第22回 急成長する IT 業界で脚光を浴びる PM の仕事とは?

急成長する IT 業界で脚光を浴びるPMの仕事とは?
Seattle IT Japanese Professionals

この方にインタビュー:
鵜飼 佑(うかい ゆう)さん
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、東京大学情報学環学際情報学府にて修士号を取得。大学院在学中に未踏 IT 人材発掘育成事業に選出され、スーパークリエータに認定される。大学院修了後、Microsoft の Office 開発チームにて Program Manager として勤務し、Office LensDocs.com の開発に携わる。2016年はシアトルの Minecraft Education チームにてプログラミング教育関連機能の開発に携わり、Minecraft Hour of Code Designer をリリース。「未踏ジュニア」や「未踏ジュニアキャンプ」といった未踏コミュニティを中心とした人材育成・プログラミング教育プロジェクトを推進している。

第20回では、Toyota Motor North America に勤めている橋本弘太郎さんに、IT 業界で今最も注目を集めているプログラム・マネジャー(PM)の仕事についてお話を伺いました。橋本さんは、プログラム・マネジャーの仕事の中で、特に車をインターネット化する技術であるテレマティクス・エンジニアとして活躍しています。

今回は、Microsoft 社でプログラム・マネジャーとして勤務されている鵜飼佑さんにお話を伺いました。

多岐にわたる PM(プログラム・マネジャー)の仕事

PM(プログラム・マネジャー)というポジションに就いた経緯を教えてください。

父がエンジニアということもあり、家にコンピュータがある環境で育ちました。小学生のころ、Windows 95でゲームをするなど、幼いころからコンピュータに興味がありました。

高校生になるころには、ウェブサイトを開発して収入を得るようになっていましたね。当時は大学でコンピュータ・サイエンスを専門的に勉強しようとは思っていなかったのですが、インターネットを日本へ持ってきた村井先生の研究室が主催した、高校生向けの IT キャンプに参加し、「自分がやりたいことはこれだ!」と確信し、慶応大学進学後、村井研究室に入りました。

慶応の学部時代は、村井先生の研究室で、今でいう IoT のような、車とインターネットをつなげるような研究をしていました。

一方、ボランティアとして参加した小学生向けの野外キャンプをきっかけに、教育にも興味を持ち、Life is Tech!という中高生向けのプログラミング・キャンプを主催するスタートアップ企業で、コンピュータ・サイエンス教育のカリキュラムの開発に携わりました。

研究を進めるうち、大学4年で「自分が本当に勉強したいことはインターフェースなんだ」ということに気づき、どうせなら世界で戦える研究所に入ろうと、日本ではヒューマンインターフェースにおいてトップの東京大学大学院暦本研究室へ進みました。そして、水泳を教えるアルバイトをしていたこと、教育にも興味があったことから、子供にインタラクティブに水泳を教えるロボットを立案し、開発しました。

水泳を教えるには、当然、水に潜るので、普通のロボットと違い、防水機能が必要です。さらに水中のロボットと通信することも課題の一つでした。

自分だけではすべての課題を解決できませんので、深海探索ロボット開発を専門に研究している東大の他の研究室にアポイントメントを取って、共同研究をしました。この研究プロジェクトは経済産業省所轄の情報処理推進機構が行う未踏IT人材発掘育成事業にも採択され、その成果をもとに未踏スーパークリエータとして認定されました。

大学院修了後は、Microsoft に入社し、Office チームでプログラム・マネジャー(PM)として働くことになりました。この選択にはいろいろな理由がありますが、PM として世界中の教育機関で使わる製品の開発に携わりたいと思ったことが大きかったです。

急成長する IT 業界で脚光を浴びるPMの仕事とは?

PM は、どのようなお仕事をするのですか?

PM(Program Manager)の仕事は、デザインやユーザインタビューからデータ分析まで非常に多岐に渡ります。今までに携わったプロジェクトには、Office LensDocs.comがあります。

例えば、プロジェクトの初期段階では主に、デザインやユーザ・インタビューに時間を使うことが多いです。

具体的には、まずターゲットにするのはどんなユーザで、どんな問題を解決するべきなのか、ユーザ・インタビューやサーベイから得たデータを用いて提案を行います。その後、どんなユーザ・フローや UI が良いか、さまざまなモックアップやプロトタイプを作ってユーザ・インタビューを繰り返します。

製品をリリースしたあとは、データ分析にかなりの時間を使い、ユーザの行動分析をもとにどのように製品を改善したら良いのか日々、考えています。

未踏プロジェクトのスーパークリエイターなら開発(SWE)もできると思うのですが、PM 業務に興味を持ったきっかけを教えてください。

いろいろ考えた結果、ソフトウェアエンジニアとしてよりも PM として活躍したいと思いました。

これにもまたいろいろな理由があるのですが、ひとつは PM のほうが広い範囲に大きなインパクトを与えることができると思ったからです。もうひとつは、大学の研究室や未踏の卒業生と話す中で、ソフトウェアエンジニアとして1番になるのは恐ろしく難しいとも気づきました。

また、大学在学中にフットサル大会の運営をしたり、子どもたち向けのキャンプの運営に関わったりしていたこともあり、もともと皆で何かを作り、それを先導することが好きだったということもあります。

教育との関わり

現在、教育にはどのように携わっていますか?

仕事とプライベートの両方で教育に関わっています。

仕事では、Office チームで開発に携わっていた Office Lens も Docs.com も、教育分野での利用を強く意識した製品になっていますし、Minecraft Education チームで Code.org と共同開発を行った Minecraft Hour of Code Designer は、学校現場で使われるプログラミング教育教材になっています。

プライベートでは、未踏プロジェクトのコミュニティを巻き込んだ人材育成、プログラミング教育に関するプロジェクトを行っています。「未踏ジュニア」や「未踏ジュニアキャンプ」はその活動の一部です。

未踏プロジェクトについて教えてください。

最先端の技術研究や製品開発を行う25歳以下のクリエータを支援する、経済産業省所轄の情報処理推進機構が行っているプロジェクトです。

現在は9ヶ月の期間で300万円弱くらいの金銭的な支援が行われたり、各界で活躍する PM や OB/OG によるフィードバックを得られる機会が与えられています。それを終了すると、突出した成果を残したクリエータはスーパークリエータとして認定されます。

急成長する IT 業界で脚光を浴びるPMの仕事とは?

SIJP 主催の子供向けワークショップにゲスト講師として参加

鵜飼さん自身が、ボランティアなどで直接子供たちに CS 教育をしてみて、日本とアメリカではどう違うと感じましたか?

SIJP でアメリカに住む子どもたちにソーティングに関するワークショップをやらせていただけたのは、非常に良い機会になりました(資料)。

日本でも小学校への出張授業をするチャンスをいただいたことがありましたが、どちらかというと CS の知識を教えるというよりは、「CS はおもしろい」ということを伝えたいという観点でやっていました。これは、そもそも CS の楽しさ、重要さが日本ではまだ広まっていないので、一歩手前の段階から始める必要があるということが大きいですね。

一方、シアトルでは、その土地柄もあるでしょうが、保護者の方のCSに関する期待値も理解度も大きく違います。

日本では今でもコンピュータプログラミングの経験がないまま情報工学科へ進む学生もいますし、プログラミングの経験がないため、その面白さを知らずに情報工学科へ進まない人もいます。

私の意見としては、公教育で CS、プログラミングを学ぶ機会を持つことで、すべての人に平等に機会を与えることが非常に重要になってくると思っています。

また、日本では CS を教えても、子供たち個人の英語力によって、その後の伸びが大きく違ってきます。英語がわかると教材の量も質も全然違ってくるので、英語教育も同時に強化していく必要があると思っています。

鵜飼さんはどうやって英語を上達していますか?

今でもすごく苦手意識があるので、アメリカに来てもオンライン英会話を続けています。仕事でいつも使っているので、専門用語は自然に覚え、語彙も増えました。

今回、アメリカで他の開発チームと顔を合わせて業務をしたことで、日本との働き方の違いを感じましたか?

一番に良いと感じたのは、時差がないこと。でも、その他にはあまり違いはないように感じました。そもそもアメリカに来たのは、マインクラフトのある機能の開発をしたかったことが理由なので、アメリカに来ることが目的ではありませんでした。目的とする機能開発ができるなら、特にアメリカでなくてもよかったです。

チームの生産性を上げるために気をつけていることは何ですか?

個人としては、早く来て早く帰ることが効率化につながっていると感じます。仕事場へは、朝7時くらいに行き、夕方4時には帰っています。みんなが出社するまでに仕事を終わらるくらいの気持ちで、朝は相当集中しています。

学生時代にボランティア活動をやっていましたか?

キャンプのボランティア活動をしていました。この活動に参加することによって、自分が本当に興味のあることかどうかを確認できたと同時に、就職活動時の面接でも、興味の裏付けとしてその実績を語ることができました。

自分の「教育に関する製品開発に PM として携わりたい」という夢が今の仕事でできているのはラッキーだと思っています。やりたいことを見つけるには、まずはやってみて、自分が本当にそれを楽しいと思えたかを考えることが重要だと思っています。

取材を終えて:
今回のインタビューでは、鵜飼さんのキャリアを通してプログラム・マネジャーという仕事について詳しく知ることができました。広い視野で、自分のやりたいことをひたすら追いかけている鵜飼さんは、まさに自然体で自分の天職を楽しんでらっしゃるように映りました。私も、自分のやりたいことに気づく直観力、そして自分が目指す現場に飛び込んでいく行動力を見習いたいと思います。

取材・執筆:田部井 愛理
Seattle IT Japanese Professionals(SIJP)学生部キャリア担当。Highline College で、Hospitality and Tourism Management を専攻し、2016年12月に卒業。2017年3月からワシントン大学でメディア関連を専攻。

掲載:2017年2月

この記事は、参考情報の提供のみを目的としており、法的その他の専門的助言を提供するものではありません。この記事に記載する情報に基づくいかなる行為およびその結果について、筆者および SIJP は一切責任を負いません。また、掲載内容は対談者個人の見解であり、所属する企業を代表するものではありません。

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