
Hype!
ハイプ!
| ジャンル |
ドキュメンタリー |
| 公開年 |
1996年 |
| 監督 |
ダグ・プレイ |
| Rating |
なし |
|

米国北西部の音楽好きがガレージで響かせていた、重苦しくも激しいサウンド。さまざまなフラストレーションが渦巻くようなその独特のサウンドが地元で注目を浴び始めたのは、1980年代のことだった。それがあれよあれよというまに新しい音楽として認められ、「グランジ」という名前を与えられ、シアトルはそのメッカとして世界から注目されるようになる
−。
しかし、この作品は、そのグランジへのトリビュートでもオマージュでもない。『hype!』 というタイトルからも想像できるように、これはそのサウンドがどのように人を惹き付け、瞬く間に商品化され、作り手から離れていくかを、さまざまな証言を元に追った記録なのだ。
グランジの火付け役となったのは、シアトル発の人気バンドとして今も活躍しているサウンドガーデンに目をつけたブルース・パヴィットとジョナサン・ポンマン。どうにかしてこのサウンドを広く知らしめたいと思った2人は自分達の気に入ったバンドをプロデュースする新しいレーベル
『Sub Pop』(サブ・ポップ)を1987年に設立する。この作品にも登場するパヴィットとポンマンは、1989年3月にイギリスの音楽誌
Melody Maker の記者を呼び寄せて記事を書いてもらったことを振り返り、「その記事 『Seattle: Rock City』
が、この新しいサウンドを世界に知らしめることになったと言っても過言ではないよ」と笑った。
その3ヵ月後、サブ・ポップはあのニルヴァーナのデビュー・アルバム 『Bleach』 をリリースする。「このバンドは行けるぞ」と業界関係者も唸らせたニルヴァーナは、1991年9月既に活動していたさまざまなバンドを飛び越し、2枚目のアルバム
『Nevermind』 と共にサブ・ポップからメジャー・レーベルの Geffen/DGC に移籍した。9ヶ月間に400万枚を売り上げたこのアルバムによって、「グランジ」は世界の音楽シーンで確固たる地位を築き上げる。翌1992年には
『Spin』 誌が「R&R 界にとってのシアトルは、キリスト教信者にとってのベツレヘム」とぶち上げ、キャメロン・クロウ監督がシアトルで撮影した映画
『Singles』 効果もあって、「北西部の田舎町シアトル」は一躍、"クールな町"
となっていった。
しかし、作り手と買い手の歯車がかみ合わなくなってきたのはこのあたりからだろうか。「シアトル」「グランジ」が商品化され、数億ドルが動くようになると、この金の卵にあやかろうと、大企業が群がり始める。バンドのメンバーたちが普段着として着ていたフランネル・シャツ、ドクター・マーティンのブーツ、ニット帽が、「グランジ・ファッション」としてファッション・ショーに登場し、店のショーウインドウを飾るようになり、ニューヨーク・タイムズなどの主要紙がネタを求めてシアトルまで取材に訪れ、レコード会社は次のニルヴァーナ、サウンドガーデン、パール・ジャムを求めてシアトルのバンドと次々と契約していった。自分達の音楽がファッション化されていくことに対する苛立ちを画面に向かって吐き出すアーティスト。大企業の大騒ぎぶりにすっかり冷めきってしまったシアトルの業界関係者。「あまりにもおかしくて、マジメに取材に応じるのはやめたわ。質問が来ても、適当に作り話をして答えるようになったの」と、サブ・ポップのある職員も当時を振り返る。そして、1994年、ニルヴァーナのカート・コヴァーンの自殺のニュースが報じられ・・・。
今のシアトルにはかつての「グランジ」ブームは感じられない。町全体も1990年代後半からは特に、激しいスピードで変わってきている。しかし、あの時代にシアトルにいた人なら、この作品に登場するバンドの音楽が
BGM に流れるシアトルを簡単に思い出すことができるだろう。
|

※画像をクリックすると Amazon で購入できます。
|