第14回 L-1 ビザとリロケーション・エージェント

L-1 ビザとリロケーション・エージェント
Seattle IT Japanese Professionals

執筆者:加藤 和良さん

第14回 筆者プロフィール:加藤 和良 (かとうかずよし)さん
福島県会津若松市生まれ。2012年にアマゾンジャパン株式会社に入社、その2年後にチームの再編に伴って Amazon.com に異動。ソフトウェア開発エンジニアとして働いている。

漫画:銭湯ルイス(せんとうるいす)
Seattle IT Japanese Professionals 漫画担当。原案と作画を二人で担当しているコンビ名。日本の漫才コンビ 『星セント・ルイス』 とは別人。本業は IT。スーパー銭湯好き。

シアトルにあるような IT 系の大きな企業では、インドや中国をはじめ、世界中からさまざまな人材を集めています。前回までの「40歳からのアメリカ生活」でも触れられているように、社内で国をまたいで異動する人も多く、それにまつわるサポートはかなり充実しています。

筆者はもともとアマゾンジャパン株式会社で働いていたのですが、チームの再編に伴って、本社があるシアトルに引っ越してきました。インタビューや入社後の話は過去の連載でもふれられているので、今回は異動が決まってから渡米直後までに必要な手続きについてお話ししたいと思います。

L-1 ビザ

アメリカで働くには、まずビザが必要です。

よく「アメリカで働こう」という文脈で出てくるビザは H-1B ビザです。しかし、H-1B ビザには一年あたりの発給数に上限があるため、その枠をめぐる競争は非常に熾烈です。例えば、2016会計年度 (FY2016) の場合は 2015年の4月1日に応募が開始になったと思ったら、4月7日にはその上限数に達してしまっています。(詳しくはジャングルシティの別記事を参照してください)

筆者の場合は、H-1B ではなく L-1B というビザを取って、アメリカで働いています。L-1 ビザは外国の会社からアメリカの関連会社に転勤するような "Intracompany Transferee" のための期限つきのビザです。筆者は日本支社での経験がこのビザの条件に合致していたので、H-1B は取らずにすみました。

日本で大きな外資系に入って、アメリカ国内のチームに異動する人は、働き始めるためのビザでは苦労していないようです。

引越し

ビザの目処がついたあたりから引越の準備を始めました。とはいえ、引越しの業者は会社が指定したものを使うので、特に相見積もりをとるようなこともなく、梱包も全ておまかせでした。保険か税関の関係で、送るものの一覧を作ったのがおそらく一番大変だったくらいです。

筆者の場合、結婚直後で新し目の家具が多かったこと、それらを全部まとめても会社が払ってくれる引越費用の範囲におさまってしまったこともあり、椅子やこたつなどの家具類に始まり、たこ焼き器から使いかけのサランラップまで、すべてを日本から持ってきてしまいました。

荷物は航空便と船便に分けて送ります。筆者は「生活にすぐ必要なもの、湿気を避けたほうがいいもの、サイズがあまり大きくないものは航空便で、その他は船便で送ってください」という説明を受けて、書籍と電化製品と靴と、なぜか食器類を航空便で、前述の家具類をすべて船便で送りました。

ただ、航空便は予定通りに届いたものの、船便はなぜか一ヶ月近く届くのが遅れてしまいました。会社が一時的に用意してくれていた異動用のアパートこそ家具・食器つきだったものの、その後に引越した普通のアパートには冷蔵庫と洗濯機くらいしかありません。インターネットで注文した IKEA のベッドもなかなか届かず、航空便のダンボールを机と本棚にして、Amazon.com で買った寝袋で過ごす生活はなかなかつらいものがありました。

リロケーション・エージェント

アメリカに着いてからは、社会保障番号 (Social Security Number) を取得したり、アパートを探したりといった、さまざまなことをこなさなくてはいけません。このときに非常に頼りになったのが、リロケーション・エージェントです。

リロケーション・エージェントは、引越にともなうさまざまなことを補佐するのが仕事です。筆者の場合、勤務先が Dwellworks 社のリロケーション・エージェントをアサインしてくれて、給与振込口座の開設と携帯電話の契約にはじまり、社会保障番号の取得からアパートの契約に至るまで、すべてに付き添ってもらいました。やりとりはすべて英語でしたが、それでも自分だけで事務手続きをしてまわるよりはずっと安心できました。

ちなみに、筆者の勤務先ではリロケーション・エージェントが紹介する金融機関がたいてい決まっていて、そこでアメリカ最初のクレジットカードもあわせて作ってしまう人が非常に多いようです。筆者もよく聞くプレミオカードではなく、ここのクレジットカードをはじめに作りました。チームの人々と食事に行ったりすると、みんな似たようなカードなのでちょっと混乱します。

後悔を最小化する

会社の手厚いサポートを受けつつシアトルに来てから、1年半がたちました。最初にマネジャーに渡米について打診されたときは「H-1B って学士号だけで取れるのか」「引越しで貯金が無くなりそう」「アパートひとりで契約するの?」などいろいろと心配していましたが、蓋をあけてみると、それらは杞憂で終わりました。

Amazon.com の CEO であるジェフ・ベゾスは「80歳になって、人生を振り返った時に後悔を最小化するような選択肢をとろう」と、創業を決めたと語っています。いろいろ心配を抱えながらもアメリカ行きを決めたときには、この話がちょっと頭をよぎりました。アメリカで成功するかどうかはよくわからないけど(今もわかりません)、でも行かなかったら後悔しそうだと思ったのです。

というわけで「アメリカで働くことに興味はあるけど、修士号もないし、留学したり MBA をとるのは、ちょっと経済的・時間的に難しそう」というような人は、まずは外資系の企業に入って、英語に日々親しみつつ、アメリカへの異動を狙ってみるのもいいかもしれません。

掲載:2016年4月

この記事は、参考情報の提供のみを目的としており、法的その他の専門的助言を提供するものではありません。この記事に記載する情報に基づくいかなる行為およびその結果について、筆者および SIJP は一切責任を負いません。

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