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■ 人形劇俳優 平常(たいら・じょう)米国デビュー公演
世界各地の優れたパフォーマーたちが参加するシアトル・インターナショナル・チルドレンズ・フェスティバル。子供だけでなく、大人も十分に楽しめる公演が揃っていることで定評があり、今年で21周年を迎えます。今年は日本人形劇大賞の銀賞を最年少で受賞し、日本で大旋風を巻き起こしている人形劇俳優の平常(たいら・じょう)さん(26)も出演しています。
幼いころから両親が廃材で作った人形劇セットを遊び道具にしていたという平さんは、小学校の頃から友人たちに作品を発表し、12歳の時に1人人形劇
『どんぐりと山ネコ』 で札幌の人形劇界にデビュー。以来、演出・美術・人形操演もすべて手がけて数々の賞を受賞し、2005年には寺山修司原作の
『毛皮のマリー』 の人形劇版で、日本人形劇大賞の銀賞を最年少で受賞するという快挙を成し遂げました。テレビや新聞などでも紹介され、公演のスケジュールは2010年半ばまでびっしり詰まっているそうです。
シアトルは今回が初めてという平さんがこのフェスティバルに参加することになったのは、常にアジアから1組を招待しているというフェスティバル側から日本の1人芝居をという依頼があったのがきっかけ。これまでドイツ・フランクフルトでの日本映画祭へのゲスト出演や他のアーティストとのジョイント公演、またアメリカの
『PofA(Puppeteers of America)フェスティバル』 に飛び入りで演じたことはあるそうですが、海外で単独にプログラムが組まれて連日で公演するのは今回が初めてだそう。人形劇というと舞台に背景がセットしてあり、たくさんの操り人形を動かすという舞台を想像しがちですが、平さんの舞台は「無駄なものをすべて削ぐことによって、人間の想像力を喚起する」というもの。
今回の演目の1つ
『シンデレラ』(写真上)は、豪華な衣装をつけた人形が登場するのかと思いきや、登場人物はすべてマッチ棒を大きくしたような、頭(顔)にあたる部分の色だけが異なる棒。それなのに、平さんがシンデレラはもちろん、継母や義姉たち、そして王子様やお城からの使者を演じ分けながら、体全体で悲しみも喜びも表現して話を進めていくにつれて、自分の
"シンデレラ" や "王子様" の顔が見えてくるから不思議です。「この作品を発表した最初の頃は、お城も作ってましたし、ドレスも作っていました。馬車ももっとかぼちゃのようでした。でも、"絶世の美女"
なんて表現しきれないんです。表現したら、そこで終わってしまう。映画やアニメだったら顔を作る必要があるでしょうが、僕の舞台は見てくれる人それぞれが自分の
"絶世の美女" を想像することができるんです。」
平さんが普段使っているたくさんの人形たちが登場する作品
『パペット・スクランブル』 は華やかで、鼻が長く伸びる仕掛けになったピノキオや赤いベールをかぶったサロメ、そして日本のお姫様(写真右)など、大き目の人形が登場します。サロメやお姫様を演じる平さんは人形と一体になったかのよう。「人形と自分は対等な存在ですが、主導権を握っているのは人形です。よく、"人形に命を吹き込む"
と言いますが、12歳で舞台に立ってから10年目にして、実際は "人形の命を引き出す" ということなんだと気づいたんです。そうしたら人形が勝手に動き出しました」。人形の表情は変わらないはずなのに、どこかしらサロメの妖艶さやお姫様の楚々とした様子がにじみ出て、平さんに作られた人形それぞれに物語があることを感じさせます。
これとは対照的な作品が、両手だけを使う作品
『よだかの星』(宮沢賢治原作)と 『ハンド・ラブ』。「都会では物があふれていますが、特別な物を作らなくても、身の回りにあるものを使って工夫できることを子供たちに知ってもらいたい。人間の豊かさは創意工夫にあるんです」と語る平さんの言葉どおり、『よだかの星』
では合わせた両手が鳥の羽になり、背景は意図的に黒い布だけにしてあるのに、たくさんの星がまたたく夜空を哀しみを抱えて飛ぶ1羽の鳥の姿が見えてきます。「『よだかの星』
も、最初は星空を作ってたんです。でも、やめました。みなさんに自分で星空を見てもらいたくて」。平さんのマネジャーの輪嶋さんは、「削げるところまで削いでいくということは、能に通じる、日本的なもの」と指摘します。「常(じょう)の舞台は、"見せないことで見せる"
もの。それがアメリカで通じるかどうか。今回の公演は、1つの挑戦でした」。そして、『ハンド・ラブ』(写真上)は、男女がデュエットで歌う曲にあわせ、右手が女性、左手が男性となり、両手の動きで愛を表現していく作品。性的な要素はまったくないにも関わらず、どこかしら官能的で、まるで大人の素敵な愛を描いた映画を見せてもらったような充足感がありました。
舞台が終わった後、興奮した子供たちが平さんの周りに集まりました。人形と握手をする子供、『よだかの星』 の鳥をやってみせる子供など、どの子も満面の笑顔です。「舞台を見ている時の子供たちの顔は溌剌としています。そして、舞台が終わった後には、僕にも人形たちにも真剣に話しかけてくれます。小1時間の人形劇を通じて絆が生まれ、心が通じ合ってるんですね」と、平さん。フェスティバルの期間中は他のパフォーマーの舞台も見て、自分の舞台もさらに良いものにするための練習を怠らないそうです。公演の後も疲れを見せず、終始笑顔で取材に応じてくれた平さんは最後に、「アメリカの観客は日本の観客とは違い、舞台が始まる前から大熱狂。たいしたことをしていないのに、反応が大きい。それにうまく乗り切れず、初日は間がうまくとれていなかったところがありましたが、この数日間でシアトルの観客が私の表現力・創造力を育ててくれました。今週土曜の最終公演では最高のものをお見せできると思います。子供を子供扱いせず、大人も感動できるパフォーマンスを見せてくれるこのフェスティバルは、シアトル市民の誇りですね」と、語ってくれました。
『シアトル・インターナショナル・チルドレンズ・フェスティバル』 での公演日程
シアトル(シアトル・センター内 Fisher Pavilion):
5/12(月)11:30am
5/13(火)10am
5/15(木)10am ※日本語による舞台
5/16(金)1pm
5/17(土)1pm
タコマ(Rialto Theatre):
5/19(月)11:30am
平常(たいら・じょう)略歴:
1981年生まれ。北海道札幌市出身。12歳の時に1人人形劇 『どんぐりと山猫』(宮沢賢治原作)でデビューし、以来、多数の賞を受賞。2001年に東京へ引越しすると同時にジョウズグループを設立し、子供から大人までが楽しめるさまざまな人形劇を展開。2004年には大人限定の
『毛皮のマリー』(寺山修司原作)で日本人形劇大賞の銀賞を最年少で受賞。演出・美術・構成・人形操演もすべて1人で手がけ、日本のメディアにも大きく注目されている。公式サイトはこちら。
(掲載: 2008年5月15日)
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