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第38回:子供の感受性(2)
「Highly Sensitive Child(以下、HSC)」 とは、あらゆる刺激に対してとてもセンシティブな子供のことで、生まれ持った性質であるため、大人になればなくなったり、変わったりするということはない。だいたい5人に1人程度がこのような性質を持っているということで、さして珍しいものでもないらしい(ちなみに、人間以外の動物でもこのタイプは人間と同じ割合で存在し、これは種の存続などに関係があるのではないかとされる報告もあるということだ)。しかし、これが少し引っかかった。長女のケースはどうみても5人に1人程度の 「ちょっとシャイなタイプ」 ではない。友人・知人の子供たちの中でもこれほど極端な子供はほとんど見たことがなく、少し近いかなと思う子供を1人知っている程度である。しかし、調べてみると、HSC でも石橋をたたく注意深いタイプとたたかないタイプがあり、また、その他の性格の要因などが複雑に絡みあっているので、皆が同じではないとのこと。ということは、5人に1人が皆、我が家の長女と同じ性格ではないのもうなずける。それに、HSC の特徴としてあげられているものには、「そのとおり!」と思わず手をたたきたくなるほど長女に当てはまるものが多いので、長女が HSC であろうことはほぼ間違いないと仮定して、この線で改善策を探ってみることにした。
HSC はいろいろな刺激を他の人に比べて感じすぎ、そのために疲れやすく、疲れると機嫌が悪くなる度合いも高い。ちょっとした刺激ですぐに疲れたりするので、当然、機嫌が悪くなる回数も多くなる。人ごみや状況・環境の変化、初めてのことが苦手なのもその特徴だ。恐怖を感じることも他の人に比べて多く、痛みや不快感にも弱い。例えば、洋服のタグが人一倍気になるといった具合である。長女はお風呂の水を怖がって長い間苦労したし、今でも頭を洗うのはとても注意深くやらないといけない。少しでも水が目の近くをかすめると、 「痛い〜!」 と大騒ぎになる。その他、数え上げればきりが無いが、友達やいろいろな物や小さな虫を怖がるのも、人が大勢いるところには絶対に行きたがらないことも、下に着ている洋服の袖口が上に着ている服の下でからまると泣くのも、滑り台の上にごみがあると滑りたがらないのも、赤ちゃんの時から不機嫌になることが多いのも、全て説明がつく。
親も同じタイプなら気持ちが理解できるので良いのだが、私には分からないことだらけだ。旗や風船が怖いのも、自分より体が小さく全く乱暴でない女の子が怖いのも、毎週会う友達のことが怖いのも全く理解できず、イライラすることが多い。ちなみに、滑り台にごみがあると滑りたくないのと、小さな虫が怖いのは理解できるが、子供の前では決してそれを悟られないように振舞っているつもりだ。ここで大切なのが、子供が痛いとか怖いとか言っている時には、それを信じ、理解を示すことだという。これは分かっていても、実行が難しい。
「あの旗が怖いから抱っこして」 と言われても、 つい、「あの旗は遠くにあるし、棒にくっついて揺れているだけだから危なくないのよ。だから、怖がらなくてもいいのよ」 と、理屈で説明しようとしてしまう。そして、今までそのようにして全く効果がなかったのも事実。イライラが募ると 「だからもう、大丈夫って何度も言ってるでしょ?」 という最も良くない言い方をしてしまい、その後で自己嫌悪に陥る。 「そうだね、あなたが怖いのは分かるわよ。マミーも小さいとき怖いって思ったよ」 なんて理想的な言い方を毎回できる心優しい母親にはなれそうもないが、今はできる範囲でやるしかない。ちなみにこの、 「マミーも小さいとき怖いって思ったよ」 のフレーズを言うと、長女の目の色が変わり、 「え?マミーも?マミーもそうだったの?」と、必ず聞き返し、後日になっても何度も 「マミーもそうだったんだね」 と言ってくる。 自分だけでなく、最も身近な存在である母親もそうだったんだと知ることは安心につながるようだ。
HSC が将来成功していくためには、やはり親の理解が一番。そして、次に忍耐。ある環境や人に慣れさせていくには、小さな小さなベビー・ステップを踏んでいくやり方しかないようだ。例えば、友達と遊べるようにするには、まず1対1のプレイデートを自宅で初め、慣れた頃に同じ友達と1対1のままで今度は友達の家で、それに慣れたら自宅で1人づつ増やしていく、など。また、機嫌の良い時間帯を考慮したり、空腹時を避けるなど他の面でも気を使う。
大変なことも多い HSC だが、悪い点ばかりでもない。HSC であることが特別な才能にもなりえるのだ。例えば、HSC は他人や動物などの気持ちをよく感じ取るという。我が家の長女は、私がテレビを見て微妙に泣きそうな表情になると、実際に泣くに至っていなくても、すぐに気付いて 「マミー、泣いてるの?」 と尋ねてくる。実際に泣いてしまった時、 「マミー、はいどうぞ」と、いつも自分が涙を拭く白いタオルを持ってきてくれた時にはあまりにも嬉しくてたっぷりと褒めてあげた。こういう時に、しっかり褒めてあげるのも大切なことだ。HSC であることの肯定的な部分を示し、結果的にはそれが自信になるように導いてあげなければならない。
長女はまた、私が、例えば机の角に膝をぶつけて真剣に痛がっている時などに、これはかなり痛いというのが分かるようで、火がついたように泣きだす時がある。ところが、私が 「痛い!」 と言っても、それが大したことのない場合には分かるようで、そんなときは笑っている時もある。他人の痛みが分かり過ぎると辛いこともあるとは思うが、思いやりがあり、良心があるというのは長所である。親ばかと言われればそれまでだが、長女は妹にもこの年齢にしては優しい方だし、乱暴もほとんどせず、「階段落ちちゃうよ〜」とか「お口に入れちゃうよ〜」など心配もしてくれる。ただ、人の気持ちが分かりすぎて、自分の気持ちや主張ができないのも困るので、どうしたら自分の思いをきちんと伝えられるように育てられるかもこれからの課題の1つだ。
最後に、参考にしたウェブサイトと本を紹介しておく。BabyCenter(
www.babycenter.com
)の掲示板には子育てに関するさまざまな悩みを持った人が集まっている。年齢別、悩みの種類別にカテゴライズされ、アレルギー、シングル・ペアレント、養子縁組、高齢の親、再婚家庭、トイレ・トレーニング、言葉の発達などありとあらゆるテーマが網羅されている。私がよくお世話になったのは "Shyness and Anxieties" のカテゴリで、ここには、自分の周囲では見たことがないような、長女と同じぐらい極端なケースの子供を持つ親の投稿も多く、広いアメリカには私のような悩みを持つ人もたくさんいるのだということが分かり、少し気持ちが楽になった。また、 『
The Highly Sensitive Child
』(Elaine Aron著)という本には、HSC の特徴と、親のタイプ別、子供の年齢別の育て方が細かいテクニックまで説明されている。これをバイブルにして、何度も読み返していくつもりだ。
(2006年4月)
執筆者プロフィール: 日本での長い独身貴族生活の後、軽い息抜きのつもりでやってきたシアトルで思いもよらず今の夫と出会い結婚。2002年初夏に初めての妊娠が判明し、人生が180度転換してしまった。2003年に長女を出産し、2005年には次女を出産。子育ての毎日は初めてのことばかりで、心配したり悩んだり喜んだりと実に賑やかな(?)生活を送っている。
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注)当ページに記載されている内容は個人の一意見です。この情報に基づいて行動した結果なんらかの損害が発生した場合においても、執筆者およびジャングルシティは一切責任を負いません。記載された情報を活用される場合は、あらかじめ専門家に照会するなど必要な確認を行った上、ご自分の責任で判断していただきますようお願い申し上げます。
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