MENU

第29回 キャラクター・ストラクチャー

  • URLをコピーしました!

筆者プロフィール:松原 博(まつばら・ひろし)
GM STUDIO INC.主宰。東京理科大学理工学部建築科、カリフォルニア大学ロサンゼルス校建築大学院卒。清水建設設計本部、リチャード・マイヤー設計事務所、ジンマー・ガンスル・フラスカ設計事務所を経て、2000年8月から GM STUDIO INC. の共同経営者として活動を開始。主なサービスは、住宅の新・改築及び商業空間の設計、インテリア・デザイン。2000年4月の 『ぶらぼおな人』 もご覧ください。

最近、キャピトル・ヒル周辺で変わった建物が見られるようになった。建物の基部である1階から2階分は歴史的なレンガやスタッコのピラスターと呼ばれる幅の広い柱や、コーニスやアーチを残したまま、その上には3階から5階くらいの集合住宅が載っている建物だ。

パッカード・ビル(Packard Building)

写真1:パッカード・ビル(Packard Building)

基部である1階また2階部分は商業空間として使われている場合がほとんどで、歴史的な建物に比べ、窓枠や扉が新品のアルミ製なので、古さの中に新鮮さを感じさせる(写真1)。これらは、歴史的な建物を保存しつつ、新しい開発を推奨しようとするシアトル市が考えだした法律によって生まれた、新しい形態の建築物だ。シアトル市土地利用法(Land Use Code)を調べてみると、キャピトル・ヒル地区内、北端は East Olive Street、東端は 15th Avenue East、南端は Madison Street とEast Union Street、西端は Interstate Freeway で囲まれた地域内で、築75年以上の建物を「キャラクター・ストラクチャー」(個性的な建物:Character Structure)と定義している。これらの建物は、文化保存指定建物と違い、建築的な重要性はないが、キャピトル・ヒル地区の歴史的文脈を作る大事な建物というカテゴリに入る。キャピトル・ヒルを歩いてみるとわかるように、この地域にはまだ多くの1、2階建てのレンガ造りの建物が残っており、パイオニア・スクエア周辺のように見栄えのする建物は少なく、目立たない工業的な建物が多い。この土地利用法によると、これらのキャラクター・ストラクチャーを壊して再開発をする時、既存建物を残して増築をする場合、または一部を残して増築をする場合に対して、それぞれ違った比率で容積率または最高建物高さの規制緩和が許されている。これらの緩和は当然、不動産価値の増加につながるので、多くの開発者(デベロッパー)が、建物の一部または、全部の保存をしつつ、集合住宅の増築を試みている(写真2)。

既存建物に上に増築された例

写真2:既存建物の上に増築された例

1 2 3
  • URLをコピーしました!

この記事が気に入ったら
フォローをお願いします!

もくじ