第8回 リロケーション転職をスムーズに行う方法 (第1回)

リロケーション転職をスムーズに行う方法
Seattle IT Japanese Professionals

執筆者:渡辺 毅さん

第8回 筆者プロフィール:渡辺 毅(わたなべ・つよし)さん
Seattle IT Japanese Professionals インフラ担当。福岡県出身。高校卒業後、オハイオ州へ語学留学し、5年かけて国際関係学の学位を取得。大学卒業間際にプログラミングに夢中になり、コンピュータ・サイエンスを学ぶために大学院へ進学。卒業後はボストン近郊でソフトウェア・エンジニアとしてキャリアを積む。2014年に Microsoft にリロケート転職。Skype for Business の品質分析ツールの開発に携わっている。

漫画:銭湯ルイス(せんとうるいす)
Seattle IT Japanese Professionals 漫画担当。原案と作画を二人で担当しているコンビ名。日本の漫才コンビ 『星セント・ルイス』 とは別人。本業は IT。スーパー銭湯好き。

「リロケーション転職」と「ローカル転職」

今から2年ほど前にボストン近郊からシアトル近郊に relocate (リロケート)してきました。この "relocate" という言葉、引っ越しと転職・転勤が合わさったような意味ですが、ある程度離れた地域への転職と、それに伴う引っ越しの場合に使われているようです。このタイプの転職のことをここでは「リロケーション転職」と呼ぶことにします。

私は米国ニューイングランド地方の大学院を卒業して以来、ソフトウェア・エンジニアとして何回も職場を替わってきましたが、それはすべてボストン近郊に限られたものでした。こういった居住地域に限定したタイプの転職を、「ローカル転職」と呼ぶことにします。

2年前に転職活動を始めたときは、まさか北アメリカ大陸を横断してシアトルまで引っ越してくることになるとは思ってもいませんでした。独身ならまだしも、結婚して妻と子供のいる身です。家族全員の生活を強制リセットすることは、子供が大きくなるにつれ、さらに難しくなっていきます。実際、それまでの転職と言えば、せいぜい通勤時間を長くして少し遠い会社に行くぐらいでした。

リロケーション転職の短所

そもそもリローケーション転職はローカル転職に比べて短所がいくつもあります

  • 長く付き合ってきた友人知人と会えなくなる
  • それまでに構築したプロフェッショナル・ネットワークをゼロにリセットすることになる
  • 子供がいる場合、転校などの手続きが必要
  • 共働きの場合、配偶者の転職も考慮しなくてはならない
  • 家を持っている場合、それをどうにかしなくてはならない(貸す、売るなど)
  • 引っ越し先で新たに家を買う場合、家探しと購入手続きをしなくてはならない
  • 地域サービス、医療サービスなどを変更しなくてはならない

そして、おおよそすべての項目でローカル転職に比べ、より多くの時間と労力のコストがかかり、結果としてストレスが増えるかもしれません。

しかし、それだけのコストをかけてでもリロケーション転職を選ぶべき場合もあります。私の場合、長く住んだニューイングランド地方とは異なる気候や風土を経験してみたいという思いがあり、ずっとマイクロソフト系のエンジニアとして働いてきたので、やはり総本山であるレドモンドの本社で働いてみたいという希望もありました。また家族にとっても、日本人を含む多くのアジア人が住んでいて、文化的に多様な地域に生活の拠点を移すことは大きな魅力でした。もちろんリロケーション転職で得られる利点は個人差があります。それでもリロケーション転職の短所だけを見て、始める前から諦めてしまうのはもったいないことだと思うのです。

ところでリロケーション転職は雇用する企業にとっても、地元以外の地域から人材を集めることが出来るということで、アメリカの大企業にとってはごく普通のリクルート方法のひとつのようです。私が知る範囲でも、リロケーション転職をした知り合いはかなりいますし、転職先もアップル、グーグル、アマゾン、そしてマイクロソフトなど、よく聞く企業が名を連ねます。そういった企業では、荷物の引っ越しや飛行機チケットの手配など、あらゆる手続きをアシストしてくれるチームがいます。また、リロケーション・パッケージといって、典型的なリロケーションの費用をカバーしてくれる制度もあり、リロケーション転職で発生する金銭的苦痛を和らげてくれる仕組みも整っているようです。双方の利害が一致した Win-Win シチュエーションだと言えます。

リロケーション転職で家族の絆を強化

さて、今回のリロケーション転職は私にとっては初めてでしたが、次から次へとやって来る課題を家族とともに学び工夫していくことで、想像していたよりもずっとスムーズに、そしてストレスなく転職を完了することができました。

リロケーション転職をさせるために最も重要なこと。それは、「家族全体の決意」だと思います。そして、それは家族の同意を得ることから始まります。マイクロソフトからオファーを頂いた時、家族会議を開いてシアトルへの引っ越しについて意見を聞きました。妻は私が望むのであればと承諾してくれました。しかし、そのころ9歳になったばかりの双子の娘たちは「いいよ。でも土曜日はボストンの日本語学校に行けるんでしょ?」っと言ったのです。シアトルという町はボストンの近くぐらいに思っていたんでしょう。それからしばらく、抵抗と説得が繰り返されましたが、最終的には「お父さんが我が家の船長です。船長が行くと決めたので行くことになりました!」と宣言し、半ば強引ではありましたが、家族の意思を統一したのです(この時ほど、娘と一緒に 『ONE PIECE』 を読んでいてよかったと思ったことはありません)。もちろん、友達と別れることで悲しい思いをする子供たちのケアは、リロケーション転職のプロセスの中でも重要な位置を占めることになります。そういう点も含めて、リロケーション転職を計画的に進めていくことが重要になってきます。

リロケーション転職では、数えきれないぐらいの「やること」が次から次へとやってきます。前向きな気持ちでないと、めいってしまうかもしれません。でも、一度決めてしまうと、まるでゲームのステージをクリアしていくかのように楽しく思えてくるので不思議です。

第2回では、リロケーション転職をスムーズに進めるのに私たちが有効だと感じた方法やコツについて紹介していきます。

掲載:2016年1月

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