第5回 採用側の着眼点 ~その2~

Seattle IT Japanese Professionals

執筆者:鷹松 弘章さん

第4回・5回 筆者プロフィール:鷹松 弘章(たかまつ・ひろあき)さん
Seattle IT Japanese Professionals メンバー。埼玉県さいたま市生まれ。現 IBM、旧ロータス (Lotus Development)を経て、日本マイクロソフト入社。2001年に日本マイクロソフトから Microsoft Corporation に移籍して渡米。 Exchange Server、Windows Media、Windows Vista、Windows 7、Windows 8、Windows 10 などを手掛けるエンジニアリングとそのマネジメントを担当。1年に250程度の社員面接を行っている。 Seattle IT Japanese Professionals では、転職講座の講師や、学生イベントでの就活講師、イベントでの審査員などを担当している。

漫画:銭湯ルイス(せんとうるいす)
Seattle IT Japanese Professionals 漫画担当。原案と作画を二人で担当しているコンビ名。日本の漫才コンビ 『星セント・ルイス』 とは別人。本業は IT。スーパー銭湯好き。

前回は、採用面接に臨む際に注意すべき点を挙げ、最後に評価されているポイントをご紹介しました。今回は、それらのポイントについて、具体的にどう評価されているのかを解説したいと思います。

ソフトウェア開発エンジニアになるまでのステップ

面接中に評価されているもの

前回ご紹介した企業側の評価しているポイントについておさらいしましょう。 

次の例は Microsoft Corporation でソフトウェアエンジニアを採用するときに着目する項目です。

  1. Technical Aptitude/Problem Solving (技術的な才能、問題解決能力)
  2. Passion (情熱、業界に対する意識)
  3. Customer Focus (顧客に対する意識)
  4. Communication (コミュニケーション能力)

Technical Aptitude / Problem Solving (技術的な才能、問題解決能力)

問題解決能力を問うには、面接官はオープンクエスチョン(条件の絞られていない質問)から始めることが多くあります。具体的にはどのような質問でしょうか。

例えば「ワシントン州全体で、電柱は何本あるか概算する方法を教えてください」というような質問です。一見、つかみどころのない、どうしたらよいのかわからない質問に見えます。が、採用側としては、日々、業務で起こる問題に直面したとき、つかみどころのないところから、どのように「アタリ」をつけ、具体化、具現化していく能力があるのか。というところを見ています。通常、このような質問をされた場合、自分が知るべき情報を面接官に質問することから始めることが重要です。例えば、ワシントン州全体ということは、山や都市部を含むのか?都市部の平均や山間部の平均本数を調べることは許されているのか。電柱というが、高圧鉄塔は入るのか。こういう質問をすることで、つかみどころのなかった質問内容を、より計画を立てやすい具体的な状態にしていくことが重要です。この過程で質問をするということは、とても重要で、更にどのような質問を返してきているかで、面接官は候補者の問題を分析する能力を判断しています。ある程度前提条件がクリアになったら、プログラミングであればどの言語を使用してよいか、プログラミングでの引数などの前提条件はなにか。などのテクニカルな条件も確認する必要があります。それらの情報が集まったところで、ホワイトボードや紙の上で問題解決のプランを練って、実際のプログラムへ落とし込んでいくという作業をします。

このプランからプログラムを書くという実作業をする中でも、自分の考えを口に出して面接官に説明しながら具体化していくことが求めらます。繰り返しになりますが、その作業では、正解を導き出すかどうかということよりも、どのように考えているのか、注意力はあるか、デザイン能力があるか、問題意識はあるかなどを面接官が見ているからです。自分が納得のいく問題解決ができたら、それを検証(テスト)すること、そして、面接官からの質問を受けるということが必要です。その際、ミスや不足を見つけたら、率直に認めそれを修正していく柔軟さも面接官の注目ポイントです。

Passion(情熱、業界に対する意識)

ここは解説する必要もありませんね。日本でも同じことですが、仕事に対する情熱、特にポジション採用なので、そのポジションに就く情熱、パッションを面接の時間を通して見せる必要があります。

例えば、問題解決の質問に答えたところで、「実際にこういう場面に遭遇するものなのか」と面接官に質問したり、面接の最後に面接官が「質問があるか」と聞くことがほとんどなので、そこでポジションや業務内容について調べてきたことを証明しつつ、面接官もよい質問だと思える質問を準備していくことが大切です。また、市場でホットな問題が起きていて、そのポジションに就くことによって解決することのサポートができるとしたら、今の問題を冷静に分析していること、自分の意見はここにあるということを説明できること。面接官に同意してもらえなかったときに、紳士的に議論できること。そういったことが重要になります。

Customer Focus (顧客に対する意識)

これはどの業種、どの会社でも大切なことですが、顧客がいるからこそビジネスが成り立つわけで、顧客の気持ちやニーズをくみ取る能力や、顧客に感情移入できる能力をはかっています。私がこの分野を見極めるのに使う質問の例として、「携帯電話に装備されているGPS機能がなぜ必要なのか。どう使われているのかを、あなたの祖父母に理解してもらおうと考えて、私に説明してみてください」というものがあります。これは、業界や業種での専門用語を全く理解しないお客様(自分の家族など)にどうその必要性などを理解してもらえるように、説明できるのか。噛み砕いた言葉で、そして適格な例えなどを盛り込んで説明する能力があるかどうかということを観察します。それによって、顧客の不満への理解スピードや、顧客に対する表現方法などの的確さなどを判断できるからです。

Communication (コミュニケーション能力)

採用側は、いままでの3つの点の中からコミュニケーション能力の全体を観察しています。考え方を系統立てて説明できるか。話が脱線しても元に戻れるか。自分の考えを整理し、整理した考えに変更が生じても柔軟に対応できるか。 つまるところ、面接というのは、面接官と候補者の「お見合い」という概念が強く、お互いが「一緒に仕事をしていける、議論できる、考えることのできる相手かどうか」というところを見ているのです。ですから、面接中にユーモアを挟むことも忘れないでください。「一緒に仕事のできる人、それがあなたかどうか」ということを見ているわけですから。

おわりに

最後になりますが、ここまでの採用の流れを見て「おや?」と思った方も多いのではないでしょうか。「知識」について触れられているものがほとんどありません。それはなぜか?この業界、そしていろいろなアメリカの企業では、その人の「知識」に頼った面接よりも、「能力」を判断する面接のほうが圧倒的に多いのです。「情報」や「知識」は、時間と共に古くなり使えなくなるものが多くあります。が、「経験」に支えられている「能力」は風化することはありません。「経験」をベースにした「能力」を使った「応用力」が、この先起こるかもしれない前人未到の問題を解決する力となっていることを認識しているからこそ、このような採用方法になることを覚えておいてください。

掲載:2015年9月

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