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第58回: 逆カルチャーショック
約3週間にわたり、日本に里帰りをしてきました。最初の4日間は東京に滞在し、旧友に会ったり家族でディズニーランドでのバケーションを楽しんだりしました。今回は、その東京での経験をお話します。
旧友の家を訪れるため、子供2人(5歳と3歳)を連れて電車の旅をしました。これは日本にお住まいのお母さん方には日常のことでしょうが、アメリカに住んでいると普段経験するものではありません。行きはヨイヨイ・・・でしたが、ホテルへの帰路が帰宅ラッシュの時間帯と重なってしまったのです。しかも、疲れている次女は電車の心地良い揺れで眠ってしまい・・・。私自身も独身時代の通勤ラッシュは経験していますが、子連れという立場は初めて。なんとなく周囲の目が怖いのです。眠ってしまった体重14.5キロの次女を右肩に抱えた状態では、普通に歩くのもやっとなのですが、満員電車の中に立っていると、車両がかなり激しく揺れるので、バランスを保つのがとても難しく、しかも長女が揺れで倒れないようにもう一方の手は彼女の手を握っています。つり革や手すりがあったとしても手がいっぱいで持てませんが、そのつり革や手すりさえ手の届くところにはなく、倒れそうになるのを渾身の力を込めてなんとかふんばっていました。でも、顔は普通の表情をしていましたから、仕事帰りで家路を急ぐ人々には私がそこまで力を振り絞っていることは分からないようで、1人で3倍ぐらい場所を取っていることに(3人分だから当たり前ですが)、肩身の狭い思いでした。
私がなんとなく感じ取った周囲の雰囲気は、決して温かいものではありませんでした。日本への逆カルチャーショックというよりは、大都会へのカルチャーショックと言えるかもしれません。それぞれの生活があって、ストレスがあり、疲れていたり、悩みがあったり。そのような1人1人がたくさん集まった大都会・東京で、人の数は多くても、隣の人が何を考えているのか、感じているのかを気にしない、感じなくなってしまっている社会。私自身が独身時代に4年間過ごした東京で、まさかこんな気持ちになるとは思ってもいませんでした。独身時代には心地良かった孤独が、結婚をして子供を持った今、冷たさとしてひしひしと伝わってきたのです。子供とは関係ありませんが、空港からホテルに行くためのバス停に手袋が1つ落ちていました。バスに乗る人々は皆、手袋を一瞥しても無視してバスに乗って行くのです。私が手袋を片方落としてしまったら悔しいと思うだろうと思ったので運転手さんに聞いてもらうと、やはり落とし主がいたようです。電車での経験では、この出来事と同じものを感じました。子供を連れていることはハンディキャップとまでは言いませんが、1人で行動しているよりはかなりの困難を生じます。そういう時に「助け合い」 とか、周囲の人を互いに思いやるような心情のある生活を少し懐かしく感じてしまいました。
もう1つのカルチャーショックは自家用車内での子供の安全の認識についてです。カーシート使用義務が法制化されているにもかかわらず、カーシート無しで乗車している子供や、助手席に乗っている子供をよく見かけました(ワシントン州では13歳までは後部座席に乗ることが法律で決められています)。カーシートを使用していない時の事故は、使用時に比べて子供の死亡率が4倍にもなるという話もありますので、やはり、カーシートに関する意識改革は必要ですね。
(2008年3月)
執筆者プロフィール: 日本での長い独身貴族生活の後、軽い息抜きのつもりでやってきたシアトルで思いもよらず今の夫と出会い結婚。2002年初夏に初めての妊娠が判明し、人生が180度転換してしまった。2003年に長女を出産し、2005年には次女を出産。子育ての毎日は初めてのことばかりで、心配したり悩んだり喜んだりと実に賑やかな(?)生活を送っている。
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