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『From シアトル − アスリート新化論』 の著者、山本邦子さんインタビュー

From シアトル − アスリート新化論幼い頃から水泳や新体操を習い、スポーツ・ジャーナリストになるべく留学したカンザス大学で出会った運動科学科でアスレチック・トレーニング学、経営管理学、運動力学の学位を取得、全米アスレチック・トレーナー協会公認のアスレチック・トレーナーとなった山本邦子さん。さまざまなアスリートたちと触れ合う機会を通して、心身の健康とパフォーマンス向上のために 『A ヨガ』 を開発し、そのエッセンスを著書 『From シアトル − アスリート新化論』 として出版しました。「ただ進むだけではなく、ある物から新しい物に向かっていくというイメージ」を加えたという "新化論" という言葉から、山本さんのビジョンが伝わってきます。


- アスレチック・トレーニングとの出会いを教えてください。
当初はジャーナリズム学部で一般教養を履修していたのですが、日本でも専門分野を持ったジャーナリストが出てきていたので、ジャーナリストとして活動していくには自分の専門分野があったほうが良いだろうと覗いてみた運動学部の授業で、アスレチック・トレーニング学に出会いました。私もずっと運動をやっていたことから体を痛めて針やマッサージなどの治療を受けたことがあり、当時の日本ではマッサージ師がトレーナーと呼ばれていましたが、アメリカではそれとは違って体系的なシステムとして成り立っています。アスレチック・トレーナーとは栄養・コンディショニング・リハビリなどスポーツ選手の健康を総合的に管理する職務だと知って、俄然興味がわきました。大学卒業後は日本に戻るつもりでしたので、J リーグとプロ野球のチームにアメリカで取得した資格が使えるのか問い合わせる手紙を出したこともあります。結局、日本では厳しいと言われたのですが、やはり「やってみよう」という決意が固まりました。

- 大学ではどのような勉強をされましたか。
山本邦子さん最初は解剖学・人体生理学・運動力学などから始め、もちろん人体の解剖もしました。そして、例えば靭帯を切った人の治療やリハビリ、心理面のケアなどといった、スポーツに特化したケースへの専門的な対応の仕方、トレーニング・ルームの管理や備品の購入・管理などといった、総合的な勉強をしていきました。アスレチック・トレーナーは、いわゆる交通整理の役。コーチ、マネジャー、体を強化するストレングス・コーチ、選手といった人たちの間に立って、「今この選手はこういう状況だから、こういうことはやってはいけない、こういうことはやるべき」と整理するんですね。選手を最短期間で安定した状態に戻すのが目的ですから、その道を企画実行するために人と時間を管理する勉強がとても大事です。そのようにして学んだことを実践を通して身につけるために最低1,500時間の実務も必修とされていましたから、スポーツが盛んだったカンザス大学のスポーツチームと通常でも1日6〜7時間、フットボール・チームを担当した時は1日12時間ぐらい働いていました。こういう仕事は技術だけでなくコミュニケーション力が必要ですから、最初はそれが難しくて泣いたこともあります。でも、無事に卒業し、資格試験にも合格。そして大学院に入学して卒業するまでの3年間は資格保持者として大学のチームを担当して管理し、学生トレーナーの指導も行いました。卒業前になった大学側がちょうど人員を増やすことになり、フルタイムのアスレチック・トレーナーとして就職。学生時代とあわせると、カンザス大学では通算9年働いたことになります。

- 『A ヨガ』 の開発のきっかけを教えてください。
西洋医学は数値にすごく重点を置き、1つのポイントに焦点をあて、「そこで何か起こっているのか、そのポイントをどうしたらいいのか」といった局所的な対応をするという特徴があります。でも、選手を見ているうちに、「西洋医学だけにこだわっていると、全体が見えなくなるのではないか」と感じ始め、自分の中に東洋的な感覚があるという強みを生かしていきたいと考えるようになりました。そんな頃、おそらく1996年頃だったと思いますが、カンザス大学から NBA に入団した卒業生たちに、「NBA でヨガがはやっている」と聞いたのです。当時の私にとってヨガはあまりいいイメージがなかったのですが、近所にオープンしたヨガ・スタジオでルームメートのサッカーコーチと一緒にビクラム・ヨガをやってみたのです。肉体的・精神的にとてもきつくて、驚きました。でも、終わった後も気持ちが良くて。そして、「もう一歩ここで踏ん張れば勝てた試合に勝てなかったという選手に、"そこでもっとふんばるんだ" と言っても、そう簡単にできるものじゃない。でもこのヨガだったら、やりながら自分の弱さや、自分がどこで諦めてしまっているのか、どこでがんばりすぎているのかなど、自分のいい面と悪い面を見つけることができる。そしたら、どう対応していけば変化を加えられるかというのを、体を通して教えてあげられるのかもしれない」と思いつきました。私の相手はアスリートで、最終的にはアスリートのパフォーマンス向上が目的です。それからヨガの文献などを読んで勉強し、自分で試したものを選手やコーチにも試してもらいました。そして、「アスリートの体で最も動きが悪くなりやすいところや動かなくてはならないところには、どういう動きや流れがいいのか」というのを考えているうちにまとまっていたのが、この 『A ヨガ』 なのです。

- 『A ヨガ』 の "A" とは何ですか。
山本邦子さん『A ヨガ』 の "A" というのは、"Awareness"(自分自身の今の体の状態を理解すること:気づき)、"Awakening"(自分の体が持つ潜在能力を引き出すこと:覚醒)、"Anti-Aging"(生き生きと前向きになり、細胞が活性化し、若さが保てる:アンチエイジング)、"Athletic"(ケガや病気になりにくい健康な体に鍛える:運動)の "A" です。見た目はビクラム・ヨガなどに形が似ているポーズもありますが、体のポイントや動かし方が違いますし、決まりきった形があるのではなく、常に変化をしています。著書 『アスリート新化論』 にそのエッセンスは入っていますが、これがすべてではありません。実際にこれを使う人の年齢や状態によっても変化させる必要があると思います。

- 「さらにトップを目指す人への20のヒント」について
第3章の「さらにトップを目指す人への20のヒント」は、私がいつも考えたり話したりしていることをまとめたものです。私は基本的に人生そのものがスポーツだと思っています。つまり、生きている人みんながアスリート。いろいろなことに準備をして、パフォーマンスをして、反省して、次に向かって行くというスポーツというのは人生そのものが凝縮されているものなので、アスリートがやっていることと、一般の人がやっていることはまったく切り離せないのではないかと思います。私の原点はアスレチック・トレーニングですから、自分の心と体を見つめ、パフォーマンスを向上させる方法を見つけようと模索する中で派生した1つの方法が 『A ヨガ』 なのです。一流が一流である理由の1つは、物事に対して貪欲というのもありますが、自分の心身をもっと理解していること。二流の人は、言われてみて「ああそうかも」という不確かな状態だったり、言われてもわからなかったり、理解しようとしたりしません。このように、自分をどれだけ知ってるかというのが、一流になれるか、二流のままかの差だと思います。さらに、「ああ、わかったわかった」と言っているうちはわかっていない。本当にわかった時は、「わかった」という言葉はすぐに出てきません。ある瞬間に体が「あ!」となる時まで突き詰めるのが大事だと思います。でもその「あ!」が感じられない鈍感な体になってきている人が多いですね。体が硬直して、心もかたまってしまって、大事な「あ!」が入る隙間がないんです。

- これからの抱負を教えてください。
大学時代からいろいろな人と出会い、いろいろな人の体のケアと向き合って来ましたが、「あなたにはこういういいところがある、それに気づいて大事にすればもっといいプレーができる」ということを、スポーツ選手だけでなく、一般の人にも伝えていきたい。「体を動かすことで、自分の心に刺激を与えようよ、触れるところからやってみようよ、動けるところから動かしてみようよ、そしたらきっとあなたの気持ちも変わるよ」というのを、運動を通して何か表現したい。アスレチック・トレーナーとしては、アスリートのパフォーマンス向上が目的です。ですから、アスリートに携わる人たちが 『A ヨガ』 をうまく使えるよう、講習などをもっとやっていきたいですね。また、子供たちが幼いうちに、心と体がつながっていることを伝えていきたいですね。人間はすごく可能性のある生き物だと思います。『A ヨガ』 が「私はこんなにすばらしい」と思えるきっかけを作っていく存在になればうれしいですね。

- ありがとうございました。


山本邦子さん略歴:
有限会社トータルらいふけあ代表。全米アスレチック・トレーナー協会公認アスレチック・トレーナー。カンザス大学教育学部運動科学科アスレチック・トレーニング学で学士号、スポーツ経営管理学・運動力学で修士号を取得。1999年から2003年まで同大学専属アスレチック・トレーナーとしての勤務を経て、日本でトータルらいふけあを経営し、「A ヨガ」を創設。2003年から2年間にわたり劇団四季の常勤アスレチック・トレーナーを務めた他、日本プロ野球ソフトバンク・ホークスの選手にヨガを指導。2006年に 『From シアトル - アスリート新化論』 を扶桑社から出版。夫の森本貴義氏はシアトル・マリナーズの専属アシスタント・トレーナーを務めている。

トータルらいふけあ
www.totallifecare4u.com


(掲載: 2008年9月24日)



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