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■ コンポーザー・ピアニスト、中村天平さんインタビュー
今年6月18日に日本で
EMI からアルバム 『Tempeizm』 でデビューしたコンポーザー・ピアニストの中村天平さん。「ピアニスト」と聞くと、燕尾服を着て演奏をする姿を思い浮かべるかもしれないが、先月17日にシアトルの総領事公邸で招待客約100人が出席したを前にミニ演奏会を行った天平さんは、筋肉質の腕を出し、体にぴったりフィットした黒い
T シャツにジーンズといういでたちで現れた。いかにもパワフルでワイルドな印象を受けるが、話し方は穏やかで、物腰は柔らかい。しかし、ピアノの前に座った時、雰囲気がガラリと変わった。時にはささやきかけるように、そして時には荒々しく吹き荒れるように、中村さんの両手が鍵盤の上を走る。『幻想曲』『一期一会』『エリア51』『夏の記憶』(プロローグ、空を駆ける、神社)、『フレイム』
の7曲はすべて自身の作曲によるもの。ジャンルにとらわれない、独自のスタイル 『テンペイズム』 が一気に駆け抜けたような気がした。
−どのようなきっかけで音楽の道に進むことになったのでしょうか。
自分の中で取り柄はそんなになかったんですよ。人よりちょっと体力があったとか、子供の時にちょっとだけ音楽を習っていたので素人の方よりはちょっと音楽の知識があったとかその程度でした。でもずっと肉体労働をしていて、それ以外の何かをやりたいと思って考えてみたところ、僕には音楽しかなかったのです。何かを変えてみたいと思い、キーボードを習い始めましたが、最初はピアノは考えていませんでした。そして音楽を始めた時は「これで成功してやる」とかそういう感じではなく、「ここから何か新しいものが生まれればいいな」と思っていたぐらい。バンド系の音楽専門学校に入学して1年ぐらいしてから真剣にやろうと思い始めて、そこから音楽一筋です。その専門学校卒業後に大学でクラシックを勉強することに決めたのは、専門学校で勉強してきたこととはまったく違う分野ですから、逆にのりしろが増えるかなと。そして大阪芸術大学に入学し、クラシックを勉強しながらバンド系の音楽を作ったものの、うまいドラマーとベーシストが見つからず、曲は書いても発表する機会がないという状態が続いていました。そんな時、いろいろなピアニストの音楽に出会って、ピアノだけでいろいろな表現方法があるんだということに気づいたのです。その中に、ハンガリー人ピアニスト故ジョルジュ・シフラさんがいました。それが、大学3回生の時にすっぱりとバンドをやめて、ピアニストになろうと決めるきっかけとなりました。
−大学卒業後からニューヨークに行くまではどのような活動をされていましたか。
2004年に卒業してから2006年半ばにニューヨークに行くまでは、小さいコンサートなどで弾いたりして音楽活動をしていました。左手の指を骨折したのもこの時期で、ものすごく落ち込んだんですが、その時に何がしたいかというとピアノを弾くことだったのです。それで右手だけでもとピアノを弾いている間に、右手だけで弾ける曲
『ディスペア』 を作り、デビューアルバムに収録しました。
−なぜニューヨークに?
大学にいる時期からニューヨークに行きたいと思ってました。音楽を勉強できるところは世界中にいろいろあると思うのですが、いろんな音楽においてトップ・ミュージシャンが集まるのはやはりニューヨークです。自分の音楽にはボーダーラインもないし、ニューヨークで勉強するのが自分にはあってるんじゃないかと思ったんですね。日本でできることというのがちょっと見つからなくなって、壁にぶち当たった時でもあったので。ニューヨークにいるイスラエル人の作曲家でピアニストのロン・イェディディアにも習いたかったというのもあります。ニューヨークではピアノと英語学校に通う毎日です。
−シアトルに来られたきっかけは。
知人の知人である佐野領事からご連絡をいただいて、シアトルでのミニ演奏会につながりました。シアトルは以前からぜひ来たいと思ってましたので、これも縁かと思って。イチローさんへの曲も既に書いていましたし、とても嬉しかったです。実際の演奏会はとても気持ちよかったですよ。公邸もとてもきれいなところでしたし、少しオープンな場所で弾かせていただいて、みなさんの反応もとても丁寧で親切。とても楽しかったです。鳥が鳴いていた時に弾いていたのが
『神社』 だったのですが、神社は自然の中にあるものですから、鳥の声や川の音とか、今弾いている曲とあってるなと思ってました。
−『エリア51』 はどういうお気持ちで作曲されたのでしょうか。
この曲は物語なんです。僕にとってイチローさんはカリスマであったりとか、伝説的なところもあって、例えば昔の神話に出てくるようなヒーローや英雄のような、物語の中で生きている・・・僕にとってイチローさんはそういう存在に近いもので、この曲はそのイチローさんの物語なんです。『エリア51』
は最初は華やかでメジャーな感じで始まりますが、真ん中のところはゆっくりした調子です。最初が陽としたら、真ん中は陰。そしてまた陽になって終わるという感じです。イチローさんは2001年にメジャーに来て華やかにデビューしました。デーゲームの時のセーフコ・フィールドは青や緑がとてもきれいです。そのきれいな緑の上を華やかに走っているイチローさんの姿が出だしのところです。でもそんな天才でもスランプや苦労は絶対にあります。そういったものは彼にしかわからないもの。彼がホテルで1人で悩んでたり辛い時などあると思うのですが、陰の部分がそういうことを表しています。それでもそういうものを乗り越えてまた華やかに活躍してメジャーの歴史を作っていく、記録や伝説を作っていくという感じで、『エリア51』
は終わるのです。イチローさんの言葉も好きなんですが、最近彼が言っていたことは、「プレッシャーから逃げようと思っても逃げられない、それならプレッシャーを全部受けて立ってやろう、プレッシャーに立ち向かっても成功する」。僕も演奏会では緊張やプレッシャーがすごくあるのですが、「そういうものも全部受け入れて成功すると、もっと自分が強くなれる」というふうに思っていたんですね。ですからイチローさんが言われていたことにはとても共感し、嬉しかったです。
−これからの抱負を教えてください。
言葉では伝えられないものを、ピアノや音楽で伝えられることってあるんですよ。例えば、僕が持っているイメージを言葉でいろいろ説明することはできると思うのですが、今回のミニ演奏会で演奏させていただいた
『神社』 『夏の記憶』 を弾いた方がはるかに伝わると思います。楽器は歌詞がないのでどこに行っても平等に伝わる。これからいろいろな国で活動できるようになれれば嬉しいです。
中村天平さん 略歴:
1980年神戸生まれ。大阪芸術大学芸術学部演奏学科ピアノ専攻首席卒業。5歳の時に音楽教育を受け始めるが、高校を半年で中退した後に大阪に移り、解体屋の仕事に従事する。その後、音楽を再発見し、音楽専門学校から大阪芸術大学へと進み本格的にクラッシクやジャズを学ぶ。卒業後は「コンポーザー・ピアニスト
中村天平」として本格的に活動を開始。ソフトなバラードから荒々しい楽曲など幅の広さを持ち、従来のピアノ楽曲の枠に収まらない独自の音楽を生み出している。現在はニューヨークと東京の二大都市を拠点に活動中。また、音楽による教育支援活動の一環として小学校での演奏会といったボランティア活動も行っている。
天平オフィシャルサイト
www.tempei.com
(掲載: 2008年8月1日)
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