ダウンタウン・シアトルのウェストレイク・センター裏手にあるメイフラワー・パーク・ホテル1階にある地中海料理レストラン 『Andaluca』。スペイン料理のエッセンスを取り入れた地中海方面の味が朝食から夕食まで楽しめる。
昼間の時間でも照明を落とした店内は、ヨーロッパの荘厳さを意識しつつも、曲線を多用した木彫のインテリアでくつろげる雰囲気を作り出している。席間も広めにとってあり、スパニッシュのギターが奏でる音楽も会話を妨げないくらいの音量にしている気遣いが嬉しい。ダウンタウンの中心地というロケーションから、買い物や勤務の間のランチを楽しむ人たちが多い。
1999年から同店のエグゼクティブ・シェフを努めるウェイン・ジョンソン氏は、会計学を学ぶためにピッツバーグ大学に進むも、やはり一番好きなことは料理だと気づき、20代半ばから本格的に料理の道に進んだという経歴の持主。もともと物事を統計的かつ計画的に考えるタイプだそうだが、いろいろな「いい偶然」が人生を変えてきたという。シェフとしてさまざまなキャリアを積んで30代になったころ、たまたま受講したスペイン料理の特別講習で母親の作るケンタッキー郷土料理を思い出し、原点に戻る気持ちに突き動かされて今のスタイルが生まれたという。「偶然のようでも、必ず過去の大きな経験に何か繋がっている要素があるんだよ」と語る彼は、母や親族との楽しい思い出から、人へ、そして人間を取り巻く環境や地球を大切にすることにつながると説く。そのため、同店の食材はウディンビルなどの地元オーガニック農家・業者から、サフランなど地元で生産できないものはスペインの限定業者から仕入れるなどこだわりがある。「シェフ・ウェイン」という愛称で呼ばれる彼は、次世代の教育にも熱心で、志を同じくするシェフ・農家・流通業者と定期的に勉強会を開き、講師を務めることもあるそうだ。今年夏には、スペイン領事館からの要請を受けスペインに出張し、地元シェフたちとの仕事が予定されているほか、本も執筆中で、さまざまな方面において精力的に活動している。2006年に
『Black Enterprise Magazine』 のアフリカン・アメリカン・シェフ全米6位に選ばれたこともあり、同店は 『Seattle’s
Best Mediterranean Restaurant』 、シアトル・マガジンの 『Best Overall Restaurant』、ZAGATの
『NW Restaurant Guide』 で「シアトルで最も人気のあるレストランTOP20」に名を連ねている。
今回はシェフ・ウェイン自身に、昼食におすすめの数品を選んでもらった。まずは、前菜に 『Stuffed Date』($9.25)
。実をくりぬいた干しデーツ(ナツメヤシ)の中に、スペインからのチョリソ・ピカンテ(スペイン産ピリ辛のソーセージ)とゴート・チーズをペースト状にしたものを詰めてある。デーツの濃厚でまったりした甘味にチョリソのピリ辛と塩気があわさった不思議な味だ。オレンジ風味の酢をベースにしたソースのおかげで、ほのかにシトラスの香りがする。ラディッシオ(イタリアン・チコリ)のサラダは、酢と塩のマイルドなドレッシングで和えてあるのみ。コリッとした食感のピスタチオが入っているのがポイントだ。
次は 『Crab Tower Salad』($14.50)。緑やオレンジなど綺麗な色どりの食材をバランスよくタワー状に盛り付けた、インパクトのあるこの一品は同店のシグネチャー・ディッシュ。ガーリックをきかせ軽い塩味をつけたペースト状のアボカドの上に乗るのは、新鮮な卵がベースの
『Andaluca Mayonnaise』 と和えたダンジネス・クラブで、カニの味をひきたてる、あっさりした味。そしてトップに乗るのは鮮やかなサルサ風のガスパチョ・サラダ。赤と黄のピーマンを粗く刻んだものをシトラス風味の酢を使ったドレッシングで和えたもので、遊び心を感じさせるチャイブが飾ってある。季節のグリーンサラダに、濃いオレンジ色のグレープフルーツでアートのように彩られたこのサラダには、満足感でいっぱいになるだろう。
また、『Prawn Panzanella Salad』($15)は、スピナッチ、フェタ・チーズ、マリネしたレッド・オニオン、オリーブを和えたもの。ドレッシングは
『Horiatiki』 というレッドワイン・ビネガーがベースで、地中海を感じさせるバジルの香りが漂う。角切りブルスケッタがちりばめられているのがおもしろい。すでにしっとりとドレッシングを吸ったブルスケッタをサラダに混ぜるのは、イタリアの地中海に面した地方の食べ方なのだそう。炭火焼きのように香ばしくローストしたエビを2匹からませてアレンジしてあるのがお洒落。これだけでお腹が一杯になるようなボリュームだ。
酢や塩は控えめとのことで、アメリカの一般的なレストランと比べると少し薄味のように感じられるかもしれないが、それは質の良い素材の持つ風味や香りを生かすため。素材そのものの風味にこだわる日本人には合いそうだ。
デザートとして勧められたのは、『Liquid Chocolate Cake』($8.25)。チョコレート・ケーキでできた温かい「器」に、キャラメル風味のアイスクリームがほんのりとろけて登場。ビター・スイートのチョコレート・ソースと、甘酸っぱい地元産オーガニックチェリーのコンポートの赤紫、ピスタチオとミントの葉が彩る。ダーク・チョコレートのケーキもアイスクリームも甘さ控えめでしつこくなく、後味がいい。見た目も美しくて満足できるはず。
チップや税金を考えるとランチにしては少し値が張ると感じるかもしれないが、ビジネスや特別な日のランチにはぴったり。ゆったりとした雰囲気と、行き届いたサービスで気持ちの良い時間を過ごしてみよう。どの料理も2〜3人でシェアするに十分なので、気軽な友人たちとの昼食にもおすすめだ。
同店はホテルの1階にあるだけあって、午前6時30分から朝食、そしてランチとディナーを午後11時までサーブしている。ディナーではシェフ・ウェイン自慢の
『Paella』($33)などを世界各地の100種類を越えるワインとともに楽しめる。夕方には 『Pinxtos』(「ピンチョ」と発音し、スペイン風おつまみの一品料理)、平日にはハッピー・アワーもあり。メニューや詳細情報は公式サイトで。
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