【IT】シアトル在住のアーロン・パターソンさん、ネットスラングの解説で一躍有名人に 「日本とアメリカの架け橋になりたい」

2017年9月29日(金)

9月12日、とあるアメリカ人のツイッターユーザが、「笑い」を意味する日本のネットスラング「草生える」を英語話者に向けて解説しました。一連のツイートは世界各国で拡散され、5万リツイートを超えるまでに。日本のネット文化を全世界に知らしめたこのツイートをしたのは、シアトル在住のソフトウェアエンジニア、アーロン・パターソンさん。さっそく今回の騒動についてお話を伺いました。

― なぜ「草生える」をツイッターで広めようと思ったのですか?
正直、こんなに広まるとは思っていませんでした。私は日本発祥のプログラミング言語「Ruby」を使ったソフトウェア開発をしていて、先日たまたま日本人の同僚がこのネットスラングについて教えてくれました。「草生える」の成り立ちは日本語独特の背景があり、とても面白いと感じたんです。英語を話す人たちにこのことを知ってもらいたいと思って、ツイッターでシェアしました。

― 何が「日本語独特」なのでしょうか?
このスラングの語源は「w(笑うの略語)」のローマ字です。w という文字が草の生える様子に似ていることから「草」の漢字に置き換えられ、「草生える」と言われるようになりました。ローマ字が漢字に変換されるというプロセスは日本語にしかないもので、言語学的に大変興味深いです。アメリカ人がwを見ても、決して絵には見えません。でも日本人には草のように見えるんです。

英語にも似た表現の「lol」がありますが、これは Laughing Out Loud(大笑い)の頭字語で、絵としては認識されていません。文字を絵としてとらえる日本語ならではの感覚は、英語と比べて考えたときに初めて面白さがわかります。私に教えてくれた同僚は日本人で英語を話さない人でしたので、このポイントはわからない。だから私は英語で説明してみようと思いました。

― 大きな反響を受けていかがでしたか?
最初はびっくりしました。ツイートをしてすぐに携帯の通知が鳴り止まなくなり、携帯がクラッシュしたのかと思いました。その後たくさんのネットメディアに取り上げられて。この騒動の後に仕事で日本に行ったところ、「あ、草生えるの人だ!」と知らない人に言われたり、「草」のTシャツを作って私に会いに来てくれる人までいました。本音を言うと、ちょっと恥ずかしいんです。まるでネットスラングの第一人者のようになってしまった。

― もともとネットスラングに興味があった?
まったくないです(笑)。私自身はスラングよりも正しい日本語の方が好きです。日本語の勉強を開始したのは2006年、きっかけは Ruby です。Ruby は日本人が開発した言語で、調べようとすると日本語の記事ばかりが出てくるので、もっと知りたいと思って独学で日本語を学び始めました。敬語や漢字を覚えるのに忙しくて、スラングは覚えなかった。ビジネスとして使う言葉とくだけた表現を混同したくないので、なるべくフォーマルな言い回しを使うようにしています。アニメや漫画よりも、小説やテキストブックで使われる言葉の方がずっと勉強になります。漫画だと『美味しんぼ』は読みますね。正しい日本語が使われているし、日本の食文化についても学べるので。

― 勉強がお好きなんですね。
そうですね。何かを深く学んで、得た知識を人に伝えることが好きです。今は Ruby 業界のパブリックスピーカーとして、世界中のカンファレンスでプログラミングについて話しています。今回日本のネットスラングについてツイッターでシェアしたのも、同じ気持ちからです。

このツイートの後、たくさんの日本人が他のネットスラングを教えてくれました。草生えるの派生語「大草原不可避」や、「マジ」を意味する「魔剤(まざい)」、高校生がよく使う「5000兆円欲しい!」などなど。本当にたくさんのネットスラングがある。面白い文化ですよね。

― これからの目標はありますか? 日本のネットスラングの布教者になるとか?
スラングはもういいです(笑)。私にとって言葉はコミュニケーションのためのツールなので、日本語がペラペラになることが一番の目標です。「Ruby Kaigi」という日本開催のカンファレンスで私が日本語でのプレゼンテーションを始めて、今回で4回目になります。英語であればスライドを開きながら臨機応変に話せますが、日本語だとそうはいかない。あらかじめ台本を作って、練習して覚えて、それをそのまま話すことしかできません。英語と同じように日本語でも自然なアドリブができるようになりたい。それが私にとってのペラペラです。上達のために、一度は日本に住んでみたいと思っています。英語からの翻訳ではなく、日本語だけで考えて話せるようになりたいです。

― 外国語を母国語と同じレベルでマスターするのは、とても大変なことですよね。
10年間勉強してもまだ難しい。でも私はチャレンジが好きなんです。また私がこうやって努力することで、同じように英語を勉強する日本人たちに勇気を与えられたら嬉しいですね。「あいつがあんなにがんばって日本語を勉強している。じゃあ俺も英語やろうかな」と思ってもらえたら。現在、アメリカ開催のRubyカンファレンスに日本人が参加するときは、彼らの英語プレゼンテーション作成を手伝っています。これからも勉強を続けて、日本とアメリカの架け橋になれたらと思っています。

アーロン・パターソンさん
Aaron Patterson(アーロン・パターソン):
ソルトレイクシティ出身。1999年からソフトウェアエンジニアとして働き、2000年にシアトルへ移住。現在はサンフランシスコに本社を置くソフトウェア会社「GitHub」でエンジニア兼パブリックスピーカーとして国内外の技術カンファレンスで講演も行う。日本初の国際規格認証プログラミング言語「Ruby」及び「Ruby」を用いるソフトウェア「Ruby on Rails」の開発者としてプログラミング業界で広く知られている。好きな漢字は「家」。普段は自分の家にこもることが大好きだが、趣味のキノコ狩りの時だけはすすんで外に出るそう。

掲載:2017年9月 文・写真:小村侑子

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