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留学生座談会「なぜシアトルを選んだの?」@ SIJP 学生部

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今回、SIJP に関わっている・関わった学生の皆さんとの座談会を行いました。最初はかな~り緊張していたみなさんも、最後には「いいこと言うー!」「こんなにみんなとそれぞれの考えとか話したことなかったんで面白かった!」「これ、いいですね。またやりたい!」と盛り上がりました!モデレータは SIJP のスタッフで、後進のサポートに熱心な IT 企業社員の鷹松弘章さんでした。

もくじ

参加者のご紹介

吉田拓穂:25歳。横浜出身。ハイライン・カレッジを卒業し、シアトル大学への編入準備中。専攻はビジネス・マネジメント。

伊集院みほ:21歳。東京出身。早稲田大学在学中、ワシントン州日本文化会館(JCCCW)での3ヶ月の短期インターンシップでシアトルへ。2018年卒として就職活動の準備中。将来はアメリカに留学する人を支援する仕事を希望。

有賀こうすけ:22歳。東京出身。秋田の大学から、1年間コロラド州に交換留学後、ワシントン大学に編入。コンピュータ・サイエンス専攻。2017年春卒業予定。その後は大学院に進み、AI(人工知能)を研究するのが目標。

髙木紫央:20歳。愛知県名古屋出身。高校卒業後、コロラドの語学学校を経て、シアトル・セントラル・カレッジに編入。4年制大学に編入予定。

どうしてシアトルを選んだの?

吉田:僕の場合は留学エージェントに「横浜に似てる」と言われたからです。「チャイナタウンもあるし、海が近いし、夜景が綺麗だし、四季もちゃんとあるし、横浜に似てるよ」と。それと、「アメリカ英語を学ぶなら、スタンダードに近くてきれいな発音の人が人が多い」と。治安がいいと言われたのも覚えています。

ジャングルシティ:他の皆さんも同じようなイメージでしたか?

伊集院:私は去年、1日だけ観光で寄ったことがあって。治安も良くて、景色もきれいで、ご飯もまあまあ良くて(笑)、長期滞在とか住むという場合にいいんじゃないかと思いました。そのあとから、いろんな国籍の人がいる、アメリカ英語が学べる、と教えられて、シアトルに決めました。

鷹松:シアトル以外のオプションはありました?

伊集院:私の場合は早稲田大学にいながら3ヶ月のインターンシップで来ているので、みなさんとはちょっと違うんですが、インターンシップの受け入れ先のリストがあって、それを決めて国が決まるという流れでした。シンガポールやオーストラリアにも「行きたい」と思った受け入れ先があったのですが、アメリカ英語をずっと勉強してきたので、3ヶ月という短期間で効果を発揮するにはやはりシアトルがいいと思いました。

有賀:僕は大学で場所を選びました。コンピュータ・サイエンスを勉強したくて、公立の大学に行きたかったので、ワシントン大学か、UCバークレーがいいかなと思っていました。最初はコロラド州で1年交換留学をしていたので、そのままコロラド州でもいいかなとも思ったのですが、ボルダーは大学の街で、まわりにあまり企業がないんです。卒業後のこととか考えると、企業が学校のまわりにあるのがいいなと。シアトルは IT 企業も大きいところがありますし、大学も充実しているので選びました。

大学の周りに企業があるシアトルのメリットは

鷹松:大学のまわりに企業があるほうがいいというのは、就職するときですか?

有賀:必ずしも就職ではなくて、インターンシップでもまわりに企業があると情報が入ってきますよね。僕は東京出身で、最初は秋田の大学に進学したのですが、ボルダーや秋田にいると、東京と比べて情報自体の量に差があると感じました。なので、ある程度の都会にいれば、入ってくる情報も、得られるチャンスも、違うと考えています。

髙木:私の場合、叔母が国際結婚してコロラド州のボルダーに住んでいるので、幼い頃から何度か遊びに行っていたこともあり、ボルダーで大学に行くものと思っていました。そして、高校を卒業してボルダーの語学学校に入学したあと、有賀さんと出会って、それで彼がシアトルに行くと言うので、一緒に来ました。シアトルは雨が多いと聞いて心配していたのですが、日本から近いとか、海があるとか知って、それなら魚も食べられるし、アジア系のスーパーマーケットもあって、コロラドより食生活が豊かになるだろうと思いました(笑)。

鷹松:でも、西海岸で、なぜサンフランシスコじゃなくて、シアトルなんでしょう?

吉田:僕はシアトルで語学学校を終わったら、サンフランシスコに行こうと思っていました。それをやめたのは、サンフランシスコに行った友達が、「物価が高い割に生活の質が高くない」「シアトルではサポートしてくれるコミュニティがあるけれども、サンフランシスコではみんな必死で競い合ってるから、コミュニティがそこまで優しくない」と言うんです。

髙木:実は私、大学を決めたのも、ジャングルシティで大学の紹介を見て、なんです。来る前からジャングルシティを読んでいました。

有賀:すごく読んだよね。掲示板もたくさん読みました。物の売買掲示板・・・

髙木:生活ガイド、運転免許、なんでも情報がいっぱいあって。

ジャングルシティ:嬉しいです!ありがとうございます。

髙木:そんなふうにジャングルシティで情報を集められたので、心配はシアトルの雨だけになりました(笑)。

有賀:そう考えると、サンフランシスコって、ジャングルシティみたいなサイトないよね。

髙木:そうですね。やっぱり街が広すぎるから?管理できないのかも。

有賀:日本人が分散しているからかな。

留学の目標

吉田:シアトルに来た理由は、日本のメディアの報道姿勢や報道している内容に、ニューズウィークなどと隔たりを感じたからです。宗教的なことなども日本は全然取り扱いませんし、日本ではとてもおおまかな報道しかしないか、取り上げない。だから、海外で英語で流れている情報を読んでおかないと、どういう流れでこういう結果になっているのかわからないので、アメリカでいろいろな視点を学びたいというのが、一番の理由でした。そして日本では英語が苦手だったので、英語環境に身を置きたかったというのもあります。

鷹松:シアトルに来て英語環境になったわけですが、そこでどんなことをしてみたのでしょう。

吉田:語学学校についてちゃんとしたイメージがなかったのですが、ヨーロッパ、アジア、南アメリカ、アラブ諸国、いろいろな国の人がいて、彼らの文化を学びました。英語に関しては 、彼らは訛りがあっても、どこにでも入っていき、TOEFL も一気に高得点を取るんですよね。そういうのを見ていて、きれいな英語である必要はなく、伝わる英語が必要なのだと感じました。

伊集院:私の場合、シアトルに来たのは、日本で学べる英語じゃない英語、コミュニケーションに使える、通用する英語を学びたかったからです。それと、いろんな価値観を持った人の中で働く経験をしてみたかった。日本の大学のゼミで国際ヒューマン・リソースを勉強しているのですが、海外の多国籍企業の人事の方を訪問して、「世界で活躍する人はどういう人か」というヒアリングをすると、みなさんがいつも「一度でもいろいろな文化や価値観を持った、いろいろな人の中で働いたことがある人・生活したことがある人は柔軟性が全然違う」とおっしゃるんですよ。「言葉ができるかできないかじゃない、考え方が違うんだ」と。海外派遣者を現地の人が見た評価のアンケートでも「何が足りないか」という問いに、「柔軟性」という結果が出ていました。それで、「じゃあ、就職活動をする前に、それを自分で見た方がいいんだ」と考えて、シアトルに来ました。それが本当なのか検証したかったというか(笑)。日本から20年間出たことがなく、海外から見た日本という客観的な目を持ったことがなかったので、日本にはどういう魅力があるのか、どういう問題があるのか、それを学びたかったというのもあります。

鷹松・ジャングルシティ:シアトルはダイバーシティがあるとされる街ですしね。

有賀:僕は AI(人工知能)の研究をしたくって。最先端の研究をしたかったんですが、日本でそれに関連した記事や論文を読んでも、やはり理論も企業もアメリカから来ています。日本では活発じゃない。もともと大学院から留学しようと思っていたんですが、コロラド州に一年留学してみて、「早い方がいい」と考え直しました。

鷹松:早い方がいいと思ったのはどうしてですか

有賀:一つは英語ですね。大学院から留学した人もたくさん見たんですが、大学院から行くとアメリカのカルチャーになかなかなじめないんですよ。大学では学生同士のやりとりが多いですよね。結構仲良くなれたりしますし。でも、大学院になると自分の研究に精一杯で、授業をとって、研究を一生懸命やって、人と人との関係が希薄になりがちだなと思いました。それで、「これからアメリカでやっていくには、早く来た方がいい」と。高校から進学した秋田の大学にはコンピュータ・サイエンスがなかったのですが、総合大学ならいろいろな専攻があって、いろいろな勉強ができる。だから、僕の場合、大学を変えることにも意義があったし、日本では編入はしづらくてもアメリカは結構簡単に編入できて、大学院で人工知能の研究をする可能性もある。それが今の目標なので、大学4年間は大学院への助走期間です。

ジャングルシティ:幼い頃から人工知能に興味があったんですか?

有賀:分野は人工知能ではなかったんですが、そういう感じのことには興味がありました。アメリカはトップの大学に世界中から人が集まりますよね。その一員として最先端の研究に携われたら面白そうだと。幼い頃からそういうイメージがありました。

鷹松:高校卒業して留学せずに日本の大学に行ったのは?

有賀:当時は大学院からでいいと思ってたんですよ。でも交換留学で考えが変わりました。しかも交換留学がすごく面白かった。アメリカの大学は学部生に研究もさせてくれるし、専門分野も固定されていない。そもそも学部生には専門なんて呼べるものはまだないので、前の学期ではコンピュータ・サイエンスの専攻で、脳画像の研究室に出入りしてアルバイトさせてもらったり。なので次の学期はどこの研究室にしようかなと考えているところです。コロラドにいた時も、脳画像を解析する研究を手伝いに行っていてましたし。とても自由度が高いです。

髙木:私の場合、留学した目的は英語を話せるようになることですが、それは英語を使って仕事をしている両親を見て、「かっっこいいな」と思ったのが最初にありました。大学で勉強したいことはまだきまっていません。でも、両親が留学経験者で、その話が面白くて。アメリカの短大を卒業している母には、幼い頃から「行ったほうがいい」と言われていたので、9歳の時にはアメリカの大学に行くと決めていました。日本では高校の段階で大学での専攻を決める必要がありますが、私にはまだ学部に選ぶぐらい好きなものが高校時代に見つかっていなかったので、日本の大学を考えませんでした。アメリカではいろいろなものを取ってから専攻を選べるよと言われたこともあり、留学しよう、英語を勉強しながら、好きなものを見つけようと。

ジャングルシティ:髙木さんはご両親の影響が強かったようですが、他にそういった方は?

吉田: 僕の場合は父がよく単身赴任で外国に行っていて、4ヶ国語を話せる人なのですが、父親からそういう話を聞くこともあったし、母親が海外の視点を知るきっかけになる本をたくさん買ってきてくれたりしたことが大きいと思います。初めて読んだニューズウィークの特集がコンゴの内戦についてだったのですが、自分が知らなかったことがたくさん書かれていて、見たこともない写真があり、すごくショックを受けました。そこで、自分が「知らない」ということはいけないことなのかと考えるようになりました

鷹松:僕の父はニューズウィークに勤めていたのですが、ニューズウィークは革新的なところがあると思っていました。日本の新聞とは違い、ありのままな感じがありますね。

伊集院:私の両親は中学の先生なのですが、外国を知らないし、パスポートも持っていません。でも、私も兄も幼い頃からハーフだと思われる顔をしているので、よく「ハーフですか」と聞かれることがあって、外国を意識させられました。それで海外についての本を読むようになって、それがファンタジーのようで、本当に楽しかったです。最初は与えられた本を読んでいたのですが、新しいことを知りたいと自分で読み始めて、英語も一生懸命勉強しました。

有賀:僕の場合、父親は普通のサラリーマンですが、アメリカが好きで、いい話をよくしてくれました。母親の交換留学の経験の話も聞いていましたね。それが直接のモチベーションになったかというと、そうではないですが、オプションという形ではアメリカに行くことは近かったです。

鷹松:有賀さんのアメリカの大学への編入に関しては、ご両親は反対されたりしましたか。

有賀:いえ、反対されていません。僕はそういうことは自分で勝手にやっちゃうので(笑)。お金も奨学金をもらっていて、親からはもらっていません。

一同:おおー!

シアトルだからこそできている経験

吉田:二つあるんですが、一つは社会人との交流ですね。アメリカに来て、「アメリカはなんとなくこういう感じなのかな」と思っている人が大半だと思います。ダイバーシティとか、文化の違いとか。最近はリーダーシップに対する日本とアメリカの考え方の違いとか。でもそれを言語化して明確に説明できるステージにいかないと、本当のところは理解できない気がします。シアトルではこちらで知り合う社会人の方々に経験談を聞いたり説明していただいたりして、疑問が解消したりすることが多いです。例えばリーダーシップにしても、「自分の役割や責任はなんだろう」とまず考え、いろいろある中で自分がやるべきことを考えて実行することがリーダーシップと学びました。学校の授業でもそうですが、グループワークではアメリカ人のクラスメートが自分の役割を見つけ、積極的に進めていくのを見て、アメリカでの考え方・やり方に改めて納得したり。なんとなく感じていたことが、だからこういうふうに動くんだと、はっきりわかったのです。

鷹松:アメリカでどんなふうにリーダーシップを発揮するかを、社会人との交流で早く知ることができたと。

吉田:そうです。社会人の説明を聞いて、自分の経験と照らし合わせてみて、「ほんとうにそうだな」と理解が深まったというか。シアトルに学生と交流してくれる社会人の方々が多いからですね。

二つ目は、シアトルは IT の街なので、IT というと「コンピュータが大好きで!」という有賀さんみたいな人たちが多い(笑)という勝手な偏見があったんですが、こっちに来てみると IT はツールで、それを使って社会をどう良くしていくかという考え方を持っている人が多くて。シアトルは、そういう環境がある街なんだなと。

伊集院:シアトルならではの体験はいろいろしてきています!ダイバーシティの中で生まれ育った人、生活している人に会えるのがシアトル。ワシントン州日本文化会館(JCCCW)という、日系アメリカ人が運営している団体にいたら、「二つの特性を持っている人が、どうやってアイデンティティを決めるのか」「違いは何なのか」「相手と自分」を考えさせられることが多いです。そして、いろいろな人の考えがあって、「違うけど、それでいい」「どっちが正しいかというのはないこともある」ということを学ぶことができました。この短期間ですごく考えるようになって、IT、マーケティング、言語、そういったスキルはツールで、やろうと思えば結構なんでもできるとも教えられました。それができたのは、SIJP だったり、SEA だったり、ボランティアしていたワシントン州日米協会だったり。どこに行っても共通した学びがありました。

鷹松:来る前に想像していたよりも?

伊集院:はい。ただ違いを学びたかったのに、こんなにも考えさせられて、こんなにも自分が知らないことがあるんだなと知りました。

鷹松:ちょっと脱線しますが、それを日本に持って帰って、日本がどんな風に見えると思いますか。

伊集院:日本は職人系のところで、これがいいものだから、それがいいものなんだと出してくる。自分がいいものと思うものをいいもの、と出してきて、相手もいいものを持っているか知ろうとしないような島国的なところがあって。だから外との違いを見つけて、外にうまくマーケティングするということができなかったり。それは、もっと留学しろというのではなくて、違いを知った上で、相手と同じ道を選ぶか、違いを認めてそれぞれの道を選ぶかを、もっと考える機会があるのがいいのではないかと。

ジャングルシティ:「留学しなくていい。日本で足りている」という、最近ちょっと聞く意見についてはどう思われますか?

鷹松:「日本から出る必要がない」という意見ですね。

吉田:「それは思考の停止じゃない?」と思いますね。知らないでそう言うのと、知っていてそう言うのとでは、すごく違いがあると思っていて。知らないのに、知ろうとしてないのに、「これでいい」と言うのは思考の停止で、考えるのを放棄しているのじゃないでしょうか。

伊集院:そう言う人たちは将来的にそのまま生きていくならいいと思うんですが、今の日本でそれは・・・。知らない場所はとても苦労することが多いから、海外でなくても、知らない場所に飛び込んでみるのは一度は大切なのかなと思います。年をとってからでは難しいだろうし。でも、日本もいろいろですよね。だから「日本で」というのに同意するところもあります。私の友達が種子島の自動車教習所に行ったら、そこには地元の漁師さんもいれば、日本の大学教授や、コロンビアから来ている人もいてびっくり。

鷹松:よく考えてみたら、「日本でもできる」と言っている人たちは、地元からも出てない?

伊集院:そうなんですよ。だから、できてると思っている。確かに日本でも「できる」けど、「できる」のニュアンスや内容がちょっと違う。

鷹松:九州に行けば九州の文化、北海道に行けば北海道の文化が学べるように・・・

伊集院:そうです。海外に行くオプションは、そういうのが学べるよと知ることですよね。海外を知って、でも日本で学べることも多いと知ることもできます。

ジャングルシティ:東京から秋田に行った有賀さんはどう思いますか。

有賀:秋田は文化も言葉も全然違いますね。僕はその「日本で足りる」っていう意味をよくわかってなくて。それって、毎日おにぎりだけ食べていても生きていけるけど、味噌汁も飲んだらおいしいよねという感じだと思うんですよ。

一同:わかりやすい(笑)。

有賀:足りるなら足りるけど、それで幸せだったらいいですけど、他にもあったらもっと楽しいじゃないですか。

鷹松:それでもどこまで食べていけばいいと思う?

有賀:確かに。僕はいろいろ食べちゃうんですよ。アメリカに行く前もアフリカに行ってみたり。でもそれが必要かと言われれば、必要じゃないですよ。だからそういう意味では足りるかと聞かれれば、「足りるんじゃない?」

鷹松:自分が足りると思えば足りる。

髙木:そうそう。足りる足りないは、自分の目標で違ってきますよね。例えば英語でも、ビジネスで使えるぐらいになりたいというなら日本でもできると思います。TOEIC や就職活動のために英語で点数を取るなら、それに特化したものが日本にありますよね。実際に使われてる英語ではなくて、点数を取るテクニックを学ぶわけだし。なので自分が何をしたいかによると思います。

知りたいと思うには、きっかけが必要なんですよね。だけど偉い人が「留学は必要ない」と言うと、なんとなくそうなのかなと思ってしまう人がいるのがいけないと思うんです。そこで、「なんでそんなこと言うんだろう」「どういうところから見てそういうことを言うんだろう」と考える力が必要ですね。機会があったらやってみて、それで「必要ない」と思うなら、それはそれで。

有賀:目的によるよね。その目的への最短距離を考えた時に、日本でも達成できるオプションがあるよということかもしれません。

伊集院:ただただアメリカに行けばいいと思っている人には、それだけじゃだめだよと言いたいのでしょうね。結局は「よく考えろ」ということなんだと思います。

髙木:シアトルはいろんなことに挑戦したい人にいい場所かなと思います。挑戦したいことがまだわからない人も、とにかくいろんなことに挑戦するオプションがあります。私みたいに、やりたいことをまだ見つけてないという人も何かしら毎日毎週いろんなイベントがありますね。コロラド州ボルダーは白人のアメリカ人が好きそうなイベントはたくさんあった気がしますが、それとはちょっと違うオプションがシアトルにはある。やりたいことがあってもサポートしてくれる人とか、ちょっと顔を出してみるとか、そういうのがあります。

SIJP に参加している理由

『バイリンガール』 として大人気の YouTuber、吉田ちかさんの講演では、
SIJP 学生部の日本人留学生が進行役を務めた。

伊集院:留学してから SIJP の存在を知ったのですが、自分の努力ではできないことがたくさんあって、だから SIJP とだったらできるんじゃないかと考えたのがきっかけです。それから連絡を取って入りました。

吉田:シアトルで長く活動している非営利団体で2ヶ月ぐらいかけて計画していたものが、学生はまったく関係ない、社会人の間でのごたごたが原因で潰されて、活動停止を言い渡されてしまったんですね。僕は納得がいかなくて、いろいろな人に話を聞きに行ったら、社会人の都合だったことがわかり、不満がたまっていました。そんな時に SIJP が主催していた講演会に出席してみて、学生部員募集に乗っかりました。でも、「学生部の部長と副部長もいるから」と話を聞いてたのに、ふたを開けてみれば、誰もいない!結構騙された感じ(笑)。で、入るところ失敗したかなと。でも話をしていたら、子供向けプログラミング講座をやってみたらどうかということになって、2ヶ月後にそれを企画実行したら面白かったんです。そこから人が増えてきて。

鷹松:その講座は今もやってるけど、当時と違って SIJP が正式に NPO になったことで、もっと大変なことがあるのでは?

吉田:そうですね。いきなり一人で一通りやるのは本当にしんどかった。でも最後までやって、社会人に信頼してもらって、何かできるという経験はいいなと。参加した子供たちの保護者の方々から、「ほんとうによかった」とコメントをしてもらえた。その後、問題が発生した時は当時会長だった今崎さんが責任を持って対応してくれ、それで続けてみたいと思ったんです。もう一つは、年明けの茶ッカソンを楽しんでくれた保護者の方からも良い言葉をかけていただいて、しばらく続けたいと思ったことが、いまだに原動力となっています。

鷹松:この先、学生としての期間とか社会人になってから、その経験は役立ってきそうですか?

吉田:そうですね。うまくいかないことが多いですけど、最後に感謝の言葉を投げかけられると、がんばったことが無駄じゃなかったと思えます。そういう意味では、いつかいい結果が出るだろうと思ってがんばれます。

髙木:わたしは今年の1月に入ったのですが、いろいろやらせてもらって、とても楽しいです。活動も楽しいですけど、わたしが一番好きなところは、いろんな人に会えるということですね。両親が自営業なので、身近で会社にお勤めしている人を見たことがなかったのですが、SIJP で初めて「お勤めしている人」に会って、それまで会社に勤めることにあまりいい印象がなかったのが、なんとなく変わってきました。本当にみんな仕事も私生活も生き生きしていて、人について自分の知らなかったことがたくさん出てきて、「素敵だな、将来、自分もこうしたいな」って思います。学生部と社会人が近い関係にある団体なので、「今こう思っていて」「今こういう状況で」と社会人の方に相談すると、すぐ聞いてもらえる。精神面的に頼りになります。

有賀:SIJP で出会った社会人の方々のワークライフバランスに関しては、僕も同じように感じています。僕の父はモーレツサラリーマンで、仕事ばっかりしているんですけど、僕も日本のベンチャーで一時働いていた時は、みんなモーレツで苦しみながらやっているようなところがありました。でも、SIJP にいる社会人の方々は大企業に勤めていて、日常に遊びがありますよね。

髙木:「週休土日、ちゃんと休める人、いるんだ」みたいな(笑)。

有賀:そして、休みの日にはボランティアをやって。学生の面倒も見てくれるし。そういう働き方はいいなと思いました。

髙木:そういう働き方があると知ることができたのがよかったよね。

有賀:そうそう。今まで日本で見てきた人たちは、「目標があって、それを達成するためにがんばる、それを達成したら嬉しい」という感じでしたが、こちらで出会った人たちは「目標があって、でもそこまでの過程も楽しんでいる」。人生長いから、道のりも楽しみたいって僕は思うんです。

鷹松:確かにね。でも SIJP の社会人はそれを自然にやっているんじゃなくて、やらされちゃっている感があります。例えば、こっちで仕事をしていると、金曜日の夕方、自分はもっと仕事をしたいのに、みんな帰ってしまう。メールしても返事がないし、そこのオフィスに行っても誰もいないから、プロジェクトが進まない(笑)。だから休まざるを得ない。たいていの日本人が持ってる気質は「完璧主義」だから、時間は関係なく、やり切ることが目標になってしまう。日本で働いていた時は、夜中の1時まで働いて、翌朝6時半に会社に行くというのをやってましたよ。そんなやり方の日本人だけど、アメリカに来て、ここで働いている人たちの気質に押されて変わっていったといういうことじゃないかなと思います。

有賀:アメリカのやり方でやってみてどうですか?日本に戻れます?

鷹松:日本には戻れないと思います(笑)。戻ったら、「なんでこんなことやらないといけないんだ?」と、疑問ばっかりわいてきそうな気がしますね。だけど、そういう働き方をする経験ができて良かったと思うし、「人生って、仕事以外で楽しいことを見つけながら自分のポジションを探さないといけないんだ」ということがわかりましたよ。

髙木:日本の大学生のことはよくわからないですけど、社会人とこれだけ近くなって、ここまで関わってもらうことができるって、日本ではそうないんじゃないかと。意外とみんな「社会人になりたくない」って言いますよね。

有賀:そうだね。大学卒業したら、「人生終わった」(笑)。

髙木:そこからは会社に捧げる人生。希望に溢れて入社!ではなくて。実際、そんな感覚になってしまっている人が多い。

吉田:SIJP では、社会人の方が家によんでくれたり、美味しいご飯を食べようと親睦会をやってくれたりしますよね。

有賀:それが典型的なアメリカ人の生活じゃないかもしれないですけど、そういうのっていい感じだなと。

ジャングルシティ:そういうアプローチは、実は日本的ではないですか?!

鷹松:そうですね。そういう「家でご飯食べよう」という近寄り方は、日本人的な感じですよね。SIJP に入っている社会人はアメリカ家族親戚がいない場合が多いので、日本人同士で家族的に助け合おうというのはあると思いますね。しかし、このトピックで NPO についての話になるかと思ったら、社会人から何を学んだかという話になってますね。社会人がこれだけパッションを持ってやっていて、それで一銭も給料をもらってないSIJP(笑)。

伊集院:アメリカでは仕事以外の何かに捧げる時間があると思うんです。お金をもらえなくても、好きだからこれもやっちゃおうという視野を持てる。でも、日本にいると、目の前にあることをやらなくちゃという感じになっていて、ビッグピクチャーがわからないことが多い気がします。

吉田:SIJP の社会人の方々がシェアの精神を持っていることに、とても助けられていると思うんです。自分が今までお世話になった分、お返ししたいという気持ちですね。ある方にご飯をご馳走してもらった時、「僕がこうしてあげている分、吉田くんが出世したら、学生の人たちに同じようにしてあげてね」と言われたんですよ。

鷹松:それは実は SIJP だけでなく、いろんな人が言っていますね。自分への見返りは求めていなくて、バトンタッチなんですね。

髙木:それって、そういう時間的余裕があるから、心の余裕が持てて、考えられることなのですか。日本で40歳で深夜まで働いていても、そういうことはできるものなんでしょうか。

鷹松:知り合うことができれば、やるんじゃないかなと。でも、夜中まで仕事してると、休みの日は休むもうとしますから、わざわざ知り合う機会がなくなってしまう。満員電車に乗って、1日18時間とか20時間とか働いて、ということに疑問を持っている人たちがここに来ているから、こちらの働き方に変わっていっているのだと思います。

伊集院:SIJP で関わらせていただいた子供向けプログラミング講座とかバイリンガールの吉田ちかさんの講演でも、とても学ぶことがありました。プログラミング講座なら、小学生が将来そういう仕事をするという選択肢を持てるかもしれない。バイリンガールの講演なら、新しいことに挑戦しようと思う人が増えるかもしれない。そういうことを考えるのがとても楽しいと思いました。JCCCW でもそうですが、NPO の中にいることで、GIVE の精神というのをわかってきた気がするんです。日本に帰ってもその精神を忘れないから、きっと私はそういう GIVE をすると思います。

鷹松:NPO に関わろうとする人たちのモチベーションは何でしょう?

伊集院:大半の大学生が NPO に関わるモチベーションは就活でしょうか。そもそも自ら NPO に入りたいという人は、海外に行ってることが多いと思います。

吉田:日本で非営利団体というとあやしい感じがしますよね。

伊集院:あまり活発ではないですね。震災などが起きた時は活発になるんですが。そういう時は GIVE の精神が生まれるので。

有賀:日本にいた時、大人が集まって舟を漕いで遊ぶという非営利団体に入っていました。そのうち、川が汚れてるといけないということで、みんなで川のゴミ拾いを始めましたね。そこでもここと同じことが起きていたなあ。みんな楽しそうだったし、なんか心に余裕があるというか。遊ぶ余裕があるから、人のことを気にかけられるし。

伊集院:地方の方がそういうことが起きやすいのかも?東京で生まれ育って、学歴社会の中でやってきた私の周りには、学生団体はあっても、GIVE の精神があまりなかったから、そういう存在があまりわからなかったのかも。地方の方が人が少ないからこそ助け合いが生まれるのかな。で、アメリカでは新しい国で、権利を取ってきた歴史とか、差別と闘って勝ち取った経験があるから、集まりやすいのでしょうか。一人一人が GIVE をすることで影響があるから。

鷹松:日本のメディアを見ていると、ブラック企業と言われる企業に入社するのではなく、その代わりに財団法人や非営利団体に入って、自分の経歴はクリーンにしておきたいというような書き方をしている記事がありました。何かがしたいという目的を持って入るのではなく、ブラック企業からの逃げ道という感じの書き方をでしたが。

吉田:僕の友人で海外に来て非営利団体に入る人は、もともと発展途上国の支援に興味があったりという場合で、目的があってこその行動だったと思います。目的がなければ逃げ道になるかもしれませんね。

鷹松:目的がはっきりしている非営利団体は、みんな入りたいと思うんです。SIJP に吉田さんが入った時は、これをやるんだとか、そういうはっきりした目標とかなかったですよね。そういうところに入るのはどうだったのでしょう。

吉田:僕が入った時の SIJP はまだ非営利団体ではなかったんですけど、いろんなすごい人が関わっていて、学生を支援してあげるという、甘い言葉につられて入ったという感じです(笑)。

髙木:まだ全然できてないから、自分たちで作り出せる部分が大きくて、それが面白そうだった。すでにできあがってたら、自分はそうしたくないのに従わないといけない部分が多いような気がします。

吉田:最初は学生だけで学生団体をしようとしたんですが、信頼がないと受け入れられないと気づいたんです。学生は入れ替わりが激しいし、社会人からの長期的な信頼を得るのは簡単じゃなくて、長期的なサポーターを見つけづらかったんですよね。だからそういった経緯があって、すでにあった非営利団体に入って、学生が何かしたいと言って、社会人が支援してくれるとなったのに、社会人の都合で潰された。社会人同士の変なしがらみに、僕は興味がないんです。そんなことに巻き込まれるのは嫌だ。で、学生による学生のための活動ができて、かつしがらみがないというところは何なのかなと思った時、SIJP っていいんじゃないかと思ったんです。

伊集院:髙木さんの話を聞いていて思ったんですが、目的がはっきりしている団体に入るか、そうでない団体に入るか、それって自分が持っているものにあうとか、自分にあっているところがあれば、そこに入ればいいけど、それがないからこそ、みんな始まったばかりのベンチャーに入ったり、起業したりするのかな。

鷹松:でも目的が決まってないところに入るって、大変では。

伊集院:自分がこういうをやりたい、こういうのがいいというのは明確だから、それをやっていい場所を作るのが目的になっているのかも。自分の思っているところじゃなかったら入っても大変だから、じゃあまだいろいろ決まってないところ、自分で最初から作れるとことの方がいいかなと思いました。

鷹松:有賀さんがさっきから何度か言っている、「遊び」ということなんですが、仕事をしながら、その横に「遊び」があるという。その「遊び」の延長に SIJP があるんだと思うんです。そこで、さっき髙木さんが、「学生から社会人になる時、もう遊びの時間、自由な時間はない、終わる」と言いましたが、実際、ここでは「終わってない」んですよね。みんなやっていて楽しいんです。

伊集院:そうなんですよね。だから自分もそうしたいなと思ったりするわけです。

鷹松:日本で、できそうですか?

伊集院:私は日本で働くつもりなので、どうかな・・・

有賀:パッと考えても、あまりそういう人は日本にいなさそうだよね。そういう人は、いるところにはいるかもしれないけど。

鷹松:「仕事忙しいから」というのを、日本ではよく聞きますよね。

伊集院:そうですね。あまり好きじゃないです。でも私が入りたい場所というのは、自分の仕事をしながら、楽しみが別にあるという人がいるところですね。

髙木:「遊びたい」とは思うけど、それよりも社会から見た自分の方が大事。そういうところを気にすると、大学に入って3年ぐらいは猶予があるけど、就活となったら黒髪に戻して、自分の遊び時間もない会社に入ってしまう?でも、自分のやりたいこともできる選択をする勇気というか、「なんとなく」の正解じゃなくて、「自分はこれ」というのを持つことは可能なんじゃないかと。

伊集院:みんなが大企業に行こうとするから、それが正しいと思うんだろうけど、髙木さんは「私はこうだから、私はこっちに行く」というのができるんじゃないかと思います。

鷹松:自分たちが学生から社会人になった時、SIJP みたいなものを日本で同じようにできるでしょうか?「同じように」と聞いている意味は、たぶん、社会人の人たちは SIJP への使命というより、楽しみというか、「自分の子供がプログラミングをしたいから、きっとみんなもしたいだろう」というぐらいのノリなんですよね。家族も巻き込んでの活動でしょう?それを日本でやろうとしたら、どんな難しさがあると思いますか?

伊集院:シアトルではそういうことをしたい人が多いけど、日本では少ないってことなんでしょうか。

髙木:大人は仕事をするものって思っているのかも。

吉田:大人は仕事をするものって思われてるから、そういう人が集まって何かイベントをしたとしても、参加者自体が理解しない?

鷹松:どうやったら変わるんでしょう?大きな問題になってしまいますが。

吉田:非営利団体がコミュニティに貢献するというのが、日本では広まってないと思うんです。だからもうそもそも動こうともしない。普段は時間がないから土日は休みたい、そういう人も多いでしょう。

髙木:そもそも働く時間が長いから、そんなことしてる時間がないですよね。そういう社会人が教育も作ってるから、仕事外で子供向けコンピュータ講座なんか無償でやらない。お金を払って受ける、やらせてもらう講座というのはあるだろうけど。

鷹松:今、お金の話が出たけれども、お金のやりとりがないのに、なぜこちらでは無償の講座ができるんだろう。

髙木:心の余裕があるからですかね。あくまでも予想ですが。例えば母親は「夫には土日にこそ子供にかまってほしい」と思い、父親は「平日にあれだけ働いてるんだから、土日は休みたいし、自分の時間が欲しい」と思う。やっぱり日本では時間的余裕を持つことって、本当に難しいのかも。会社での拘束時間が少なくなれば、平日でもイベントに行ったりする余裕もあれば、週末にもっと家族と過ごすとか、何かするとかできるのかな。

有賀:アメリカの非営利団体は、所得が低い層向けの活動が活発ですよね。

吉田:アメリカには寄付文化があるし、会社などのマッチングもあったりしますよね。でもその根底にあるのが、ミッションだと思う。日本で募金とかいうと、怪しい団体で、募金の行方がよくわからないというイメージがあるかも。日本の中に、ミッションがあって、寄付の行方とか活動の実態と効果をちゃんと見せる、そういうのが根付いてないと言えるような気がします。だから一般人も企業も寄付にも消極的だし、結果的に活動資金があまりないし、サポートしてくれる人も少ない。

伊集院:日本では、受け取るのが当たり前になっている文化があるのかなと思います。何もしなくてもくれる、子供の頃からも何か与えられる。で、与えたら何か返ってくることを期待してて、与えたのに何も返ってこないことが多いから与えない、そんな悪循環になってる部分があるのかなと。

鷹松:SIJP の場合、大人は何か見返りを期待してるわけではないんですよね。確かにその返ってくることを期待してるなら、サポートに二の足を踏むというのはあるかもですね。

伊集院:受け取るのが当たり前の人ばかりだからこそ、与えるというのがわからない?

有賀:“Pay forward” だよね。

伊集院:そう。

鷹松:先ほど出た「低所得者層向けの活動」というところですが、確かにそういうサービスを受ける人もいて、でもその中には「サービスを受けた分、自分たちも何かしよう」という人たちもいますよね。くれた人に対してではないかもしれないけど、自分もできる範囲で何かしようとする。

ジャングルシティ: SIJP は特殊だと思いますよ。フルタイムで働いていて、家族もいるのに、こんなに無償でいろいろな活動をしている人たちはそんなにいるかなと。

鷹松:笑。SIJP では、コンピュータに関わる仕事をしている人がいて、それを使ってくれている人がいて、そこで生まれた利益を循環している、ぐらいに思っていると思いますよ。さっき思ったのは、形は違っても、みんな何かしらやってることじゃないかなと。

ジャングルシティ:「自分ができることをやろう」という、アメリカにある考え方をしているから、社会の中で自分ができることを見つけていくという感じなのでしょうね。

有賀:どうしてそう考えられるのかなあ。

吉田:話がそれてしまうかもしれないんですけど、アメリカでは自分の存在を認めてもらうために何かしている人が多いなと感じることがあるんです。例えば、別の団体での活動を通じてゲイの友達ができたんですけど、彼は自分のこともオープンに話すし、ボランティア活動もすごくいろいろやっています。同性愛者のグループでゴミ掃除の活動もしていたり、地域にも貢献している。そういった、ちょっとした活動から、わかりあえる接点が作れる気がする。それをアメリカ人は経験を通して知っているのかなと。

髙木:アメリカ人って、「自分は何かできる」と信じている人が多い感じがします。日本は自分にも他人にも、自分の子供にも、否定的に入る気がします。単なる社会人に、学生に、子供に、「何かできるわけがない」「何か変えられるわけがない」って。

ジャングルシティ:子供のロッククライミングに通じるものがあると思うんですが、最初の頃は半分登って「降りる〜」と言っていた5歳児に「半分も行けた!次は上を目指してみよう!」「休むのもありなんだよ。そしてこれからどうやって登ろうか、考えたらいいんだよ」とモチベーションを高めて、攻略法を教えていくやり方は、始めたばかりの子にとってすばらしいと思うんですね。「まだ半分しか行けてないじゃないか」「上を目指さないと行けないじゃないか」「あの子はもう上まで行ってるよ」と言い出すなら、何のために始めたのかわからないし、楽しくなくなって、やめてしまう。

髙木:日本だと、「NPO を立ち上げる」というと、人よりちょっと抜き出てないと完全じゃないとか。人よりいい成績を叩きださないと、あなたは一人前じゃないとか。さっきのロッククライミングがとてもいい例かなと思うんですけど、「ここまでできたから、あと半分がんばってみよう」というよりも、「ここまでできたけど、でもまだ半分できてない」っていうのは、日本の完璧主義なところ。

伊集院:留学プログラムをやっている会社に、「自分から見ても他人から見ても「成功だなあ」と感じられる留学をした人ってどういう人なのか」とヒアリングしてみたんです。そしたら、やっぱり今ここで話していることに通じるものがあって。例えばロッククライミングなら、「半分しかできなかった」じゃなくて、「半分もできた」っていうふうに、「ポジティブに考えられる人」というのがそうなんですね。自分がインターンとして入ったところが、自分が思い描いていたのと違ってたとしても、「ここでこれができるじゃないか」「こういうことが学べるじゃないか」って進められる人、ちょっとずつ視点を変更できる人が、充実した留学生活を送っているって話でした。それをアメリカ人は小さい頃から教えられているから、大人になってもできるんじゃないかと。

髙木:英語の勉強で言うと、「この文法は絶対間違ってる」って頭の中で考えて、「じゃあ正しいのにしないと伝わらない」と思って話せなくなる日本人っていっぱいいるんだろうけど、「半分あってたら、なんとなく通じるだろうし、正しい言い方を補足してもらえばいい」と思うとか?でも、完璧主義とか、やっぱりここは前置詞が間違ってるとか考えだしたら怖くなってしまうと思うんです。自分のできてないところを認められなくて、完璧でないといけないって思う心があると、次に行動するのが怖くなっちゃって、なかなか・・・

有賀:自分の作ったゴールがあって、そこに達成するまでは一人前じゃないって思ってしまうよね。

髙木:Give する人になるには、今できることをするっていうのが、それじゃできなくなっちゃう。

鷹松:100%のうち10%しかできない場合は、「やっちゃいけない」と思ってしまうということですよね。

伊集院:そう。やることがもはや悪みたいになって。

有賀:募金も、千円ならいいけど、10円なら募金できないとか。

鷹松:それってどこから来るんだろう。

吉田:「ここまでやらないと認めないぞ」という外部からのプレッシャーっていうのがあると思うんです。高い目標を勝手に突きつけてきて、「こういう目標がある団体です」と言っててもまだそのうちちょっとしかできなかったら、「全然できてない」と見下してくるようなところが。そんな中で、自分の中で「これをやらなくちゃいけない」「ここまでやらなくちゃいけない」と考えてしまうのは、実は外部がそれを求めているからじゃないかなと僕は思うんですよ。

有賀:そうだよね。日本人はたいていどうしてもそういう集合体で考えてしまう。それぞれでいいのに、みんな同じ基準。

髙木:みんな同じ基準っていうのはどうなの。例えば、日本のニュース見たら芸能人の不倫がニュースになってたりするんですけど、そもそも関係者以外にとってはどうでもいいことでしょう。「不倫はだめだ」「謝れ」って、たくさんの人が言い出すよね。謝るのは「国民」に対してじゃないじゃない。

一同:興味ないよね!(爆笑)

有賀:日本はそういう集合的な状況を作りやすいんだよね。絶対的な基準とか。アメリカだったら、いろんな人種がいて、いろんな人がいるから、それぞれの意見があって主張できるかもしれないけど、日本は単一の意見になりやすい。

吉田:アメリカ人の場合、権利を与えられたのではなくて、権利を取ってきたという歴史があって、そこにアイデンティティを持っている人がたくさんいるなと。日系アメリカ人にしてもそうですが、やっぱり自分たちは差別と闘った経験があって、それを誇りにして自分の子供たちにも伝えているんですね。だからこそ必要があれば取ろう、闘おうというのが根付いているのかなと。

伊集院:それが選挙活動にもつながるのかも。自分の力で変えられるという思い?

吉田:歴史がそれを証明してきた。

伊集院:それを伝える親の影響ってすごく大きい。

鷹松:変わらなかったと伝える親がいたら、変わらないんだって子供が思ってしまうよね。

有賀:アメリカは歴史が浅いから。最近のことだから、変えた記憶がある人が今生きていたりするし、今も変えているところだし。

吉田:アメリカは、何かを変えたい人が集まりやすいのかも。

伊集院:自分が声をあげたら、誰かが来てくれる、みたいな。それをわかっているのかも。

有賀:一人一人がイニシアチブをとれば、十分影響があるよと。

吉田:それがアメリカ人の潜在意識としてあるんじゃないかと思えます。

伊集院:日本だと、声をあげても誰も来てくれないんじゃないかっていう不安がありますね。一人でやっても、一人でできることの限界を見ちゃって、10%しかできないじゃないかと言われたらどうしよう、と。

鷹松:そういうことを、SIJPとかで活動して考えるようになった?

伊集院:はい。アメリカに来てから深く考えるようになりました。昔から海外に興味があって、歴史が大好きだったから、仮説をこちらで実証したような気持ちがあります。

これから何を目標に、どんなふうにしたい?

吉田: 今、本当に自分の原点や、自分が変えたいものについて考えています。足元を見たときに、何を変えたいのか考えたときに、ITをツールとして使ったメディアを作っていきたい。やっぱりまだまだいろんな価値観を効率的に知ることのできるメディアが少ないと思っているので。ベンチャーも考えていますし、伝える側・作っていく側になっていきたい。そこで SIJP での経験を使わせていただきたいと思ってます。

伊集院:アメリカと日本と何がこんなに違うんだろうと考えたときに、やっぱり教育だなと。そもそも、周りの人に幸せになってほしいんです。同調社会の中で幸せに生きていけるならいいですけど、これからの日本はそういう日本だけの中では生きていけないでしょう。だから、日本の教育をもっとフレキシブルにして、日本の子供たちが社会を知るための、世界を知るための仕組み作りに関わりたいです。

有賀:わかりやすい目標は、人工知能の研究に携われるようになること。情熱と興味があって、楽しいから。そして、人生をつつがなく生きていきたいんですよ。

一同:え!ここまで語っておいて?(笑)

有賀:平日は研究、ちょっと余裕があって、そして、週末は NPO に関わる。そういう生活を築くために、目標としては人工知能の研究なんです。

吉田:あ、僕のもう一つの目標は、技術のある有賀さんみたいな人とつながっておいて、「よろしく!」と(笑)。

一同:爆笑

鷹松:有賀さんは、研究は楽しいから研究したいんですか?それとも何かに使いたい?

有賀:楽しいからですね。話が長くなってしまうんですけど、情熱を持って取り組んでいて、もし達成できなくても、取り組んでいることが楽しい、そして自分が興味がすごくあることなんです。僕はとても飽きっぽいんですけど、人工知能についてはいくら考えても飽きない。答えがないし。それはライフワークとして築けられたらすごいなと。でもそれを明確なゴールとして設定してしまうと、それを達成するためにがんばらなくちゃならない。がんばることはいいんですけど、達成するかどうかじゃなくて、そこまでの道のりを楽しむことが僕の目標です。ベンチャー立ち上げて、IPO を目指してってやってると、日々が辛いんですよ。飽きちゃうし。

鷹松:そうでなくて、永遠の課題がある方がいいと。

有賀:そうですね。

伊集院:めっちゃわかる。

髙木:私の場合、笑われると思うんですけど、隣人愛という言葉が大好きで。恥ずかしいな、でもみんな大好きなんです。仕事でこれというのはまだないんですが、私は小学5年生から数学が苦手で「3」しかとったことがなくて、数学とは無縁だと思ってたんですが、社会人の方々と話す機会があって、やっぱりがんばろうという気持ちがわいてきた。だから何か、がんばろうと思う気持ちを引き出せるような、そういうことができるように、いろんな経験をしていっている気持ちです。

ジャングルシティ:今日はたくさんのヒントと元気をいただきました。どうもありがとうございました!

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