第6回 応募者側が意識すること

応募者側が意識すること
Seattle IT Japanese Professionals

執筆者:竜 盛博さん

第6回 筆者プロフィール:竜 盛博(りゅう・もりひろ)さん
Seattle IT Japanese Professionals 副会長。宮城県仙台市生まれ。日本ヒューレット・パッカード、Agilent Technologies, Amazon.com などを経て、現在 Microsoft Corporation にて Senior Software Engineer として、Web 検索 Bing の検索結果ランキングのインフラ構築を担当。アメリカで勤務した会社は5社。業種は通信機業界、半導体業界、ウェブコマースからウェブ検索まで。Seattle IT Japanese Professionals では、講演会や勉強会の企画・運営、就職・転職講座の講師などを担当している。

漫画:銭湯ルイス(せんとうるいす)
Seattle IT Japanese Professionals 漫画担当。原案と作画を二人で担当しているコンビ名。日本の漫才コンビ 『星セント・ルイス』 とは別人。本業は IT。スーパー銭湯好き。

前回は、採用側の着眼点、特に採用面接でどのような点が評価されているかを説明しました。今回は、面接を受ける応募者側として一番意識するべきことは何か、さらに掘り下げてお話したいと思います。

ノーヒントで解くより「こいつと一緒に仕事をしたら楽しそうだ」

ソフトウェアエンジニアの面接では、面接官の前でコード(プログラム)を書くスタイルが一般的です。面接対策というとそちらに注意が行きがちですが、最初に頭に入れておかないといけない重要なことがあります。面接はクイズ番組とは違って、ノーヒントで問題を解くか解かないかの勝負ではないということです。面接の冒頭で

「最後まで問題が解けるかどうかは重視しない。問題へのアプローチのほうが大事だ」

と教えてくれる面接官もけっこういます。

すぐには解けないような難しい問題が出ることもあり、その時には面接官とディスカッションしながら解答にたどり着くプロセスを踏めるかがチェックされます。間違えた時の面接官からのツッコミをうまく使って前に進む「コミュニケーション能力」がとても重要です。

そして、第5回のエッセイの繰り返しになりますが、面接を受ける側として一番重要なことは、面接官に

「こいつと一緒に仕事をしたら楽しそうだ」

と思わせることです(前回の著者の鷹松さんと私はこれまでの経歴がかなり違いますが、採用面接についての意見は驚くほど似ています。経験を積むと自然に似てくるものなのでしょうか)。ホワイトボードに綺麗なコードを書くことも、アルゴリズムを考えて簡潔に説明することも、バグがあることを指摘されて修正することも、技術的な質問に的確に答えることも、面接官のツッコミに応じて議論することも、過去のプロジェクトについてわかりやすく説明することも、会社に合った服装をすることも、当日の朝に歯を磨くことや顔を洗うことまで、すべて

「私を合格にして一緒に仕事をすると、いいことがありますよ」

と伝えるためのものです。これを常に忘れないでください。

「コミュニケーション能力」とは、アイディアを説明すること、人のアイディアを取り込むこと

前項の繰り返しになりますが、これは非常に大切なことなのでもう一度言います。一番大事なのは

「こいつと一緒に仕事したら楽しそうだ」

と思わせることです。

技術的に優れていて、難しい問題も解くことができ、きちんとした議論ができる人と一緒に働きたいと考えるのは、ほぼ皆同じです。面接官もエンジニアなので、あまり社交的でない人もいます。朗らかさやフレンドリーさはもちろんプラスですが、相手によってアピール度が変わってきます。

日本での面接における「コミュニケーション能力」とは少し違う意味になるかと思いますが、アメリカでのソフトウェアエンジニアの面接では、

  • 他人の意見を客観的に聞けるか?
  • 他人から学べるか?
  • 自分の意見を主張できるか?
  • 意見が対立した時に、自分の意見に拘泥せずに、正しいジャッジができるか?
が重要です。

たとえ自分が正しくて、面接官の言うことが間違っていたとしても、自分の意見だけを何度も主張するのは得策ではありません。相手の意見を自分の言葉で言い換え(これで、自分が相手の意見を理解していることを示せます)、その中でどこがおかしいのかを指摘し、自分の意見ならばその問題がないことを述べる―といった、相手もすんなり納得できる形で主張する必要があります。

もし、自分が誤解していた場合、相手の意見を言い換えているところで誤解が見つかります。そこでまた相手の話をよく聞き、まずは相手の意見を理解することが肝要です。普段の仕事での技術的ディスカッションでもそうですが、自分の意見に問題があった場合にすぐに取り下げる態度は、特に面接の場面では評価されます。もし、相手の意見と自分の意見を合わせることで、どちらの頭の中にもなかったより良い結論を導くことができれば、最高です。

最高の出来の面接が終わった時には、お互い自然に笑顔になります。実際の仕事上で議論したうえで、お互いが満足行く結論に達した時に似ています。最終的にオファーを得るためには必ずしも必要ではありませんが、最高の面接を経験した面接官は、採用決定ミーティングの際にあなたを強く推薦してくれるでしょう。ほとんどの面接官は、できることならば候補者を合格させてあげたいと思っています。面接官としても自分の仕事の時間を割いて面接をやっているので、その時間が有意義であったと思いたいのです。その「願い」を叶えてあげるべく、がんばってください。

書籍出版のお知らせ

昨年9月、学生とソフトウェア業界でのプロフェッショナルを対象に「ソフトウェアエンジニアのための就職・転職講座」を SIJP のイベントとして行いました。就職・転職の際に気をつけることを時間の許すかぎり説明しましたが、他にもあった細かい話は沢山残ってしまっていました。

「本の形でじっくりと読みたい」というフィードバックもあったので、書籍を技術評論社から出版することにしました。採用面接の話ももちろん含みます(今回のエッセイは大部分が書籍からの抜粋です)が、さらに情報を付け加えて日本からの渡米の方法、職場環境、転職によるキャリアアップ、レイオフ対策まで、「アメリカで働くとはどういうことか」がよく分かる内容になっています。

『エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢』
~渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド

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アメリカの IT 企業で働くということは遠い世界の話ではなく、あなたの選択肢かもしれません。

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今後の最新情報は公式ページを参照してください。

掲載:2015年10月

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