21世紀型の教育 – シアトルで議論する新しい教育の形 (1/4)

『21世紀型の教育とは』 と題し、東北大学大学院情報科学研究科の堀田龍也教授、文部科学省の武藤久慶さん、そしてマイクロソフトの保坂隆太さんがワシントン州ベルビュー市の Bellevue Children’s Academy(BCA)で行った講演&ディスカッション。日本の教育の現場・最前線で新しい教育の形を模索、リードしてこられた堀田先生と武藤さんが日本の教育の現場で行われているさまざまな施策と課題を紹介し、その中でも特に注目されている課題がシアトルのIT業界の現場で注力されている企業文化育成の施策と、意外な共通点があることを発見するという、充実したものとなりました。

結論は、「無意識なものをどれだけ意識化できるかどうかが、これからの教育のキーワード」。今回、講演者の一人である保坂隆太さんにこの催しの内容を再構成したものを4回に分けて連載していただきます。

21世紀型の教育

堀田龍也教授(左)『21世紀型の教育』講演

講演:東北大学大学院情報科学研究科 堀田龍也教授(ほりた・たつや)
1964年熊本県天草生まれ。東北大学大学院情報科学研究科教授。博士(工学)。東京学芸大学教育学部卒、東京工業大学大学院修了。専門分野は教え方の研究、特にICT活用による授業。中央教育審議会初等中等教育分科会/教員養成部会委員、同情報ワーキンググループ主査。メディア教育論ゼミについて詳しくはこちら

基礎基本の徹底からグローバルに通用する人材の育成を。日本における21世紀型教育とその取り組み

今日は文部科学省で初等中等教育分野で活躍され、現在ブラジル大使館に出向されている武藤さん、そしてマイクロソフトの保坂さんと一緒に、21世紀型教育を語ると題してこれから二時間ほどお付き合いください。まずは私のほうから日本における教育改革の動向をお伝えするところから始めたいと思います。

世界で受け入れられる優れた日本の教育モデル – 基礎・基本の徹底

昨年、BCA で 『日本型教育のすすめ』 と題してお話をさせていただいたのですが、日本の教育は世界的に見ても評価されているものがあります。日本発の教育で世界中で受けられている代表が公文式(KUMON)ですが、今では49か国で431万人が受講するまでにひろがっているそうです。公文式の優れたところは、徹底した細分化と系列化を行い、繰り返し学習を行うことによって基礎学力を養っていくところにあります。公文に限らず繰り返し学習すること、それにより学習を習慣とすることは日本の教育の得意とするところですね。とはいえ、単に教材が優れているだけでは学習は成立しないんですね。それをサポートする人が必要で、ほめられたい、一緒に勉強するといったソーシャルな関係が成立している、環境がないと学習は進んでいきません。これは子供に限らず大人にとっても一緒で、生涯学習をするにあたって、自分が学習者としてどういう人間になるのかを考えるのはとても大事なことです。

学校は知識を得るだけではなく、生涯学習者を育てるための学びのコミュニティ

学び続ける、というのは言うほど実は簡単ではなくて、例えば漢字を毎日書くといった課題が子供与えられることがありますが、子供はなぜそれが必要なのかはわからないわけです。しかしながら、繰り返すことによって学び続けるということが身につくのです。すなわち、漢字の書き取りの学習では漢字だけを学んでいるわけではなく、学び方や学ぶ習慣についても学んでいるわけです。これが生涯学習で必要な学び続ける、という姿勢を育てます。

ある学校では言葉の意味を調べるために辞書を必ず引かせるようにしているのですが、引いた言葉のあるページに付箋を貼らせるんです。そうすると何度も何度も辞書を引くとそのうち辞書が付箋でいっぱいになる、それによりどれだけ学習が進んだのかが目で見てわかることで、これだけボキャブラリーが増えた、という達成感を得られるわけですね。

21世紀型の教育

繰り返し学習する、どれだけ学習したかを目で見えるようにし、達成度を実感する

BCA でも今日辞書引いて勉強する姿を見ましたが、普段英語を使っている子供が日本語の辞書を使って学習する、というのはよほど興味があれば自発的に実施する子供もいるでしょうが、学校という学習の場所で意図的に学習をさせることによって、学校が単に知識を得る場所としてだけでなく、大人になるにあたってどんな学習、体験が必要なのかを考える機会を与える場所として機能しているわけですね。

主体的な学び、グローバルに通用する人材を育てるカリキュラムへ。2020年に大きく変わる日本の教育カリキュラム

さて、日本の教育の現場では児童生徒の学力の低下が課題になっています。実際に何が起こっているのか、ちょっと分析をしてみると興味深い変化があることがわかります。高校生の学校外における平日の学習時間の推移をこの20年間で比べてみると、偏差値の高いグループはさほど学習時間に変化がないのですが、偏差値が真ん中前後にあたるグループでは著しく学習時間が少なくなっているのです。日本の大学の進学率は今57%なのですが、これを大学の定員総数から見ると、大学に入りたい学生はほぼ100%入学できる、つまりそれほど勉強をしなくても大学にはとりあえず入学できるので、相対的に勉強しなくなっている、という状況になっており、それがこのような状況を招いていると考えられています。

このような状況の中で日本の教育をどう変えていくのか。日本では2020年を大きなターニングポイントとして、日本の教育が大きく変わることになります。たとえば言語能力はこれまで以上に重視する。日本語での表現、特に抽象的な思考、論理的な思考を強化していこうという動きが一つ。そしてもう一つは STEM と呼ばれている理数教育の強化。たとえば統計がもっと中心的なカリキュラムとして位置づけられる。自分が得た情報をどうやって効果的にビジュアルに表現するか、データをきちんと読み取る力、といったところですね。この流れがビッグデータ、AI、ひいてはプログラミング教育の強化といったことにつながり、日本でも小学校からプログラミングが必須になる予定です。

そしてグローバルを見据えた教育。日本は他国に比べて遅れているところです。これまでは他国では小学一二年生が実施するような英語に触れることを目的としたカリキュラムを日本では小学5、6年生で実施していたのですが、それを小学3-4年生で実施するように変更し、5-6年生では教科としてきちんと評価をするようなカリキュラムが導入されることになります。6年生が終わるころには今の中学校2年生の前半程度のカリキュラムまでがカバーされます。まだまだ他国に比べれば見劣りしますが、それでも大きな前進です。

グローバルという観点では英語だけでなく、文化の理解も大事ですが、外国人があまり居住していない日本にいるだけではこれを理解するのはとても難しい。日本人は非常に異文化に弱い。そこで異文化を理解するためにはどうするか、という観点で近年では文部科学省も留学を奨励するなどして、前に進む動きがあります。もう一つ注目されているのは IB(国際バカロレア)プログラムという国際標準のカリキュラムへの取り組みです。これまでの日本の教育が得意とする知識を詰め込むだけではなく、身につけた知識をきちんと使えるようにするという観点で注目されています。IBプログラムは私立学校を中心に積極的に導入されており、日本の大学へ進学するだけではなく、他国の大学への進学への道づくりをサポートする、そして文部科学省もその動きをサポートしています。

積極的、主体的に。深い学びを。

さて、次期学習指導要領改訂のグラウンドデザインでは、何ができるようになるか、何を学ぶか、どのように学ぶか、の3つがキーワードになっています。この中でこれまでの教育では特に "どのように学ぶか" が足りてなかったのではないか、という反省から、アクティブラーニングの導入により生徒自らが積極的に学ぶ、もしくは個人だけではなくチームとして学んでいく、といったことをとおしてより深い学びが得られるような学習を体験・経験するカリキュラムが導入されるようになります。また、単にカリキュラムの変更だけでなく、これに並行して入試、代表的な例では大学センター試験でも単に知識を問うだけではなく、思考力を重視したような内容に変わることになります。これは日本においてはとても大きな変化です。

2020年を見据えて、日本の教育もさまざまな変化が起ころうとしています。アクティブラーニング、主体的に学ぶ、そしてグローバルな人材が育成できる教育。これまでの日本の教育の良さは継承しつつ、これから先日本の教育がどう変わっていくかを紹介させていただきました。

掲載:2017年11月

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