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マディソンにあるスペイン料理レストラン 『Harvest Vine』 のオーナーシェフ、ジョセバ・ヒメネス・デ・ヒメネスさんが2007年11月に開店したタパスの店。2nd
Avenue に面した窓越しにオープンキッチンを除き見ながら狭い門口を入ると、天井が高く、細長いスペースが現れる。オープンキッチンとワインやスパイスの棚、そしてタパスのサンプルが並ぶカウンターがスペース左側のほぼ半分を占め、右手はそれを見渡しながら食事のできるテーブルとスツール、そして奥は低いテーブルと椅子でゆったりと食事ができるダイニング・エリアになっている。オイルやスパイス、ハードリカーやスペイン産ワインのボトルが天井までぎっしり並ぶ棚のおかげで唯一色彩が豊かなオープンキッチン以外は、シンプルでさっぱり。店内の壁もすべて白で統一され、マドリッドからシアトルに来た画家カルメン・カルノさんが手がけたという赤いチョリ(バスク語で鳥を意味する)が飛ぶ絵が映える。門口の枠も、この絵と向かい合う縦長の窓の枠も、赤いチョリと同じような色に塗られているだけ。このシンプルさが「落ち着く」と、スペインはバスク出身のジョセバさん。もとはアートギャラリーだったこのスペースを、「アーバンでありながらフレンドリー、そしてヨーロッパの雰囲気を」というジョセバさんの願いどおりになったというわけだ。
「なぜここで改めてタパスを?」と聞いてみると、ジョセバさんは、「スペイン」とは言わず、「"バスク"、特に私の故郷のサン・セバスチャンの味をもっと気軽に楽しんでもらおうと思って」と、ニコリ。直径30センチぐらいはあろうかというフェルト製の平べったいベレー・バスクを常にかぶっているジョセバさんは、固有の言語と文化を持つ故郷のバスクに当然ながら強い誇りを持っている。「食材においても調理においても最高の品質を求めるところは、『Harvest
Vine』 と同じ。でもここならバル(居酒屋)のように、ふらりと入って、ちょこちょこと食べて飲んでということができる。待ち合わせに使ってもらってもいいし、ゆっくりとディナーを楽しんでもらってもいい。とにかく気軽にね。」
ジョセバさんが厳選したローカル&オーガニックの食材を使った小皿料理(ピンチョ:Pinxo)のメニューは毎日約20種類。2人でシェアするにちょうどいい一品料理の
『Raciones』、一口か二口で食べられる冷たいピンチョ 『Pintxos Filos』 と熱いピンチョ 『Pintxos Calientes』
という3つのカテゴリがあり、野菜のみの料理は少なく、肉類と海鮮類の料理が大半を占める。日によっては2つから3つのスペシャルもあり、食材の豊富な春から秋にかけてはさらにチョイスが増えるそうだ。
「おいしいものを作るには食材の質が良くなくちゃいけないし、もともとの味を引き立てる調理でないと、わざわざ手を加える意味がない。味を濃くするのは食材の質の低さをごまかすためだと思う。だからここでは必要最小限の調味料しか使わない。僕は寿司も含めた日本食が好きだけど、バスクと日本はそういった根本的な姿勢が共通してるんじゃないかな」と語るジョセバさんのすすめに従い、冷たいピンチョのリストからジャガイモと玉ねぎの入ったオムレツとアイオリソースを乗せたトルティーヤ・エスパニョーラ($2)、燻製のツナとキャビアを乗せたマハマ($3.50)、ダック・コンフィとオレンジのエンサラダ・デ・パト・コンフィタード($2.75)を選ぶ。オーダーはキッチンに伝えられ、シェフがその場で調理にかかるが、冷たいものは前もって準備された素材を盛り付けるのみなので、数分後にオムレツ・ツナ・ダックのピンチョスが鮮やかな緑のソースを模様のように描いた細長い皿でサーブされた。タパスはそもそも午後2時にしっかり昼食を取って昼寝をし、仕事を終えた午後6時ごろにお酒を飲みながら「軽く」「いろいろ」食べるという位置づけのものなので、1つ1つが小ぶりだ。この三種のピンチョスもかわいらしい盛り付けで女性にぴったり。それにあわせて同店では、ナイフとフォークも、不思議な形の白い取り皿も小さい。大きな手の人たちはこれをうまく操ることができるのか、他人事ながら少し心配になった。
続いて、熱いピンチョのリストからマッシュルーム・タルトのタルタレタ・デ・チャンピノンズ($2.50)、小イカをイカ墨で調理して揚げパンに乗せたカラマレス・エン・ス・ティンタ($4.25)、タコが主役のプルポ・デ・フェイラ($3.50)を追加した。マッシュルームがたっぷり乗ったタルトはこの上なくサクサクしており、あっという間になくなってしまった。タルトがとても新鮮なので割れやすいため、2人で食べるよりも1人でパクリと食べるのがおすすめ。また、揚げパンに乗せた小イカや、タコの足がこの上なくやわらかい一品は、素材そのものの味を存分に堪能したい人におすすめ。素材の味よりも濃いソースを味わっているような料理を食べ慣れていると、新鮮に感じられるかもしれない。
食事の最後に、スペインを代表するソーセージを乗せたチョリソ・コシード($3)、煮込んだ牛の尾の肉を乗せたラボ・デ・トロ($6)、そして一品料理の豚肉のミートボールが3つついてくるアルボンディガス($6)、ニンニクをきかせたブロスで白いんげんとアサリを煮込んだポチャス・コン・アルメハス($9)も追加してしまう。ポチャス・コン・アルメハスは、スープにアサリの味が存分に引き出されているのに潮臭くなく、つけあわせのパンとの相性もぴったり。一方、アツアツでサーブされたミートボールは、すべてをちゃんと手作りしている家庭の味だ。たっぷりかけられたソースはニンニク・玉ねぎ・ニンジン・バスク産チリオイル、バスク産ワインを何時間もじっくりと煮込んだものだそう。「肉の汁は一切捨てないで、すべて一緒に煮込んでね。手間をかけるとおいしくなるから。」牛の尾の肉を煮込んだものも、この法則に則った一品。そもそも肉は大量に食べるものではないので、このぐらいがちょうどいい。どんどん追加してくれるパンを千切って、残りのソースを食べてしまおう。
仕上げはカフェ・ヴィタの豆を使ったエスプレッソとウォールナッツのタルト($5)。デザートはほぼ毎日替わるためメニューは印刷されておらず、担当のサーバーに聞いて教えてもらうようになっている。ウォールナッツがぎっしり詰まったこのタルト、食べた時のプチプチした歯ざわりはイチジクのペーストに入ったイチジクの種。「余計なものを入れず」に焼き上げてあるというこのタルトはいつもあるとは限らない。ちなみに、5月末のある日のデザートはストロベリーとルバーブのパイだった。デザートで季節を感じさせるのも、ジョセバさんならお手の物だ。
スペイン産のワインやビールを飲みながらじっくり、または映画や劇場に行く前にサッと食べるのにもおすすめのタパス。ジョセバさんのこだわりを通してバスクの味を体験してみるのはもちろんのこと、シアトル地域の旬をすみずみまで味わってみるなら、まずここからスタートしてみよう。
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