第1回
: 妊娠の日米比較
このエッセイを書いている時点で妊娠35週、今まで約8ヶ月の間、アメリカと日本の違いをたくさん発見してきた。その一部を紹介すると…
(日本で妊娠をしたことがないので人伝てに聞いただけの比較になるため、実際と違う点にお気づきになった方はぜひお知らせください)
■つわり
日本では「食べづわり」という"特別な"つわりが存在する。普通のつわりは気分が悪くて食べられなくなるが、「食べづわり」は食べないと気分が悪いので食べなければならない、というもの。一方アメリカでは、"一般的な"つわりが「食べづわり」なのではないか?と密かに思っている。こちらの妊娠関連本を見ると、たいてい「空腹になると気持ちが悪くなるので、常にクラッカーなどを用意して口に入れるようにしましょう」と書いてある。つまり、「食べづわり」を前提として書かれているのだ。でも、日本の妹や友人に、「お腹がすくと気持ち悪いんだよね」と言うと、間違いなく「それは食べづわりだね」と言われる。日本人が体質的に食べられなくなってしまう人の割合が多いから、一般的なつわりと珍しい「食べづわり」を区別するのか、別の理由があるのか、統計をとったりリサーチしたわけではないので分からない。私の場合はいわゆる「食べづわり」で、しょっちゅう何かを口に入れていなければならなかったので、この時期(妊娠12週ぐらい)すでに2kg程度体重増加してしまっていた。
■妊婦検査
日本ではたいていの場合検診のたびに超音波検査を行うときいているが、アメリカでは問題がない限り20週前後に1度行うのみ。たいていこの時に性別がわかる。頭の直径を測ったり、背骨や心臓に異常がないかなど細かく調べる。超音波検査は実際、順調な妊娠の場合何度も行う必要はなく、医療費の高いアメリカではこのようなシステムになっているようだ。私の場合最終生理日をはっきりと覚えていなかったため、正確な予定日を割り出すため妊娠初期に1度と20週に1度行った。妊娠初期に行った時は、まだ生き物が私の中にいるという実感がなかったので、初めて胎児の心臓の動きや背骨を見せてもらって涙が出そうになった(しかし、検査技師は実習生への詳細説明に忙しく、私に向けての説明は非常にあっさりとしたものだったので、ちょっと腹が立った。技師にとっては教える方が大切かもしれないけど、私たち夫婦にとっては人生の一大イベントなんだから、私たち説明してよ、と心の中では涙を流していた)。2度目の超音波検査はお世話になっている助産婦の先生も同席して、1度目の時と違う技師が、胎児のさまざまな箇所を測定したりチェックしたりして、詳しく説明してくれた。その結果女の子であることもわかった。1度目のときに比べると正直感動が少しだけ少なかったが、それでも胎児がたった5ヶ月の間に私の中で人間らしい身体に成長していることに身震いした。
■注意すること
寿司・刺身
アメリカでは、妊婦は刺身・寿司など生魚を食べない方がよいというのは一般的に良く知られている。その理由は、健康な人にはほとんど害を及ぼすことのないリステリアというバクテリアが妊婦や胎児に影響する可能性があるからで、このバクテリアはその他柔らかいチーズ類(ブリー・カマンベール・ブルーチーズなど)やハムなどの加工された肉類にも見られる。一方、日本ではこのリステリアがほとんど見られないということで、妊婦でも刺身・寿司をそれほど気にせず食べられる(私の場合、刺身を食べられないのは、時々辛い。和食レストランに行った時、私がきつねうどんを注文したのに、夫が刺身定食を注文した時にはさすがに切れた)。この他、魚によっては生魚でなくても水銀汚染のため食べない方がよいものもある。詳しくはここに載っているので、妊婦の方、および近い将来妊娠を計画している方はぜひご覧いただきたい。ところで、日本にいる妹は、
妊娠中に刺身を食べてあたり、ひどい熱が出た。大事には至らなかったが、日本にいても妊娠中はできるだけ生ものを避けた方がいいかもしれない。
お腹を冷やすとだめ
「お腹を冷やすとだめ」と、日本の親や知人からよく注意を受けるが、アメリカではあまりそういうことを聞かない。腰痛のための妊婦用コルセットのようなものはあるようだが、腹帯とか腹帯コルセットのようなものは基本的にしないのが普通のようだ。夏場にお腹をぽよよ〜ん、とTシャツの下から出して、短パンをはいた妊婦を見かけたことがある。うちの母親が見たらおそらく卒倒するような格好だ。体を冷やすと血行が悪くなるので、冷やさないに越したことはないが、特にお腹を冷やすとどうにかなるというのは医学的に根拠がないと、私のお世話になっている助産婦さんはおっしゃっていた。
体重制限
体重制限は特に日本で厳しいようだ。もともとの体重にもよるが、理想的には出産直前時点で7〜9kg程度の増加が望ましいとされているらしい。アメリカではだいたい12〜19kg程度はOKゾーンと言われる。アメリカでも以前は体重増加を8kg程度に制限するよう奨励されていたらしいが、その後の研究で、もう少し体重を増やした方が母子どちらにとっても好ましいということになったそうだ。現在私は35週で、すでに日本にいたら先生にお目玉をくらっているような体重増加を達成している。まだあと出産までに1ヶ月近くあるわけで、この先順調に体重増加すると思うとおそろしい。赤ちゃんがお腹の中にいるとはいえ、今まで自分が体験したことのない体重ゾーンに入ることはかなりショックである。
■保険
日本では妊娠は病気ではないので健康保険は効かない。そのかわり、地方自治体がお祝い金(私の知る限りでは20万円程度)をくれる。アメリカでは様々な種類の保険があり、たいていの健康保険で妊娠・出産がカバーされるが、カバーされる割合には幅がある。アメリカは医療費が日本に比べて高額なため、カバーされる割合が少ない保険の場合は、結局結構な額を自分で支払うことになる。日本では1回の検診でだいたい4〜5,000円程度、妊娠中に12回検診に行くとして5〜6万円程度になるが、アメリカでは順調な場合でも妊娠中・産後の検診および出産費用のトータルで合計2,500〜3,500ドル程度と5倍以上。入院費用は、日本は1週間で20〜25万円程度のようだが、アメリカでは通常、1日の入院でほぼ同額の2,500〜3,000ドル程度かかってしまう。また、この他に超音波など各種検査費用が別途かかる。妊娠を予定している場合は、自分の保険の補償内容(妊娠・出産がカバーされるのか、どういった検査がカバーされるのか、免責金額、カバーのパーセンテージなど)についてしっかり調べておくことをおすすめする。
日本で産むこと、アメリカで産むこと、それぞれのメリット・デメリットがあると思う。もし日本にいたら日本で得られる情報だけで満足していただろうけれど、私はアメリカで、より自然な分娩の手伝いをしてくれる助産婦の先生と出会い、様々な情報源に触れることもできたので、ここで産むことを決心してよかったと思っている。
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