「この車を作って、今シアトルにいることが信じられない」と言う山田さんは、「自分は写真家でありジャーナリストで、科学者でもエンジニアでもないので、こんなとんでもないことを考えてしまったのかもしれません。バイオディーゼルがすべての問題を解決するというのではなく、1つの方法として試して行きたい」と、式典に集まった約50人の参加者に語りかけました。使用済みの食用油から精製できるバイオディーゼル燃料は二酸化炭素を使わないため地球温暖化防止に役立つ上、個人レベルで燃料作りに参加することで環境・エネルギー問題についてより深い理解や知識を得ることができるとして注目を浴びています。このプロジェクトを発案してから約100人にアドバイスや援助を受けたそうですが、2006年に車両に搭載できる超小型プラントの開発を開始してから、完成までに予想を大幅に越える約8ヵ月を要したとのこと。と言うのも、各地で集められた食廃油からバイオディーゼル燃料を精製しながら走行するため、その小型化はもちろん、約2,500キロも無人の状態が続くサハラ砂漠などのオフロード走行への耐久性、世界各地で入手するどんな油をも燃料に変える精製能力が求められたからです。また、満タンの状態で340リットル(約85ガロン)になる燃料と自家発電機の重さに耐えるためラリーのテクノロジーを使ったサスペンションの強化など、車両の耐久力などにも手を加える必要がありました。そのかいあって、昨年12月に行った日本縦断、そして今月のカナダのバンクーバー
BC からシアトルまでの走行も無事終了。「カナダからアメリカへの入国も驚くほど簡単でした。テロリストと間違われないよう、バイオディーゼルとこのプロジェクトに関するいろいろな書類を用意していましたが、それを見られることもなく、国境では非常に好意的に受け止めていただきました。10年前ではこのような反応を受けることはできなかったでしょう。環境問題に対する懸念が高まっている今こそ、このプロジェクトをやるべき時なのだと思います」と、山田さんは熱い口調で語ってくれました。
山田さんを含む3人のチームがこのプロジェクトで走行するルートは、昨年12月の日本縦断、その後のカナダへの船での移動、そして今月のバンクーバー
BC からシアトルへの走行、そして今月のシアトルからの北米横断、アフリカ・ヨーロッパ・ロシアを回り、最後に日本を一周するというもので、全走行距離は約6万〜8万キロ。「この車両を使ったバイオディーゼル燃料での1ガロンあたりの走行距離は20マイル。それをただ走行するだけでなく、食廃油の収集に地域の協力が必要なため、走行ルートにある地域の人々との出会い、そして環境に優しいエネルギーや暮らしについての話し合いなどの交流を行っていきます」。米国内のルートは、基本的にはシアトルからロサンゼルスまで南下し、グランドキャニオンを訪れ、中西部から東海岸までと、約2ヵ月半を見込んでいますが、各地で油を集めて燃料を精製しなくてはならないことから、予想より時間がかかる可能性もあります。また、米国を出た後は、その場の政治的な状況などを見ながらルートを選び、英語圏外や車が一般的でない地域、バイオディーゼルに関する知識がまったくない地域などの走行に関しては展開に予想がつかないとのことでした。