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アメリカでの不妊治療体験記 第4回 休憩

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それから1年は妊娠のことなど考えずに過ごしました。幸いなことに、私たちの両親は「人生の幸福は結婚と出産と子育て」「老後の楽しみは孫」というタイプではなかったので、聞いてくることも催促されることもありませんでした。

実際のところ、「子供はまだ?」と聞いてくるのは友人知人でした。それもあまり親しくない人にはこちらもプライベートなことを話さないため、逆に興味がわいてくるものなのでしょうか。誰もが簡単に妊娠すると思い込んでいるのか、それとも何も考えていないのか。そういう質問をするだけでも傷つける場合があるということがわからないことにガッカリしました。

また、ある時、私が不妊治療をしているとは知らない子持ちの人が、「私だったら、できないんだから仕方ないと割り切って治療するわ。悲しむなんて考えられない。たかが1万ドルぐらいでしょ?子供が作れるなら安いじゃない」と言ったことはちょっとショックでした。「実際に問題なく妊娠して出産した人に、何がわかるんだ」と思いました。「たかが1万ドル」と言い切ることにも、「1回で成功するのが確実ならそう言えるだろう」と。その人が実際に1万ドルをポンと出せるほど裕福ではなくても、何もかも自分にはまったく関係がないから軽く言えるんだ、そう思いました。

不妊治療クリニックの待合室は、どんよりした感じではありませんが、どう見ても「楽しく治療!」「割り切って治療!」というような、明るくエネルギッシュな雰囲気ではありません。治療の順番を待ちながら黙って座っている夫婦や、治療が成功せずにガッカリして泣いている人もいたりする待合室で、その人は同じことを声を大にして言えるのでしょうか。

また、「不妊治療までして自分の子供が欲しいって気持ちがわからないなあ。世の中には親に見離された不幸せな子供がたくさんいるんだから、そういう子を養子縁組すればいいのに」という意見も聞きました。そうです、確かにそういうオプションもあります。そう言う人自身がそういう子供と養子縁組をしていたり、フォスター・ペアレントになっていたりするなら、かなり説得力があると思います。私の友人の中にも米国内や外国から子供をアダプトした人たちがいますし、彼らから聞く限り、その手続きはそれはそれは大変なものでした。

でもそのオプションは、不妊治療をしている人にも、自然に妊娠できる人にも、同じように与えられているオプションだと思います。自分とパートナーの子供が欲しいと思う自然な気持ちを否定したり、「不妊治療をしてまでも」と、他人がとやかく言うことはないと私は思います。

このように、いろいろな思いはありましたが、やはり誰にも治療のことを言っていなかったので、黙っているしかありませんでした。それが最も辛かったかもしれません。

筆者プロフィール:30代に入ってから不妊治療を開始。タイミング法や人工授精での失敗を経て、体外受精に挑戦し、その結果、子供を授かることができました。不妊治療を受けようとしている方、不妊治療中の方の参考になればと思います。

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