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ペットと赤ちゃん

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ペットの安全性

妊娠中や子供が幼いうちは、爬虫類(亀・蛇・トカゲ・イグアナなど)や両生類(カエルやサンショウウオなど)は避けましょう。特に爬虫類は90%以上にサルモネラ菌がいることがわかっています。通常、サルモネラ菌は食中毒をおこすばい菌で、主に鳥肉や卵についており、料理の時にまな板や調理器具をよく洗い、よく火を通して食べれば防げる場合が多いのですが、ペットにサルモネラ菌がいる場合は、糞に含まれる菌が粉になって家中に広がることがわかっています。これから妊娠する予定があって現在爬虫類を飼っている人は、爬虫類を他の人に引き取ってもらい、家中をきれいにしましょう。

ひらひらと泳ぐ金魚や熱帯魚は幼いうちから赤ちゃんが目をひかれ、私のクリニックでも上のお兄ちゃんやお姉ちゃんたちは金魚に餌をやるのを楽しみにしています。でも、濡れたところにはばい菌が繁殖しやすいので、水槽や金魚を扱ったら、子供に触る前に、必ず石鹸とお湯で手を洗いましょう。また、ガラスと水と電気を使う熱帯魚は、子供が電線や水槽を引っ張って事故にならないよう、十分気をつけましょう。熱帯魚の水槽は大変重いものです。規定の台を使い、地震やぶつかったりした時に簡単に子供の上に倒れないよう、注意をしましょう。

また、犬や猫も、獣医に連れて行って健康診断をしてもらいましょう。自分が妊娠を計画していることを伝え、必要な検査・処置をしてもらいましょう。予防注射をして病気にならないようにすると同時に、寄生虫やノミを駆除し、子供にうつらないようにすることも大切です。特に猫の場合はトキソプラズマという原虫がいる場合があり、妊娠中に感染すると胎児が死亡したり、発達障害が起こったりします。若いころから猫を飼っていた人なら、トキソプラズマの抗体があることが多く、新しく感染することはまれです。すでに陽性になっている猫の場合は、妊娠中は他に預けておきましょう。現在陰性で外に出る猫は、汚染された肉を食べて感染することがあり、糞の中にオーシストとよばれる卵を排出します。妊娠中は、猫を外に出さず、妊娠していない人に毎日砂箱をきれいにしてもらいましょう。

妊娠や出産を予定していて、新しくペットを飼う場合に、どんな犬種なら安全か、どの種類の猫が良いか、などとと聞かれることがあるのですが、種類による性格的な傾向ぐらいはあっても、それ以上に個体差が大きいと思います。子供にとてもやさしいピットブルもいますし、子供に噛み付いて大けがをさせる小型犬もいます。どちらにしても、どんなしつけをしているかがとても大切になります。小さいころから、「人間は優しくて、かわいがってくれて、信頼できるボスなのだ」ということをペットに体験させておくと、小さくて、弱くて、しかも、わけのわからないことをする子供が家族に加わっても、「ボスにとって大切な生き物なのだから、自分も大切にしよう」と感じてくれます。

長く飼っていて信頼できるペットだからといって、ペットと赤ちゃんだけにしておくことは避けましょう。予測できない事態が起こった時に、ペットや子供は十分な判断力がないため、事故につながる可能性があります。たとえば、子供が犬の首輪に腕を入れてはずれなくなったりした場合などは、呼吸のできなくなった犬が必死になってもがいて、大変危険です。また、他の犬や猫が自分の縄張りに入ってきた時に、普段はおとなしい猫が手近にいる子供を攻撃するような場合もあります。このような事故はとてもまれですが、毛をひっぱって猫にひっかかれたり、犬が興奮して子供にぶつかって子供が転んだりすることは良くあります。ペットと子供が一緒にいる時には、必ず、大人が同席するようにしましょう。

犬のしつけ

子供というのは思いがけない行動をするものです。どんな事態が起こっても「子供にはやさしく対処しなさい」と犬に教えるのは、ちょっとした工夫が必要です。今回は、犬が自分の餌やドッグボーンを守ろうとして子供に噛み付く事故を防ぐために、どんなことに注意し、どんなしつけをしておいたら良いかについて書いてみます。

すでに基本的なしつけができた犬の場合は、特に新しい準備はいらないかもしれません。ここで言う基本的なしつけとは、次のようなことです。

  1. 呼ばれると喜んで飼い主の手元に来る。
  2. 飼い主が耳や歯や爪の手入れをしてもいやがらない。
  3. 食事の時に、飼い主の食べているものを欲しがらない。
  4. 餌を食べているときに飼い主が餌を取りあげても怒らない。
  5. 手から餌をあげると、飼い主の手を傷つけないよう、そっと受けとる。
  6. よその人に吠えていても、飼い主が制止すると止める。
  7. 決められた場所でじっとしていることができる。

こうしたしつけができていると、犬は飼い主を信頼し、飼い主の地位が自分より高いことを認識し、自分の牙を飼い主に向けてはならない、ということを覚えているので、飼い主にとって大切な存在である赤ちゃんを、自分も大切にしようとしてくれます。

気の強い犬や、シェルターからもらってきたばかりで経歴のわからない犬などには、赤ちゃんが動き出して犬と関わりあうようになる前に、次のような訓練をしておくと事故の可能性が少なくなります。

  1. 餌をだらだらと食べていると、食べ残しがいつもそこにあり、それを守ろうとする可能性があるので、決まった時間内に食べるように教えます。だらだら食べるくせのある犬の場合は、タイマーをかけておき、10分待って食べ終わらない場合、取り上げてしまい、次の食事時間までは何も与えません。いつもこうしていると、ちゃんと時間内に食べるようになります(これを教えておくと、食べ残しの犬の餌を赤ちゃんが食べてしまう、という事故を防ぐことにもなります)。
  2. 一度にたくさん餌を与えるよりも、朝と晩の2回に分けた方が、途中でお腹がすき過ぎて怒りっぽくなることを避けることができます。
  3. 犬が自分の餌を守ろうとする場合には、次のような手順で慣らしていきます。
    • まず、犬が餌を食べ始めたら、犬の名を呼び、犬の大好物(チーズやソーセージなど)を手に持っているのを見せながら近づき、手早く餌の上に置きます。
    • それに慣れたら、犬に好物を見せながら、犬の食器を少し持ち上げ気味にし、好物を乗せてから戻します。
    • 餌入れを取り上げて、好物を入れてから犬に返すことができるようにしていきます。
    • これができるようになったら、遊びに来た友達や、小学生以上の子供に協力してもらって、餌を持って近づくところから始めてもらいます。
    • これをときどき繰り返したり、違う人に好物を入れてもらったりしていると、犬は餌を食べている時に人が近づいてくるのを待ち望むようになり、餌を食べている時に子供が近づいても、むやみに噛み付く可能性が低くなります。
  4. 手から餌をもらう時は、優しく取るように教えます。これは、あまりお腹がすき過ぎていない時をねらって教えます。握りこぶしの中に小さく切った犬の好物を入れ、少し覗かせておきます。噛もうとしたら、握ってしまって、取れないようにします。舌でなめようとしたら、少しこぶしを開いて、1つづつ食べられるようにします。これを繰り返していると、ガブッと取ろうとすると好物がもらえない、ということを覚え、そっと取るようになります。
  5. 「お預け」「ちょっと待て」という言葉を教えておきます。子供が犬のドッグ・ボーンなどを持ったときに、すかさず、「ちょっと待て」とか、「お預け」と犬に言うことによって、犬が子供の手からドッグ・ボーンを取ろうとするのを防ぐことができます。子供には、別のおもちゃを与え、犬にドッグ・ボーンを返します。
  6. 餌なら取り上げられても大丈夫なのに、ドッグ・ボーンだけは守ろうとする犬もいます。そういう場合は、クレート(犬のかご)トレーニングをし、クレートの中に入っている時にだけ、ドッグ・ボーンをあげるようにします。

クレート・トレーニングや「ちょっと待て」の教え方などは、犬の躾に関するウェブサイトを見てください。私の好きなトレーニング法は、クリッカーを使い、褒めながら、楽しみながら教える方法です。クリッカー、犬のしつけ、とサーチ・エンジンで検索するといろいろなウェブサイトが出てきますので、参考にしてください。

情報提供:
ナースプラクティショナー・助産婦・看護学博士 押尾祥子さん

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