンスなどを取得して事業をはじめることができ、自身の事業名(Fictitious business name)を登録することもできます(事業の内容により、必要となるライセンスを適宜取得する必要があります)。個人が事業の経営権を掌握し、即座の経営判断が可能、また利益の独占ができるというメリットがある代わりに、事業責任やリスクも個人が無限責任を負うことになるというデメリットがあります。税務上は、収入・支出などは個人の確定申告書(Schedule C上)で行い、個人のレベルで課税がされます。


Partnership(パートナーシップ)

Partnership = パートナーシップは、2名以上の個人が、共通した事業目的のために事業活動を行う際の事業形態となります。各々のパートナーが資金・財産、あるいは技術・サービスなどを拠出する代わりに、パートナーシップの権利の配分を受け、最終的な収益はその持分比率で分配されます。分配された収益は、パートナー個人のレベルで課税され、つまり個人が確定申告を行うため、パートナーシップのレベルでは課税されません。またパートナーシップには、GP(General Partnership)、LP(Limited Partnership)と、弁護士、会計士などの専門家のみが対象となるLLP(Limited Liability Partnership)の3種類あり、各々のパートナーの無限・有限責任の取り方によって、選択する種類が異なります。パートナーシップのメリットは、複数のパートナーと共に個人レベルよりは大きな事業を展開することが可能になるということですが、General Partner になると個人事業主と同様に、当人が無限責任を負わなければならないというデメリットがあります。


Corporation(法人)

Corporation = 法人は、出資者(株主)からの資金・財産などの出資・提供により形成される事業形態で、米国では事業を営む州の会社法に基づき設立・登記を行い、運営されることになります。法人においては出資者と経営者は法的に分離され、出資者は出資額までの事業責任・リスクを負うことになります。法人のメリットは、この事業責任が有限責任になる、あるいは広く資本を募ることにより、大きなビジネス・事業を展開することが可能となることです。その代わり、デメリットとしては、経営判断に際して個人事業と比べて手続きが容易でないこと、あるいは税務面では、会社レベルで法人税が課せられた後、出資者レベルで配当に関する所得税が課せられる(二重課税)という点などがあります。

なお、法人には、特定の条件を満たす場合に選択可能なS Corporationという形態もあります。S Corporationについては、米国居住者であり、株主数にも制限があるなど、事業組織としての制限が諸々ありますが、法人レベルでの課税を行わず、個人レベルでのみ課税されるという、二重課税の負担を避けられるメリットがあります。


Limited Liability Corporation(LLC有限責任法人)

Limited Liability Corporation = LLC有限責任法人は他の事業形態に比べ比較的に新しい事業形態で、法人、パートナーシップ、個人事業主のメリットをそれぞれ合わせ持っています。個人、複数の出資者のいずれでも設立でき、メリットとしては法人と比べ設立が容易であり、パートナーシップに比べ経営権の制限が可能で、かつ個人事業主に比べ外部より資本を募ることができる、などが挙げられます。さらに、法人のメリットである有限責任であること、つまり個人が無限責任を負うリスクを軽減することができ、また税務面においては法人レベルではなく、つまり個人事業主やパートナーシップと同様に、個人レベルで課税を受けることにより、二重課税を回避することが可能にもなります。、一方、デメリットとしては、法人と同様に最低限の事業税の支払義務が伴うこと、また新しい事業形態のため法人に比べ訴訟時の判例などが少ないため、今後も LLC の規定に関する動向については注視する必要があるといえます(注:カリフォルニア州においては、Professional Limited Liability Corporationは認められていません)。

起業に際しては、これらの事業形態の選択に始まり、納税者番号(Tax ID#)の取得、各種機関への登録、届出など、踏まなければならないさまざまな手続きがあります。これら手続きは専門知識を要するものも多々ありますので、会計士や弁護士などの専門家にあらかじめ相談し、適切な処理をすることが大切といえます。


起業を志す方へ

起業することは難しいことでしょうか?資本金を募ったり、人材を採用したり、難しく考えると自分には起業は無理ではないか、と考えられる方も少なくないかと思います。しかし、子供の頃であれば家の掃除や買い物を頼まれて両親からお小遣いをもらったり、あるいは引越しの時にガレージセールでいらなくなったものを売ったりした記憶はありませんか?ビジネスは、実は大きなものばかりでなく、意外と身近なところに転がっていたりします。千里の道も一歩から、ではありませんが、ビジネスも身近なところから始め、後に大きなものとなる可能性はいくらでもあります。大切なことは、何かを達成したいという思い、あるいはチャレンジし続ける気持ちかもしれません。確かに、起業の際には多少の労力を伴いますが、無限の可能性を秘めたビジネスにチャレンジする機会でもあります。旺盛なチャレンジ精神、また正しい知識と準備をして起業すれば、ビジネス・チャンスも大きなものになるといえるでしょう。

(2006年7月)

= お断り =
コラムを通して提供している情報は、一般的、および教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 このコラムから得られる情報に基づいて何らかの行動を起こされる場合は、必ず会計・税務の専門家に相談するようにしてください。
第4回 起業に際しての事業形態
第3回 課税対象所得の範囲とは?
第2回 私は確定申告をする必要性があるのでしょうか?(2)
第1回 私は確定申告をする必要性があるのでしょうか?(1)
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