第5回
: 次の試練 「睡眠不足」
授乳の痛みがピークに達していた頃、「この痛みがなくなるのなら、夜泣きで眠れないことなど気にならない」とさえ思っていた。ところが甘かった。
生後しばらくは約3〜4時間毎に授乳する。これだけ聞くと、「なんだ、夜中に2、3回起きて授乳すればいいだけか」と思いがちだが、3〜4時間毎に授乳して、寝かせて、ということをスケジュール通りに繰り返すのは、赤ちゃんによっては非常に難しい。さらに、1回の授乳に1時間以上かかることもよくある。
娘の場合も、授乳後はなかなか思うように寝てくれず、ひたすら激しく泣き続けることもあれば、いくら飲んでも満足しないこともあった。赤ちゃんは、ある時期急激に成長するため、数日間大量におっぱいを飲みつづけることがある("Growth
spurts"という)。そんな時は私のおっぱいも涸れてしまうが、授乳を続けることが母乳製造につながるため、出ていなくてもひたすらおっぱいをやり続けることになる。
授乳 → おっぱいが出てこないから怒って泣く → 授乳 → 泣く
の繰り返しで夜中一睡もできないこともよくあり、そんな時は、「ねえ、どうして寝ないの?ねえ、どうして?どうして泣いてるの?ねえ、どうしてそんなに飲むるの?」と厳しい口調で娘を責めると、娘は一層激しく泣き出してしまい、自分も声を上げて2人でワンワン泣いた。そんな娘を見て無性にかわいそうになり、自分もまた泣く。時には「もう、知らないから」と、泣き叫ぶ娘をクリブに残して部屋のドアを閉め、別の部屋で気持ちを落ち着けようと試みもしたが、泣き方が激しくなるばかりで、その声を聞いていると気持ちが落ち着くどころか、またかわいそうでたまらなくなり、「私ってなんてひどいママなの?」と、まるで子どもを虐待しているような気分になってすぐに部屋に戻る。最初の2ヶ月半は、この状態がひどくなったりマシになったりの繰り返しで、私の人生の課題は「娘がどうしたら夜寝るか」という一点に絞られていた。
そんな折、18ヶ月の子どもを持ち、同じ経験をした知人から、子どもの睡眠に関する本を薦められた。この本に書いてあることを実行してから子どもがとてもよく寝るようになったとのこと。お世話になっている助産婦の先生もこの本は良いとおっしゃったので、藁にもすがる思いですぐにこの本『Healthy
Sleep Habits, Happy Child (Marc Weissbluth, M.D.著)』を購入。しかし、読み始めてすぐ、生後3〜4ヶ月頃までの赤ちゃんの睡眠は生理学的要因によってコントロールされていて、親が環境を変えてあげることによってコントロールすることはできないとはっきりと書かれている部分にぶち当たった。夜泣きに関しても、いろいろなテクニックはあるものの、根本的に解決する方法はなく、2〜3ヶ月頃を過ぎればたいていの赤ちゃんの夜泣きは治るので、それまで待つしかないという。
が〜ん。
この本には夜泣きをして寝てくれない赤ちゃん(Colicky babies)を寝かすための「マジックのような方法」が書かれているのじゃないかと、期待が膨らみすぎていたのだ。よく考えてみれば、そんな方法があったら世の中の親達がこんなに苦労するはずがない。しかし、気を取り直して読み進むと、生後3〜4ヶ月頃になると睡眠は生理学的要因よりもむしろ周りの環境(暗い部屋、静かな場所など)に影響されるようになり、それ以降は子どもに健康な睡眠の習慣をつけさせるのは親の責任であり、健康な睡眠は子どもの学びと成長に大きな役割を果たすことから、睡眠トレーニングが非常に重要になってくるとのこと。しかし、3〜4ヶ月頃までの間に良質の睡眠を十分に与えるため親ができることもいくつかあるという。以下にまとめてみた。
- 3〜4ヶ月までの赤ちゃんは2時間以上続けて起きていると疲れてくるので、できるだけ2時間以内に寝かせる。
- 泣いているのは空腹のためだけではない。長く起きていて疲れて泣いている場合もあるので、その違いを見極めそれに応じた対処をする。疲れている場合は寝かせるように努力する。
- 車の中で揺られたり、ベビースイングやロッキングチェアに揺られたりしての睡眠は質が悪いので、眠りに落ちるプロセスにのみ使用し、赤ちゃんが寝てしまった後は揺れのない場所で寝かせる。
- 子どもが完全に眠りに落ちてからベッドに置くか、子どもがまだ起きている間にベッドに置くかはどちらでもよいが、どちらか1つの方法に統一する。
とりあえず、3〜4ヶ月以降の睡眠について詳しく書かれているこの本はお薦めしておくことにする。
その他の本や、キング郡図書館で借りた赤ちゃんの睡眠に関するビデオ、インターネットなどで調べた限りでは、詳細の違いはあるものの、夜泣きの根本的治療法はなく、時期がくれば治ること、睡眠トレーニングは3〜4ヶ月以降に開始することなどは、だいたい共通した認識のようである。
さて、『マジック』はなかったが、この苦しみも期限付きだからもう少し頑張ろうと思っていると、生後2ヶ月頃から夜に6時間寝るということが時々起こるようになり、初めて8時間寝たときには本当にびっくりした。それからは、寝たり寝なかったりを繰り返しながら、2ヶ月半頃にはほぼ毎晩、7〜9時間ほど寝るようになった。3ヶ月の今でも夜寝かしつけるまでには何時間もかかるものの、一旦寝てからは朝まで起きることはほとんどない。自分の生活のコントロールが少しづつできるようになってきた。
睡眠が落ち着いてくると同時に、赤ちゃんは周りによく反応するようになり、起きていても泣かずにおもちゃを見たり触ったりする時間が急激に増える。娘も馬のぬいぐるみに一生懸命クークー話しかけたり(cooing)、鏡に写った自分の顔に満面の笑顔で反応したり、時には声をあげて笑うなど、私達夫婦を楽しませてくれるようになった。とりあえず2つ目の大きな山を越えたようだ。
|