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第45回:子供の味覚
子供の食べ物と栄養については多くのお母さん方が頭を悩ませていることでしょう。特に子供が幼いほど好き嫌いの激しい場合が多い上、歯が生え揃っていないと食べられないものもありますから、栄養面とあわせて考えても苦労するところですよね。ヘルシーなものを勝手に好んで食べれくれるようになれば万々歳なのですが、なかなかそうはいきません。だからこそ、なるべくヘルシーなものを好きだと感じる味覚を持つように育って欲しい、そう願います。
我が家の長女は何事に置いてもセンシティブですので、当然食べ物に関しても非常に好き嫌いがありましたし、新しいものには慎重でなかなか口をつけませんでした。次女は、長女ほどではありませんでしたが、好き嫌いがあり、せっかく作ってもほとんど無駄になるということもしばしばあります。それでも最近よく思うのは、娘達の舌がしっかり日本人になっているなあということです。
娘達は半分だけ日本人ですが、舌は90%日本人と言えると思います。2人とも納豆が大好きで、「マミーの作るごはんの中で一番好きなものは?」とたずねると、長女からは「納豆!」という答えが返ってきます(もちろん、お店で買っただけの納豆で、私が作るわけではありませんので、私としては複雑な心境ですが)。2人とも和風の煮物の甘辛い味や味噌汁、麺つゆなどの味が大好き。やはり、幼い時から、さらに遡ったところでは、生まれる前からの影響があるのではないかと思わざるを得ません。
いろいろ研究もされているようですが、よく言われることは、母親が妊娠中に食べたものの味が羊水を通じて胎児に伝わる、授乳期に母親が食べたものの味が母乳を通じて赤ちゃんに伝わるということです。そして、子供はその時期によくさらされていた味を、大きくなってからも好む傾向にあるというのです。そうであれば、我が家の娘達が納豆や和風の味付けのものを好むのも納得です。
また、私は酸っぱいものが苦手。トマトも大人になった今では食べますが、子供の頃は大の苦手で、今でも生のトマトを好んで食べるということはありません。そして我が家の長女がまさしくこれと同じ。酸っぱいものが大の苦手で、オレンジなどの甘酸っぱいものや、オレンジジュースでさえ嫌います。もちろんトマトも嫌い。これは私が妊娠中や授乳期に食べなかったからでしょうか。
一方、やはり私にはないアメリカ人の味覚も育っています。これは完全に夫が教えてしまったものですが、あの真っ赤で非常に甘いネジネジのゴムみたいなキャンディー、リコリーシュ。あんなもの、日本で育った人間で好きな人はまずいないでしょう。いたとしても、かなりの少数派ではないでしょうか。でも、娘達は好きになってしまったのです。私が絶対に教えたくなかった味覚です。夫が娘達に与えていると、私1人が鬼のように「だめだめ〜!」と止めますが、ここで家族間の摩擦も生じますし、いちいち止めるのには限界があります。
さてこの、幼い時に得た味覚がその後どう影響するのか―。以前どこかで聞いたことがあるのですが、日本人は若い頃は肉や脂っこい食べ物など欧米型の食事を好んでいても、年を重ねるとともに、子供の頃に食べていたあっさりとした日本食に回帰するが、アメリカ人にはそれがない、しかし、このあっさり食への回帰が成人病予防のキーとなっているというのです。私はまさしくこの道筋をたどり、ティーネージャーの頃、高校帰りにスクラッチ・カードが目当てで毎日のように通ったマクドナルドには、今では全く魅力を感じないようになっています。一方、アメリカで育った夫は今でもマクドナルド大好き。隙あらば、「今日はマクドナルドにしようか」と、誘ってきます。この違いなんですね。
マクドナルドを毎食1ヶ月間食べ続けると体にどのような影響があるかを身をもって体験するというドキュメンタリー映画では、「子供には、マクドナルド=楽しいという体験をさせず、マクドナルドを嫌な思い出にする(マクドナルドと言えば頭を小突くとか)」などという、半分冗談のような話がありましたが、今でもマクドナルドに行く度に(たまにしか行きませんが)、この話が頭をよぎります。母親1人ががんばっても、体に良くない食べ物の味覚を子供から完璧にシャットアウトすることは不可能ですが、それでもなんとかあっさり日本食の味覚を脳にすり込んで、のちのちその味に回帰してくれれば・・・と願う今日この頃です。
(2007年2月)
執筆者プロフィール: 日本での長い独身貴族生活の後、軽い息抜きのつもりでやってきたシアトルで思いもよらず今の夫と出会い結婚。2002年初夏に初めての妊娠が判明し、人生が180度転換してしまった。2003年に長女を出産し、2005年には次女を出産。子育ての毎日は初めてのことばかりで、心配したり悩んだり喜んだりと実に賑やかな(?)生活を送っている。
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