第25回 「”楽しい” をデザインする」ゲームデザイナーの仕事とは?

ゲームデザイナーの仕事とは?
Seattle IT Japanese Professionals

この方にインタビュー:
安原広和(やすはら・ひろかず)さん
ゲームデザイナー
日本のセガに入社して 『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』 のゲームデザイナーを務めた後、海外駐在を転機に北米に移住。その後もディズニー、ソニー(ノーティドッグ)、ナムコバンダイ、任天堂で、25年以上にわたり、ゲーム制作に携わる。現在、UnityJapan で教育関連の教材開発に取り組んでいる。プレーヤーへの「おもてなし」をモットーに、長く遊んでも疲れない、繰り返し遊びたくなる、直感的でストレスのない操作感、心地よい達成感が得られる」ゲームを目指す。

誰もが必ず一度は目にしたり、遊んだことがあるであろう、テレビゲーム。ソニー損保のリサーチによると、ゲームクリエーターは、男子中学生のなりたい職業ランキングでは第2位、高校生では第3位にランクインしているそうです。そこで今回はゲームクリエーターの中でも、キャラクターアクションゲームを作るゲームデザイナーとして第一線で活躍している安原広和さんに、キャリアパスやお仕事についてお話を伺いました。

ゲームデザイナーとは?

ゲームデザイナーのお仕事について教えてください。

簡単に言うと、ハードウェアの仕様に合わせてゲームの面白さを設計する仕事です。例えば、きれいなグラフィックや、ゲームシステム、素晴らしいストーリーを組み合わせただけでは楽しくて面白いゲームにはなりません。そこにきちんとしたゲームデザインを施すことで、人の脳の中にある「楽しい」「面白い」という感情を司る部分を刺激することができます。

そのすべての意匠と工夫を具体的に考え、ゲームの面白さを構築することが、ゲームデザイナーの仕事です。

ゲームデザイナーになろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

学生時代の専攻は機械工学で、粘性や流体力学を勉強していました。大学時代はパソコンゲームやアニメーションに親しみはあったものの、ゲーム業界への興味があったわけではなく、将来はメカトロを使った放送や舞台美術関連の職業に携わりたいと、漠然と思っていました。

しかし、就職する時期に、大学の近くのゲームセンターを訪れる度、デジタル技術を駆使した、日々進化していくゲーム機器を目の当たりにし、将来のデジタル分野の可能性を確信し、ゲーム業界を志ざすようになりました。

自らの専攻と全く関係のない分野に進むことへの抵抗や周囲からの反対意見はなかったのですか?

なかったですね。当時セガはまだまだ無名だったため、大学の教授からは他にも有名な企業が山ほどあるのにとは言われましたが(笑)。自分が機械工学の分野で今まで習ってきた知識でできることは今までもできたことで、これから30年、40年働くことになる業界は、まだ天井が見えない新しい分野でやりたいなと思ってセガに決めました。

未知の分野に進むことで、辛いことはなかったですか?

結果として、知識がまったくない状態からのスタートになったわけですが、これから成長していく分野で、自分も周りも手探りの状態で製品を作っていくことにうきうきしている自分がいました。もちろん辛いこともありましたが、やるからにはみんなをアッと言わせるいいものを作りたいという思いを持って、日々楽しんで取り組めました。

そのような環境からソニックが生まれたわけですね。

そうですね。ゲームと同時にセガのマスコットとなるキャラクターをつくる使命も任されたのですが、それもまたチャレンジングな経験として楽しむことができました。途中まで誰もこんなヒット作を作れるとは思ってなかったのですが(笑)。初めは本当に手探りで、インターネットもなかった時代でしたから、『ファミコン通信』(家庭用ゲーム雑誌)を読んだり、他社のゲームをプレーしたり、いろいろなゲームを分析したりしていました。

ゲームのアイデアはどのように考えたのですか?

トライアル・アンド・エラーで、とりあえず手を動かして周りの人からフィードバックをもらったりしていましたね。必ずどこかのタイミングでパズルのピースがきれいにはまるような感覚があるので、それがあるまではずっと手を動かして、アイデアを形にし続けていました。ソニックに関しても、同僚と話したり、試行錯誤を繰り返したりして、コアとなる要素を固めていきました。基礎の土台ができてからは、早かったですね。

ソニックは初めから海外を視野に入れて作られたと聞きました。

そうです。初めから、日本国内だけではなく、海外で受け入れられるゲームを目標に作っていました。これは自分だけでなく、自分たちの世代の共通認識として、ビデオゲームは海外から輸入されてきたものなのだから、日本だけでなく海外でも売るものという意識がありました。

市場規模的にも、日本国内だけで販売するより圧倒的に大きいですし、それが普通なのかなと。なのでゲーム設計に関しても海外を意識しましたし、結果としてヒットしてくれたので、とても嬉しかったです。

ディズニーでの経験は第二の分岐点

ソニックを作られたのち、渡米され、ディズニーで働かれたそうですね。

SEGA からディズニーイマジニアリングというディズニーランドを作る会社へ派遣されたんです。エンターテインメントビジネスの現場を学びたいと思い参加しましたが、結果として、自分の人生の中で第二の分岐点となるほど多くのことを学びました。

その中でも一番大きかった学びが「ゲストのためにものを作る」という発想です。これはとても単純で当たり前なことなのですが、その重要性を改めて考えさせられました。

具体的にどのようなきっかけがあったのでしょう?

ディズニーランドにあるアトラクション、ライド、建物の設計・デザイン、周りに植えてある木の高さ、どれをとってもすべて来園者の安全を第一に考えて設計されていることを知った時ですね。園内のすべてのものに意味や理由があるんです。

自分はゲームデザイナーとしてゲームの設計に長く携わっていましたが、あそこまで徹底してお客様第一ですべてがデザインされているということがとても衝撃的でした。それと同時に、自分にはまったくエンターティメントに関する知見や経験、そして心構えや覚悟のようなものが足りないと気づかされました。この経験を経て、ユーザー側に立った視点でゲームを作らなくてはいけないと思いました。

この経験は今でも生かされていますか?

もちろんです。この経験以降、「よいゲームとはユーザーを心からもてなすゲーム」だと、より一層考えるようになりました。

「長く遊んでも疲れない、繰り返し遊びたくなる、直感的でストレスのない操作感、心地よい達成感が得られるゲーム」をモットーとして、ゲーム制作に取り組みました。

Unity Japan で教育業界に携わる

現在は Unity Japan で、どのようなことをされているのですか?

中高生に向けたゲーム開発のイロハを教える教材の開発を行っています。ゲーム開発と一言でいっても、その幅は広く、ゲームアイデアの立案から、設計、開発まで多岐に渡ります。

それらを包括して経験でき、ゲームデザインの基礎を簡単に学ぶことのできる教育教材の作成を目標にUnity Japanと協力して取り組んでいます。

ゲームデザイナーという職から、教育業界に転身した理由を教えてください。

完全に転身しているわけではなく、ゲームデザイナーとして僕が今まで経験してきた知識や経験を、これからのゲーム業界を担っていく若者たちにシェアしていきたいという思いが大きいです。

前から自分のデザインの経験やノウハウを体系的にまとめたいと思っていたところ、Unity Japan さんから声をかけていただきました。将来、ゲーム業界を担って海外でも活躍していく中高生を、簡単にゲーム作りが体験できるUnityを使って自分のメソッドを組み込んだ教材を使って手助けできたらいいなと思います。

海外に出たことが大きく影響しているということですか?

それは大きいですね。日本にいたままだったら、こういうゲームデザインに関するノウハウをここまで体系化はできなかったと思います。海外に出て、自由にさまざまな現場を見てきたからこそ得られた知識だと思っています。「なぜゲームは面白いのか?」を、今の学生たちに学んで欲しいと思っています。

これまでのお話の中で、すべてのキャリアパスにおいて好奇心が大きな推進力になっているように感じました。

そうかもしれません。どのようなところにいても、自分がその時に最も興味のあることに取り組むことが一番大切だと思っています。その分野が今まで自分の取り組んだことのないような分野でも、ゼロからの学びを楽しむことのできる分野であれば、ためらわずに選択します。自分の好きなことを信じて、自分で道を切り開いていくことが大切なのではないでしょうか?

最後に、これからゲーム業界に進みたい学生に向けたアドバイスをお願いします。

若いうちに海外に出て、日本以外の世界を見て、そこでたくさんの友だちを作ってください。若い時に海外で知りえた友達は生涯の宝となります。人生の道程でふたたび出会い、より見晴らしの良い高い場所へあなたを引き上げてくれます。

あとは英語の勉強をしっかりと。日本はこれから超少子高齢社会になるので、従来からの購買層は現在より小さくなり続けます。日本のゲーム産業が存続するためには、世界市場に進出し、顧客を手に入れなければいけません。

しかしながら、ゲーム会社に就職しても、従来からあるゲームのプロジェクトには組み込まれるものの、世界市場の現状を具体的に知る機会は得られないことも多いです。市場となる世界のことを知らないと、商品自体を作ることもモノを売ることもできません。そのことを意識しながら、多くの経験を積んでいってほしいです。

ありがとうございました。

取材を終えて:
私自身、日本の大学院で情報工学を専攻しており、将来のキャリアパスとしてゲーム業界を視野に入れていたので、安原さんの理想のゲーム像は大変参考になりました。また、自分の好奇心を推進力として、キャリアパスを選択してきた安原さんのお話は、就職活動を控える私にとってとても刺激的でした。お忙しい中、時間を割いていただいたことに感謝しています。

取材・執筆:常川翔平
大阪府立大学大学院にて情報工学を専攻。現在は大学院を1年間休学し、IT最先端の地シアトルでコンピュータサイエンスを学ぶと共に、ビジネス・マーケティングの素養を身につけるため留学中。

掲載:2017年6月

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