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「自分の準備ができたら扉が開く」 シアトル育ちのシンガー・ソングライター エミ・マイヤーさん

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今月、シアトルのレーベル、Origin Records から最新アルバム 『Monochrome』 のアメリカ盤をリリースした、シアトル育ちのシンガーソングライター、エミ・マイヤーさん。これまでにも何度かお話を伺ってきましたが、今回は、デビュー前からの夢をかなえたこと、今回のアルバムで初めて挑戦したこと、そしてこれからの予定などについて伺いました。

エミ・マイヤーさん

初めてジャズのカバーに挑戦

これまでカバー曲をあまり歌わず、自分で作詞作曲したものを歌ってきました。それが私にとって一番心地よかったからです。でも、自分の曲を10曲ほど書き溜めるのに今は2~3年ぐらいの時間が必要なので、その間にジャズのカバーに挑戦してみようと思いました。

と言っても、単にカバー曲を歌うだけではなく、曲は全部自分で決めて、4-5年前にフランスで一緒にツアーをしたすばらしいピアニストのエリック・レニーニと一緒にパリでも収録するという条件つきで。それを実現できて嬉しいです。

アメリカ盤にはシアトルらしさを

2015年にリリースした日本盤では、ジャズ・スタンダードをテーマにしていました。アメリカ盤ではアメリカの人なら聴き慣れすぎている『What A Wonderful World』 や 『I’d Rather Go Blind』 は、スタンダードの楽曲で本当にいろんな人が歌っているものですが、今までの経験や感情を入れて自分らしく歌っています。

『If I Think of You』と『Monochrome』 は私のオリジナル曲で、ピアニストのエリック・レニーニと彼のバンドとパリで収録したのですが、彼のすごい個性が伝わる作品になりました。ちなみに、『Monochrome』というのは、美しさを保存するために押し花にされた花のお話です。恋人の花は押し花にされず離れ離れになってしまったので、たびたび押し花に会いにきてくれる。時間がたつにつれ、その恋人は年を取っていくけれども、それが美しかった、と。

シアトルならではと言えるのは、シアトルのジャズピアニストのドーン・クレメンツさんと『Paraiso 』『Flesh and Bones』を、そしてポートランド出身のギタリストのダン・バルマーさんと『Odyssey 』を共作したこと。ドーンもダンも米国北西部を代表するミュージシャンで、ドーンはシアトルのコーニッシュ芸術大学で教えていて、ダンと共にポート・タウンゼンド・ジャズ・キャンプでも教えているので、私もレッスンを受けた時からのつながりです。

そんな先輩たちに一緒に作曲をするのはどうかと聞いてみると、賛成してくれました。尊敬するミュージシャンと対等の立場で作るのは緊張しましたが、日本でもすばらしいプロの方々と共作して経験を積んだことからも、対等であってこそいい曲を作ることができ、新しい意見をとりいれてこそやる価値があると思っています。おかげで、シアトルのミュージシャンのエネルギーの入ったものができあがりました。

夢がかなったシアトルからのリリース 自分の準備ができたら扉が開く

実は京都に留学する前の2007年頃、シアトルでレコーディングした1枚目のアルバムを Origin Records から出せないのかなと思って連絡してみたのですが、その時は駆け出しでしたし、返事をいただけなかったんですね。でも、今回はジャジーなアルバムだから興味を持ってくれるかなと思って連絡してみたら、リリースしてもらえることに。ようやく、夢がかないました。

そういうことってよくあって。例えば、以前に連絡した時は返事をいただけなかったプロデューサーに改めて連絡してみると、「じゃあ一緒に何かしよう」と言ってくれたということもありました。結局、ある時に扉が開かなかったりしても、それは自分がまだ準備ができてなかったからなんですね。18〜19歳の頃はあまり我慢がなく、そういったことがフラストレーションでしたが、今は「何事にも近道はない」と、理解しています。今すぐできないことはたくさんあるけれども、自分がこつこつ努力し続けてレベルアップすれば、扉は開くんだ、と。

自由と責任は手放せない、でも自分が心地よいと感じるところから出ることも大切

シンガーソングライターとして活動を始めた時から変わっていないことは、自分がアルバムの権利を持つことです。そうすることで、誰かの意見によって自分のアルバムが作られてしまうことを避けられますし、何をやっても自分の選択ということになります。シアトルで受け入れられなかったら失敗と言えますが、いい経験になります。失敗するかもしれないと恐れて何もやらないより、決意を持ってやるほうがいい。人生は短いのでやらなきゃという気持ちがあります。その自由と責任は手放せません。

最初のころは特に、自分と違うジャンルには絶対に巻き込まれないようにがんばろうと思っていましたが、今は、違うジャンルの人と共作することもしています。自分の好き嫌いははっきりしていても、以前より幅広く、求められているものも作れるようになったんですね。

シアトルではこういうものが好まれるからこういうことをしようというように、韓国ではこう、日本ではこう、と、各国でツアーをしてわかったことがあって、それを取り入れていきたいです。自分が心地よいと感じるところから出ることも大切なのですね。

今後の予定としては、ナッシュビルで録音したばかりの楽曲を収録したアルバムを来年の6月頃にリリースすること。昔からあるブラックバード・スタジオという、ビートルズの大ファンというオーナーがやっているスタジオで、カントリーだけでなく、いろいろなミュージシャンが使っています。それもまたナッシュビルのエネルギーの入ったサウンドになるかなと考えると、本当に楽しみです。

シアトルはやっぱり「帰ってきた」と感じる場所

シアトルで収録した3曲は、あのポール・アレンさんがミュージシャンのために作ったプライベート・スタジオでレコーディングしました。毎回帰ってくるたび、シアトルの街の様子がどんどん変わり、シアトルらしい部分がなくなっていく心配はありますが、ポール・アレンさんのようなインフルエンサーが目に見えないところでインディペンデントなシアトルのミュージシャンをサポートする、そんなシアトルらしいところがある。音楽業界は不思議な世界だけれども、音楽で通じあえるのは、やっぱり音楽の力なのでしょうね。

シアトルに来て天気のいい時には必ずグリーン・レイクを歩きます。シネラマも好きなので行きますし、新しいレストランも必ずチェックします。でも、一番落ち着くのは実家。シアトルの自然の匂いがします。葉っぱの匂い、そして、湖の水を含んだような空気かな?(笑)それが混じった、香ばしいような匂いがしますよ。深呼吸して、「ああ、帰ってきた」と思います。

エミ・マイヤー 略歴
アメリカ人の父・日本人の母のもとに京都で生まれ、1歳でシアトルへ移住。幼いころからクラシック・ピアノを習い、ジャズにも親しみながら作詞作曲や歌を続け、シンガーソングライターの道へ。2007年にシアトル・神戸・ジャズボーカリスト・オーディションで優勝し、その2年後にデビュー。東京を拠点に次々と作品を発表し続け、今では日本を中心に映画・テレビ・コマーシャルなどでもその歌声を聴くようになっている。日本・アメリカ・フランスなどでさまざまなアーティストとのコラボレーションも展開。2017年9月にはシアトルのレーベル、Origin Records からアルバム 『Monochrome』 のアメリカ盤をリリース。公式サイトはこちら

掲載:2017年9月



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