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第36回:自分でさせる教育
2歳から3歳ごろというと、何でも自分でやってみたいと訴える年頃だ。次女がおなかをすかせてぐずっている時に、急いで夕食の準備をしようとして野菜を切ろうと包丁とまな板を用意すると、まな板のまん前に踏み台を持ってきて陣取る長女。「自分が切りたい」と言う。ついつい、「危ないからできるわけないでしょ!」と言い捨ててしまう私。何事においてもこんな感じだ。野菜を洗いたい、食器を戸棚に片付けたい、妹にご飯を食べさせたい、などなど、危険なことや、めちゃくちゃにされるのでできればやってほしくないこと、まだまだできないようなことばかりやりたがる。幼児のいる家庭ではきっと心当たりのあることだろう。
ちらっと読んだモンテッソーリ教育についての本には、幼児がやりたがることには意味があり、成長のために必要なことをやりたがっていると書いてあったが、うちの娘を見ていると、まさにその通りだ。「危ないからだめだめ」「急いでいるからだめだめ」と、何でもやらせずにいると、本人のやる気をそぐ結果になり、やる気のない子、独立心の無い子になってしまう。今までのことを反省し、余裕のある時はできるだけイライラする気持ちを抑えながら、自分でやりたいということをやらせるようにしているが、やはり、いつも余裕のある対応をするのは不可能だ。例えば、約束の時間に遅れそうな時、カーシートに座らせると、「自分で(ストラップを)するから、マミーはやらないでね」と言われると、とても困る。トイレでズボンとパンツを脱ぐときに長女がのろのろしているのを見るとつい手を出したくなるのをぐっとこらえなければならないが、出かける前で急いでいる時はつい手伝ってしまう。
そういうわけで、100%は無理にしても、本人が自分でやりたいということを可能な範囲でやらせるようにしていると、子供はだんだんと上達していき、何度も何度もやっているうちに、ついにできるようになるものだ。例えば、服の着脱からボタンかけ、はさみで紙を切る、ビーズにひもを通す、など。はさみは、最初は動かすのもぎこちなく、紙の端から端まで私の助けなしに切ることもできなかったのに、ある日、1人で無心に紙をチョキチョキとやっていると、数日後にふと私が目をやった時、手の動きが随分とスムーズになっていて、紙の端から端まで1人で切ることができるようになっていた。ボタンかけは、教えるでもないのに、妹の洋服をぬいぐるみに着せてはせっせと練習している。最初は全然できなかったのに、いつの間にかできるようになり、「見て〜、できたよ」と私に持ってくる。達成感とともに、親からも「よくできた」と認めてほしいのだ。この達成感が自尊心を育てると言われ、「自尊心」や「独立心」教育に重点を置くここアメリカでは(私が個人的にそう感じているだけかもしれないが)、この「自分でやらせる」ことと、できたら「思いっきり褒める(褒めちぎる)」ことが重視されているように思う。日本は「謙遜」の文化だから、家庭にもよるが、子供がうぬぼれないよう、自分の子供を褒めちぎることは少ないように思うが、ここアメリカでは、アメリカ人のお母さんたちが、いかにも大げさに、自分の子供を褒めちぎっている光景をよく目にする。
可能な範囲でいろいろなことを子供自身にやらせるためには、子供が大人の生活をめちゃくちゃにしないような形で、やりたがることをやらせてあげられる環境を作る必要がある。例えば、まだ背の低い子供がいろいろなことを自分でできるようにするための必需品として、幼児のいる家庭にたいてい置いてある踏み台(Step stool)もその1つだ。我が家では、各バスルーム・キッチンに用意し、手洗いは、水道をひねって水を出す、液体石鹸のポンプを押して手につける、洗う、水を止める、タオルで手を拭くという一連の作業を私の助けなしでできるようにした。そして、本やおもちゃは、子供が手の届く低めの戸棚や本棚などにしまい、自分で遊びたいものを取ったり片付けたりできるようにしている。我が家は現在、次女がはいはいで動き回り、キャビネットの扉や引き出しを片っ端から開けて中の物を取り出し、まだまだ何が危ないかということも分かっていないため、安全面との兼ね合いが難しいが、できるだけ自由にいろいろなところを開けて中の物を出して遊べるよう、手の届くところには危なくないものを入れている。おかげで、来る日も来る日も「引き出しの中身を全部ひっぱり出される→元に戻す→またひっぱり出される→元に戻す」の繰り返しだが、これも教育の一環と割り切って、あまり片付け魔と化さないようにしている。
(2006年2月)
執筆者プロフィール: 日本での長い独身貴族生活の後、軽い息抜きのつもりでやってきたシアトルで思いもよらず今の夫と出会い結婚。2002年初夏に初めての妊娠が判明し、人生が180度転換してしまった。2003年に長女を出産し、2005年には次女を出産。子育ての毎日は初めてのことばかりで、心配したり悩んだり喜んだりと実に賑やかな(?)生活を送っている。
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