
岐阜県高山市出身の中野さんが料理人になりたいと思ったのは、大学4年生の時。生活費のために居酒屋でアルバイトを始めたのがきっかけだった。大学卒業後は製薬会社に就職したが、「やっぱり料理人になりたい」と、茨城県にある喜作で修行を開始。「オーナーも板長さんもとてもいい方々で、数年にわたり惜しみなく教えてくれました。」
そして1990年、「ハワイのレストランで働かないか」という誘いを受け、オアフ島のアラモアナ近くにあるレストランへ。事前に聞いていた話と大きく違ったため、ワイキキにある
『義経』 に転職したが、ハワイの物価高で生活の大変さを感じていた折、同僚から「ワシントン州のアイ・ラブ・スシがレイク・ユニオンに店を出すらしい。行ってみないか」という話が舞い込んだ。「日本にはいつでも帰れる」と思い、シアトルに来たのが1992年。以来、ずっとシアトルで寿司を握っている。
シアトルに来てみて、まず気に入ったのは気候。たいていの人が口にする寒さや雨の多さは気にならないそうだ。食材に関しては、1992年当時は、「手に入る魚はこれだけか」と品数の少なさに驚いたものの、次第に流通が改善され、アラスカ州と日本が近いこともあり、今ではさまざまな魚介類が新鮮な状態で手に入るようになったという。「シアトルにはダンジネス・クラブやキンキ、オイスターなど、いい食材がいろいろある。茨城県では高級魚の代名詞だったキンキがこちらでは安く手に入ることに驚いた。もちろん、味は日本の方が勝るが、それでもこちらのキンキの味が大幅に劣るわけでもないし、サイズはこちらの方が大きい。オイスターは今の時期が特においしいと思うが、パシフィックという種類が身も大きくて食べごたえがある。グイダック(ミル貝)はとても代表的。夏に生で食べるボタン海老はたまらない。銀ダラはアラスカ産が冷凍ではなく生で手に入るようになった。ありがたいですよ。」
喜作を開店したのは2002年。大きな窓が並ぶ明るい店は、暖色でまとめられ、新鮮な魚介類がガラスのケースに並ぶ寿司バーを囲むように配置されているテーブルには、ワンランク上の店であることを示す白いテーブルクロスが敷かれている。ランチもディナーもにぎわい、特に週末に確実に食事をしたいなら予約がおすすめだ。
料理がおもしろくて始めた人ならたいてい、「いつかは自分の店を」と思っているはずと、中野さん。「そういう気持ちじゃないと、この商売はできない。」
開店当初から “地域に密着したレストラン" という意味の "Neighborhood Restaurant"
を目指してきたが、開店から8年がたった今、「そういう方向で間違ってなかったと思う」と言う。歩いて食べに来る近所の人も多く、また、遠方から来店する常連もついている。全体的に、日本食を食べる人も増えてきているという手ごたえを感じるそうだ。「お客の底辺が広がるのはいいこと。昔は日本食と言えば寿司だったが、今ではいろいろな店がある。いろいろな日本食を楽しんでもらいたい。」
中野さんが信条としているのは、基本的に素材をいかした料理。「近くばかり見ていると、遠くが見えなくなるからね。」 なるべくシンプルな味付けで、作っていく。飽きさせないためには、素材力を引き出すことが必要だ。今回いただいたお料理も、アラスカ州の銀ダラ、ワシントン州のキンキにダンジネス・クラブと、身近な食材が主役。中野さんの心遣いに心が温まる。最近はフランス料理をベースにしたカレーライスなど、同店のオリジナル・メニューがランチに登場。ディナーには予算にあわせたおまかせコースも予約できる。同店でぜひシアトルの旬を味わってみてほしい。
(2010年3月)
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【お料理】

銀ダラの山芋蒸し

きんきの粕漬け

ダンジネス・クラブの豆腐しんじょ揚げ
Kisaku 喜作
【住所】
2101 North 55th Street
Suite 100
Seattle, WA 98103 >> 地図
【公式サイト】
www.kisaku.com
【Phone】 (206) 545-9050
【営業時間】
ランチ: 月・水〜土 11:30am-2pm
ディナー: 月・水・木 5pm-9:30pm; 金・土 5pm-10pm; 日 4:30pm-9:30pm
火曜定休 |
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