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第9回 : 離乳食を始めた

アメリカでは出来合いのベビー・フードを使用することが多いという話を聞いていたので、離乳食(Solid foods、Solids)の料理本は日本のものが良いかもしれないと思い、日本の母に頼んで数冊購入してもらった。思ったとおり、日本の本には大人が食べてもおいしそうな見栄えのするメニューの数々が満載だ。そんな本を毎日のように眺めて、娘の口にスプーンを入れたところを想像しては「かわいい〜」と、ニヤニヤしながら、離乳食を始める日を心待ちにしていた。

離乳食の開始時期については、日米とも生後5〜6ヶ月程度ということで大差はない。日本では、徐々に母乳以外の味に慣らすため、3〜4ヶ月ごろから風呂上りに湯冷ましを飲ませたり、果汁を飲ませたりして準備する習慣がある。準備期の後、『離乳の基本』という日本政府発行の指針に沿って、5ヶ月から離乳食を開始し、初期・中期・後期・完了期と徐々に量を増やしながら大人が食べる食べ物と同じ固さにしていき、生後15ヶ月で完了という方法が一般的のようだ。一方、アメリカでは米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)が、生後6ヶ月までの赤ちゃんは、栄養的に母乳以外何も必要がない(母乳のみの場合はビタミンDの補給を薦めているが)としているので、これが基本となっているようだ。水でさえ必要ないという。6ヶ月間母乳以外に何も与えないでよいのなら、わずかながらの経費節約もできるし、「何と言っても手間が省ける!」ということで、生まれつきめんどうくさがりの私にはぴったりのアメリカ流で行くことにした。それに、アレルギーなどの心配を考えても、アレルギーを起こす可能性のある食べ物に接するのは少しでも遅めの方がよいという考えもあった。(ちなみに、授乳している私の食欲はすごいので、食費が増えている分、実はあまり節約になっていなかったのではないかと思い始めている)

日本の本を見て気付いたことは、「赤ちゃんにできるだけ素材の味を」「旬のものを使おう」「食べる喜びを教えよう」といった、食に対する情緒を育てることに重点を置いた書き方をしているものが多かったことだ。しかし、医学的に見てどういう食材がよいのか、といった点では、少し物足りなかった。一方、アメリカでももちろん離乳食に味付けは必要なく、素材の持つ味を教えるのがよいという考えはあるものの、本などでは、母乳に不足しているビタミンDを補うとよいとか、トマトなどの酸の強い食材をアルミニウムの鍋で料理するとアルミの成分が溶け出してよくないとか、シュウ酸(アク)の多く含まれるほうれん草はカルシウムの吸収を悪くするので離乳食に向いていないとか、科学的な記述がより目に付いた(もっとも、アクは茹でこぼして水にさらせば問題ないということだが)。ちなみに、日本では赤ちゃんに与える果汁などによく使われる柑橘系の果物も、アメリカではアレルギーを引き起こしやすい食べ物として、あまり早くから与えないよう指導されている。

赤ちゃんが最初に食べるものとしては、日本ではお粥か重湯(おもゆ)、アメリカではライス・シリアルが一般的だ。どちらにせよ、穀物の中ではお米が最も赤ちゃんに受け入れられやすいようだ。ライス・シリアルは、シリアルと言っても粉状になっていて、水や母乳、ミルクなどを混ぜてドロドロ状にして食べさせるもので、鉄分などの栄養分が含まれている。我が家では、まずはお粥を1週間与え、その後ライス・シリアルを与えた。お粥はごはんの味しかなくネトネトしているが、ライス・シリアルはほんのりとあまくて口当たりもよいためか、娘はライス・シリアルがお気に入りのようだ。お粥には積極的に口を開けないのに、ライス・シリアルだと口を大きく開けてバクバク食べる。ライス・シリアルは、水を混ぜればすぐに準備できるので、お腹をすかせてぎゃーぎゃー言っているときには便利だ。

「ライスもの」の次は野菜に挑戦することにした。やはり、赤ちゃんには農薬を使用していないものをあげたいと思い、まずは、オーガニックのニンジンを裏ごししてみた。これは甘くておいしいので問題なく食べてくれた。次の週は、オーガニックのブロッコリを購入。ところが、オーガニックであるため小さな虫がブロッコリの先端の細かい枝の間にはさまっていて、これをきれいに洗いきるのに相当な時間がかかり、疲れ果てた。しかも、こんなに苦労して作ったのに、味が気に召さないようで、スプーンを口にもっていくと顔を真っ赤にして怒り出す始末。さらに、これが理由かどうかは分からないが、ブロッコリを与え始めたころから、夜中に1時間おきに泣き叫ぶようになった。もしかしてお腹にガスがたまって気持ち悪かったのかもしれない。そんな経緯で再びブロッコリを与える勇気がなくなってしまった。

フルーツについては、「甘いので、早い時期にあげてしまうと甘いものしか食べたがらなくなる」という話をきいたので、野菜を何種類かこなした後にしようと思っていたが、すでに野菜も数種類食べたということで、かねてから「フルーツをあげたい」とひたすら訴え続けていた夫の願いをかなえてあげることにした。フレッシュなバナナとはいかないが、「バナナ入りライス・シリアル」は、普通のライス・シリアル同様、乾燥した粉状のものに水分を混ぜると、バナナ味のライス・シリアルになる。バナナは甘いので赤ちゃんや子どもには食べやすいと思われているようだが、娘の場合はそうでもないようで、変な顔をしながら、しぶしぶといった感じで食べた。こんな小さな赤ちゃんでも好き嫌いがあるのだ。

穀物では、ライス・シリアルの次は、一般的にバーリーとかオートミールのシリアルを1種類づつ試していく。最近では穀物アレルギーもあるので、様子を見ながら少しずつすすめ、小麦などを与えるのも時期を遅らせた方がよいそうだ。 現在離乳食を開始して約1ヶ月が過ぎたところだが、手作りといっても、一度多めに作れば冷凍しておけるし、今のところそれほど手間ではない。しかし、これから大人の食事に近づくにつれ、本当に大変になっていくのだと思う。今一番恐れているのは、娘の将来の食生活がファーストフード大好き・炭酸飲料常飲の、アメリカ風になってしまうことだ。これだけは何としても避けたいと思っているので、離乳食にはできるだけ和風のあっさりしたものを作ろうと計画している。

執筆者プロフィール: 日本での長い独身貴族生活の後、軽い息抜きのつもりでやってきたシアトルで思いもよらず今の夫と出会い結婚。2002年初夏に初めての妊娠が判明し、人生が180度転換してしまった。2003年に長女を出産し、2005年には次女を出産。子育ての毎日は初めてのことばかりで、心配したり悩んだり喜んだりと実に賑やかな(?)生活を送っている。

Back Number
2008年
第61回 言語のはなし 続き
第60回 子供とアクティビティ
第59回 アメリカ人が甘いもの好きな訳?
第58回 逆カルチャーショック
第57回 学校選び
第56回 バケーション

2007年
第55回 言語のはなし 第49回 夏休み
第54回 風邪に悩まされた10月 第48回 おもちゃと遊び
第53回 ほめられるのが嫌いな子 第47回 トイレ・トレーニング完了
第52回 日焼け対策 第46回 姉妹の関係
第51回 ファミリー・キャンプ 第45回 子供の味覚
第50回 プリンセスとウルトラマン 第44回 2006年を振り返って

2006年
第43回 お誕生日パーティ 第38回 子供の感受性(2)
第42回 プリスクール 第37回 子供の感受性(1)
第41回 砂場デビュー 第36回 自分でさせる教育
第40回 殻を破り始めた娘 第35回 ベビーシッター
第39回 スクラップブッキング

2005年
第34回 日本のお風呂に開眼 第28回 しつけ
第33回 子供2人連れ、飛行機の旅 第27回 卒乳(Weaning)
第32回 歌を歌おう 第26回 2度目の出産
第31回 トイレ・トレーニング(Toilet training) 第25回 2人目対策
第30回 引越し 第24回 おもちゃ
第29回 ルーティーン(Routine)

2004年以前
第23回 母親のストレス解消法 第11回 手ごたえあり?の娘との2人旅
第22回 ハロウィーン 第10回 初めての病気
第21回 妊娠中の授乳 第9回 離乳食を始めた
第20回 グランパとグランマ 第8回 初めての飛行機の旅
第19回 ベビー・サインと言葉の発達 第7回 快適育児生活
第18回 日本 vs アメリカ お風呂の入れ方 第6回 「ベビー・・・」
第17回 絵本を読もう 第5回 次の試練 「睡眠不足」
第16回 ベビーとの外食 第4回 最初の試練 「授乳」
第15回 トドラー食 第3回 ついにその日が来た
第14回 あっという間の1年 第2回 妊娠はつらいけれど幸せ
第13回 帰省 第1回 妊娠の日米比較
第12回 動き出した!


注)当ページに記載されている内容は個人の一意見です。この情報に基づいて行動した結果なんらかの損害が発生した場合においても、執筆者およびジャングルシティは一切責任を負いません。記載された情報を活用される場合は、あらかじめ専門家に照会するなど必要な確認を行った上、ご自分の責任で判断していただきますようお願い申し上げます。
   
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