第11回 40歳からのアメリカ移住「四十の気まぐれがうまくいった理由」

40歳からのアメリカ移住「四十の気まぐれがうまくいった理由」
Seattle IT Japanese Professionals

執筆者:保坂 隆太さん

第10&11回 筆者プロフィール:保坂 隆太 (ほさかりゅうた)さん
Seattle IT Japanese Professionals ディレクター。現職は Microsoft Corporation にて 社内IT部門のプログラム・マネジャー(ビジネスインテリジェンス・ビッグデータ)。東京生まれ/育ち。法政大学大学院システム工学研究科卒。40年以上の日本生活ののちに2012年からシアトル在住。シアトルに来てからアウトドアが楽しくて仕事よりも休日が忙しい。詳細プロフィール

漫画:銭湯ルイス(せんとうるいす)
Seattle IT Japanese Professionals 漫画担当。原案と作画を二人で担当しているコンビ名。日本の漫才コンビ 『星セント・ルイス』 とは別人。本業は IT。スーパー銭湯好き。

前回の連載で思いがけずたくさんの反響をいただいたので、急遽予定を変更して一つ話題を加えようと思います。かなりの気まぐれとはいえ、最終的にうまく移住でき、そして今日にいたるまでなんとかアメリカで生活を続けられているにはそれなりの理由はあるだろうし、読者の方も興味のあるところだろうと思います。人生ひとそれぞれ、与えられている環境も違えば性格、能力も違いますので一般化できるものではないですが、振り返ってみて何がこの気まぐれを成功させる主な要因だったのかをまとめてみます。

妄想力

普段から出来もしないことができるようになることを妄想し続けるのはとても大事です。新しいことをやろう!何か違うことをやってみようじゃないか!というときに必要なのは、毎日の仕事で使っているアタマではなかなかいいアイデアが生まれないものです。特に理由はないけどアメリカ行ってみたら面白いんじゃないか、とか、おもしろそうだからいっそのこと農業やってみようか、みたいな思考の飛躍を普段から続けていると、意外なところで機会がやってくるものです。不思議なことに毎日妄想していると、話にだんだんと説得力が出てくるのです。これは非常に強力です。

一番最初に当時の採用マネジャーと話をしたとき、正直に、"私の夢はアメリカで一度でいいから仕事することだ。その夢をかなえるために機会をくれるか" と言ったら、"おー、そういうの好きだ。じゃあインタビュー受けてね" と返ってきたことを今でもよく覚えています。特にアメリカで仕事をしている人は自信に裏付けられた(でも、事実に裏付けられているとは限らない)夢は大好きなので、不断の妄想力は大いに次の道を切り開く助けになりました。

体力

多くの会社勤めの人々の例に漏れず、私も30代の中盤は毎年のように体調が悪く、毎年の健康診断前には必ずにわかダイエットを始めるような人間でした。仕事も深夜までにいたることが多くありましたが、何度かの経験ののちに体を作ることをはじめ、日常的にトレーニングを行うようになりました。同時にそれまでやっていたような深夜まで仕事にいたるようなことをやめ、自分が気持ちよくできる時間内で自分の仕事を管理するようなスタイルに変えたことは、こちらに来てとてもに役に立っています。

アメリカ、特にマイクロソフト本社では個人に与えらる責任も裁量も非常に大きく、それだけ自己管理能力が問われます。採用の際にもどれだけ自己管理能力に長けているのかを判断されるのですが、定期的なトレーニングを欠かさない、健康管理を行っている、といったポイントは、私自身が思っている以上にプラスに判断されていたようです。

その後こちらで採用を行う立場になったときにも、候補者がどれだけ自己管理能力があるかを判断する基礎的な事実として、日々健康管理を行っているか、自分の体にどれだけの投資をしているかは、直接的・間接的に質問するようにしています。職場を見ても50歳を過ぎて活躍している人は健康な体を保ち、積極的にワークライフバランスを自分自身でコントロールしているように思います。健康な体は気まぐれを成功させるためには必要不可欠です。

割り切り力

シアトルやベイエリアはアメリカのほかの地域に比べれば圧倒的にリベラルで、多様性を尊重する文化がありますが、40歳過ぎまで一つの文化圏で育ってきてしまった人間にとっては、日々の生活そのものが例外対応の連鎖みたいなものです。特に移住当初に精神的に折り合いをつけるのが難しかったのが、それまでの日本での経歴や経験が全くもって役に立たなかったこと。アメリカでの生活は0年ですから、ある部分については子供以下の知識レベルや能力である場合もあるのですが、40年も生きている人間はどうしてもプライドが邪魔をして先に進めなくなることが多くなります。客観的に私はここでは0歳児と認める割り切り力、割り切ったうえでどうやってものごとを先に進めるかを考える力は、特にキャリアの半ばを過ぎてから大きな進路変更をする場合にはとても重要ではないでしょうか。

ちなみに移住して一番困ったのは細かい生活習慣の違い。バスの乗り方(日本のように次の停留所はここですと案内はありません。ただ止まるのみ!)、挨拶のタイミング、温かいお湯で満たされたお風呂に入れない(こちらはほとんどがタンクで水を沸かす方式で、湯船をいっぱいにしてしまうとお湯が枯渇して水になってしまう)・・・などなど、どうでもいいような小さなことなのですが、それが続くとどうも調子が狂ってきてしまって、仕事もしないのにぐったりといったことがよくありました。こればっかりは割り切って無視するわけにもいかないので、こういうもんなんだと体が勝手に反応するようになるまでは苦労しました。日本のインフラはおせっかいなくらいによくできてます。

協力

気まぐれと妄想の賜物で実現したアメリカ移住ですが、家族の理解があってこそ、今にいたるまでシアトルでの暮らしを続けることができています。私と妻は普段からよく話をするのですが、実現するしないに限らず、アタマの中に沸き上がった妄想を普段から脈絡なく話をしていたおかげで、"アメリカ行くかい?" という無謀な計画が持ち上がったときも、"まあ、この人は何を言い出すかわからないし、おもしろそうだからいいんじゃない" というこれ以上ない理解と協力をその日のうちに得ることができました。たぶん一番の成功の秘訣は、普段からパートナーと妄想を共有し、予期せぬ未来への協力を得ておくことです。おかげさまで二人でのアメリカ生活を今はとても楽しんでいます。

いかがでしたでしょうか。どれも私の経験から、これはとても大事!と心から思っているポイントです。仕事上の能力や知識はもちろん大事ですが、異国での生活では生きる力そのものがより重要かつ日々試されているように感じます。自分自身の生き方、価値観を見つめる場として、またとない機会です。

ということで次回はようやく英語のお話です。

掲載:2016年3月

コメント

この記事にコメントする

※コメントは承認制です。公開までに時間がかかることがあります。
※弊社へのご連絡にはお問い合わせフォームをご利用ください。コメント欄はご使用になれません。
※内容によって掲載をお断りする場合もありますので、あらかじめご了承ください。

「ひと」の新着コメント

このカテゴリーのコメントはありません。

Fandango Now Tickets for AMC Theatres!