第20回 「ビジョンをカタチにする」プログラム・マネジャーの仕事とは?

「ビジョンをカタチにする」プログラム・マネジャーの仕事とは?
Seattle IT Japanese Professionals

この方にインタビュー:
橋本 弘太郎(はしもと こうたろう)さん
情報理工学で修士号を取得し、日本で UIEvolution に就職。その後、シアトル本社に転籍となり、プログラム・マネジャーとして働きながらワシントン大学で MBA を取得する。秋からはテキサス州ダラスの Toyota Motor North America にてテレマティクス・エンジニアとして活躍している。

近年、家電や自動販売機、橋など、あらゆるモノがインターネットにつながりつつあります。その中でも最も注目を集めているのが自動車。自動車とITの境界線で何が起きているのでしょうか。未来の自動車のかたちとは?業界の最前線、トヨタ米国法人にてテレマティクス・エンジニアとして働く橋本弘太郎さんにインタビューしました。

テレマティクスで車をインターネットにつなぐ

早速ですが、テレマティクス (Telematics) について教えてください。

モノをインターネットに繋げようという IoT (Internet of Things) の流れと同じように、自動車をインターネットにつないで走行支援などに役立てようという技術開発が進んでいます。このような、自動車をネットワークにつなぐことに関連する技術・サービスを広く「テレマティクス」と呼んでいます。

車をインターネットに接続することで、走行データを集めたり、地図や音楽プレーヤーなどのスマートフォンのアプリを車で直接使えるようにしたり。将来的には自動運転の実用化もこの分野に入ってくると思っています。私は主にアプリの開発を中心に、サービス全体の品質向上に取り組んでいます。現在の肩書はテレマティクスエンジニアとなっていますが、実際にはプログラム・マネジャーの役割を担っています。

プログラム・マネジメントとはビジョンを具体化する仕事。大切なのは想像力。

具体的にはどのようなお仕事なのですか。

プログラム・マネジャー (Program Manager) は PM とまとめて呼ばれる役職のひとつです。PM には「プロダクト・マネジャー」「プログラム・マネジャー」「プロジェクト・マネジャー」という3種類の役職があります。

プロダクト・マネジャーは、製品全体に責任を持ちます。「なにを作るか」を考える人ですね。

プログラム・マネジャーは、完成までのスケジュールやタスクの調整をします。プロダクト・マネジャーの「なにを作るか」に対して、プログラム・マネジャーは「どうやって作るか」です。エンジニアや QA、テストのメンバーからなるチームをリードします。私が主に担っている役割はこの部分です。実際の業務としては、メールを書いたり、会議に出たりして具体的な現場の作業の調整を行うこと、一週間から2-3ヶ月先の計画を立案することが多いですね。

プロジェクト・マネジャーは、マーケティングや外注先との交渉などを含む、もっと幅広い範囲でプロジェクトをリードします。

最近あった山場を教えてください。

毎日がヤマです(笑)。プロジェクトの現場では想定外の問題が数多く発生します。3日の見積もりが、実際は5日かかる。思いがけない仕事が発生した。製品ができたと思っていたが、できていなかった、等々。

日々発生する課題を解決するためには、リリース時期を延長するか、人を増やすか、機能を減らすかといった決断を下さないといけません。サービスをリリースした後のメンテナンスも考えないといけませんし、常に忙しくて、後手後手に回っていたのでは仕事になりません。プロジェクト全体の状況を把握して、何が問題になりそうか想像力を働かせて先手を打つ必要があります。例えば時間が足りなくなりそうだと思われる場合は、周りのチームにエンジニアを借りられるように交渉することもあります。

そのような想像力はどのように培ったのでしょうか。

元々エンジニアとしてのバックグラウンドがありますので、チームのメンバーと話をしたりプロジェクト全体の概要を調査したりしていく中で、なんとなく気が付くようになってきます。また、PM 分野の書籍を読んで学んでいます。最近参考になったものをいくつかブログにまとめました

コミュニケーションには自信があった。だから、PM。

「ビジョンをカタチにする」プログラム・マネジャーの仕事とは?

橋本 弘太郎さん

大学・大学院とコンピュータの勉強をされたそうですが、どうしてソフトウェアエンジニアではなく PM という道を選んだのですか。

大学院では Suica のログを可視化し、デジタルアートとして見せるという研究をしていました。ソフトウェアエンジニアとしてインターンシップもしましたが、競技プログラミングやロボットコンテストなどで活躍している同級生のすさまじさを間近で見て、この道ではかなわないと思いました。

私はむしろ、人とコミュニケーションをとったり、お互いに合意できるポイントを探したりといったことが得意でしたし、技術的な知識を持ちながらそういったスキルを持つ人は相対的に少ないので、PM の道に進むほうが希少価値があると考えたのです。

チームのリーダーのような仕事ですが、新卒でいきなりできるものなのですか。

はじめからPMとして就職したわけではなく、UIEvolution という10人ほどの会社にエンジニアとして入社しました。それからすぐに唯一の PM だった人が辞めてしまったので、挙手して役職を引き継ぎました。

結果としてうまくいきました。エンジニアだから新卒ではできないことが少なくて、PM だから新卒ではできないことが多いということはあまりないと思います。アソシエイト PM と呼ばれるポジションもありますし、大手IT企業で PM を新卒からとっているところもあります。PM になるのに MBA は特に必要ありません。ただ、ビジネス側の人は MBA を持っていることがあるので、考え方の基礎を理解するには MBA コースで学ぶことは効果的です。

ずっとアメリカに行きたいと思っていた。

日本でのキャリアから一転して、なぜアメリカで働こうと思ったのですか。

アメリカに行ってみたいと就職前からずっと思っていました。UIEvolution に入社して3年目のタイミングでアメリカの MBA に合格したので、仕事を辞めて渡米しようとしたのですが引き留められました。交渉の末、シアトルの本社に PM として転籍させていただいたという経緯です。

日本で働いていたころと違いは感じますか?

メリットとして、家族を大事にする時間をとりやすいですね。もちろん成果を出していることが前提にはなりますが、子供の誕生日や結婚記念日といった理由で仕事を休むということが文化として受け入れられているように思います。

仕事面では特にデメリットは感じません。良くも悪くも、きちんとやってさえいれば評価されるし、信頼もしてもらえます。この点は日本と同様です。

基礎トレーニングが大事。基礎が想像力を養う。

大人になってからの渡米だと英語が大変だと思います。どのように勉強されましたか。

英語は筋トレだと思っています。毎日やったらできるようになって、やらなかったらできるようになりません。詳しくは私のブログにも書きましたが、地道にポッドキャストを100回聞いて暗唱するなどしていました。英語で仕事をするに際し右も左もわからないということはありませんでしたが、アメリカに来た当初ミーティングで結論がわからなくて、進行役に教えてもらうなどということはありました。3、4年目からだんだん困らなくなってきたかなという感じです。最近ではジョークを飛ばせるようにもなってきました。

橋本さんのようなキャリアを歩みたい学生にアドバイスをお願いします!

あまり分野を絞らないでください。必要な技術はころころ変わるので、いま流行りでも、卒業する頃にはまた違う技術が必要とされているはず。それよりも、実際に手を動かすことが重要だと思います。エンジニアならネットワークの仕組みが肌感覚でわかったり、はんだごてを持って回路を組めたりといったこと。ビジネスの人なら決算書を一次情報として理解できるとか、必要な情報を取捨選択してエクセルでグラフを描けるとかということ。こうした基礎が身についていると、実践で必要とされる想像力が伸びると思います。

また、特に英語のリスニングは練習した方がいいです。スピーキングは多少下手でも必要ならみんな一生懸命聴いてくれます。しかし、ミーティングで 一人のために言い直してくれたりはしないので、リスニングができないと内容が理解できません。リスニングの勉強は一人でもできるので、起きている間はずっと英語を聴いているくらいの気持ちでがんばってください。

END TO END で世の中に真新しいことを出していく。

よろしければ今後のキャリアプランを教えてください。

まだ新しい職場に移ったばかりなので、しばらくはここでがんばります。

PM という仕事は、世の中に真新しいことを出していけることがやりがいです。自分で事業を起こすにしろ、会社に身を置くにしろ、END TO END で物を見ていたいと思います。そのために、大きなプロジェクトで一部分の担当という仕事ではなく、「何をやる」から「どうやって届けるか」までを考えていきたいです。

ありがとうございました。

取材を終えて:
プログラム・マネジャーとして、日々奔走する橋本さん。今回のインタビューでは、その役職の大変さ、やりがい、仕事における想像力や基礎の大切さをお話ししてくださいました。私自身も一学生として、流行りの技術を追うのではなく、その基盤となるところをしっかり勉強したいと思います。橋本さんには、先日赤ちゃんが産まれたそうです。おめでとうございます。あふれるエネルギーで、今後ますますのご活躍をお祈りしております。この度はお忙しい中インタビューに応じて下さり、どうもありがとうございました。

次回は Microsoft でプログラム・マネジャーとして働かれている鵜飼祐さんへのインタビューです。同じく SIJP 学生部の田部井が執筆します。どうぞお楽しみに!

取材・執筆:有賀 康祐
Seattle IT Japanese Professionals 学生部テック担当。ワシントン大学にてコンピュータ・サイエンスを専攻し、AI やロボティクスの研究中。

掲載:2017年1月

この記事は、参考情報の提供のみを目的としており、法的その他の専門的助言を提供するものではありません。この記事に記載する情報に基づくいかなる行為およびその結果について、筆者および SIJP は一切責任を負いません。また、掲載内容は対談者個人の見解であり、所属する企業を代表するものではありません。

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