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シアトライトに学ぶ『幸せな人生』とは ~ iLEAP x JUNGLECITY.COM 「働き方・生き方」

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シアトライトに学ぶ『幸せな人生』とは

2001年にイチロー選手がシアトル・マリナーズに移籍したことで、日本で一躍有名になったシアトル。最近では、NHK 朝の連続ドラマ小説『あさが来た』で人気になった俳優のディーン・フジオカさんが留学していたことでも話題になった。

最新のアメリカの住みたい街ランキングでは、シアトルは7位にランクイン。

なぜシアトルはそんなに住みやすい街として知られているのだろう。シアトルで活躍する建築家・松原博さんに伺ってみた。

シアトライトに学ぶ『幸せな人生』とは

プロフィール:松原博
GM STUDIO INC.主宰。東京理科大学理工学部建築科、カリフォルニア大学ロサンゼルス校建築大学院卒。清水建設設計本部、リチャード・マイヤー設計事務所、ジンマー・ガンスル・フラスカ設計事務所を経て、2000年8月から GM STUDIO INC. の共同経営者として活動を開始。主なサービスは、住宅の新・改築及び商業空間の設計、インテリア・デザイン。

映画で見た "あの" アメリカ!

美しい街並み

シアトライトに学ぶ『幸せな人生』とは

シアトルを考える上で重要なのが、シアトルが "市" であるということだ。具体的に言うと、東京都の調布市が比較対象として正しいという。そして、驚きなのが人口は約66万人しかいない小さな市であるということだ。(東京都足立区が約69万人規模)

そんなシアトルの街並みの特徴は、自然と一体化しているところだ。住宅地では、日本の感覚で言えば、針葉樹林の中に家が立ち並んでいるかのようなインパクトを受けるところがある。だからこそ、リスだって道端で見ることができてしまう。

また、ダウンタウン中心部に焦点を当てると、古いレンガ造りの建物と新しいビル群のハーモニーが美しい。特に、100年前の建物の近くに高層ビルがあるところが、東京にはない美しさにつながっているのだと思う。

山や海に囲まれ、市民の心の中に自然が内在しているシアトル。「盆地という土地柄、昔からシアトルは敵に襲われる恐れがなく安心感をもたらしていた。それが、この街の穏やかさを生み出している」と、松原さん。

歴史を愛する人々

しかし、シアトルのすごいところは、そんな小ささを感じさせないのと同時に、白人が入植してからわずか160年ほどではあるが、その歴史を重要視しようとしているところだ。築50年以上の家が多く見受けられ、キャピトル・ヒルやモントレイクでは、築90年を超える家が大半を占める。

アメリカでは、改築や増築を通してより価値が高まるという、日本とは真逆の考え方がある。このことがシアトルを含むアメリカで、歴史的な建築が残る理由とされている。「壊す必要がない建物をどうして壊すのか」という発想が、古い建物をリノベーションして大切にする根源にあるのかもしれない。リノベーションに関して、詳しくは「第28回 増改築をして生き続けるシアトルの住宅」をご一読いただきたい。

シアトライト(Seattlite)の価値観

シアトライトに学ぶ『幸せな人生』とは

街並みのところでも触れたが、シアトルには安心感から生まれる穏やかさがある。そのため、基本的にシアトライトも穏やかでのびのびしているように思える。

シアトルには午後5時に仕事を終えて家族と過ごすことが可能な文化もあり、帰宅ラッシュも午後2時〜5時に集中している。

また、松原さんによると、「木曜日ぐらいから週末について考え始め、仕事が手につかなくなる傾向がある」という。シアトルがもともと自然の中にあったことや山脈や海が周りにあることから、アウトドア文化が根付いているのもその理由のひとつで、「今日はどこでハイキングしようか?」「どこにスキーしに行こうか?」と考え始める人がいる。東京に比べて大自然が近いのでピクニックやサイクリング、ハイキングなど、雨でなければ休日を屋外で過ごす人が多いようだ。

プライベートな時間を重視するため、これまで夜の文化やエンターテイメントがあまり発展してこなかったという一面はある。しかし、IT 産業の急成長のおかげで州外などから若年人口が流入しているので、これから変化が起きていくかもしれない。

「便利すぎる」日本の弊害

「便利さ」によって失ったクリエイティビティ

松原さんは「日本に必要なのは "不便さ" だと思う。日本は便利すぎる」と言う。

例えば、どこに行っても同じものが売られているという現実。コンビニエンスストアがいい例で、東京都に行っても北海道に行っても沖縄県に行ってもどこに行っても、頭を使って考えなくても、いつもと同じものを買うことができる。結果的に、クリエイティビティが失われていくのだ。そして、クリエイティビティが失われると、「無関心」な人が増えていく。なぜなら、無関心とは、問題や課題に対して「考えない」、あるいは、「考えられない」からである。近年、無関心な人が増えているのは、クリエイティビティの枯渇と言えるのかもしれない。

アメリカと日本を比べて感じた違いとしては、エスカレーターとエレベーターの使い方がよくあらわしていると思う。一般的に、日本人はエスカレーターで歩き、エレベーターでは閉じるボタンを押す。一方、アメリカ人はエスカレーターで歩かない人が多く、エレベーターでは閉じるボタンを押さない。日本人は、便利さと効率性を求めすぎて、"せっかち" になっているのではないか。人生の幸せは人によって異なるが、シアトルに来てから、もっと伸び伸びとストレスフリーな生活を毎日続ける方が楽しいのではと感じている。

アメリカも良い面、悪い面があるので一概には言えないが、効率化と便利さを追求しすぎることによる弊害を日本でももっと考えた方が良いのかもしれない。

シアトライトに学ぶ『幸せな人生』とは

松原さんがデザインを手がけたモダンな韓国料理レストラン
『Girin』(パイオニア・スクエア)

掲載:2016年4月

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