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米国移民法
 
米国での就職活動における基本・米国移民法
米国移民法とは、米国外から米国へ入国し、長期あるいは短期的に米国内に滞在する外国人を規制することを目的として施行されたアメリカ合衆国の法律だ。米国移民法は連邦法で、州を問わず、米国領土内すべての地域で適用される。移民法に関しては書籍でもインターネットでも簡単に入手できるので、外国人として米国で就労する場合、それに必要なビザの取得に関わる基本的な事柄は理解しておこう。また、個人レベルで状況が異なることを理解し、自分の場合はどうすればよいのか、移民法専門弁護士や人材コンサルタントという確かな情報源に相談することで、時間も労力も金銭も節約できる。ここでは外国人が米国で就労するにあたり最も一般的な H1-B(エイチ・ワン・ビー)ビザについて取り上げてみよう。


H-1B ビザとは
特殊技術や知識を必要とする専門職に就く外国人労働者に適合するビザ。日本語では「専門職ビザ」と呼ばれる。日本人留学生が大学卒業後にアメリカで就労する場合、OPT(オプショナル・プラクティカル・トレーニング)を経て H-1B ビザを取得するケースがほとんどだ。

※OPT はビザではなく、学校を卒業した人に与えられる実務研修期間のこと。コミュニティ・カレッジ、大学、大学院、専門学校の卒業生が申請する資格があり、F-1ビザなら最長1年、M-1ビザなら最長6ヶ月にわたり合法的に就労できる。通常、卒業直後から就労・就職活動ができるようタイミングをはかって申請し、取得する。なお、語学学校卒業生は申請できない。

特徴
  • 初回取得ビザ有効期限:最長3年
  • 滞在期限(I-94):原則、ビザの有効期限に同じ
  • 移民局での事前審査:要
  • 期限の延長:最長3年まで延長可能(H-1Bの資格で最長6年就労可)※
※その後国外で1年間過ごした後に再申請可

H-1B ビザの申請基準
  1. EIN(米国法人番号)を保持する在米企業に採用が決まっていること。企業の規模や事業形態、業務内容に関する制限はない。
  2. 米国内外を問わず、学士号以上の学位、または同程度の専門職としての実務経験を持っていること。実務経験を利用する場合は、3年の実務経験が4年制大学での1年分に相当する。
  3. 職務内容が特殊技術や知識を必要とする専門職の分野(Specialty Occupation)に相当すること。移民局は、専門職を具体的な職種に限っておらず、非常に専門的な知識を論理的、および実用的に応用することが必要な職、さらに通常、学士号以上の学位を必要とする職と定義している。
  4. 申請者の学士号、または実務経験と職務内容が関連していること。
  5. 免許が必要な専門職の場合、申請者は免許を取得していること。
  6. 在米企業は、申請者に対し最低給与額を保証すること。最低給与額とは、外国人労働者が就労する地域で、同職に従事している労働者に支給されている平均給与額、またはスポンサー企業で外国人労働者と同程度の学歴や経験を持ち、同職に就いている従業員に支給されている給与額のどちらか高い方のことを指す。

就職活動を始める前に
移民法に関する情報が簡単に入手できるようになってからも、「アメリカの大学で学士号を取得し、自分をスポンサーしてくれる雇用主がいれば、それだけで簡単にビザが取れる」と勘違いしているケースが後を絶たない。しかし、実際には前述のような厳しい申請基準をすべて満たす必要がある。例えばよく問題になることの1つは、専攻と職種の不一致だ。その他によく問題になることとしては、学位を必要としていない職種であったり、給与額が非常に低いといったことなどが挙げられる。

H-1B 申請条件を満たさない場合の具体例
A) 専攻が教育学なのに、役職がコンピュータ・アナリストだった 専門分野と役職の関連性を証明することができない
B) 業務管理専攻の学士号取得者なのに、内定をもらったのが一般事務)だった 一般事務職は学士号は必要ないので、H-1B ビザを申請することはできない
C) 専攻が会計学で、役職はファイナンシャル・アナリストだが、年収が2万ドルだった 最低給与額をはるかに下回るので、フルタイムで H-1B ビザを申請することはできない

こういった過ちを犯さないために、下記をきちんと把握しよう。そうすれば、就職活動でターゲットとなる企業や役職などが自然と限られて来るはずだ。
  1. 自分の学歴・経歴からどのようなビザが取得可能なのか
  2. そのビザの取得にはどのような条件をクリアしなければならないのか
  3. そのビザの取得にはどのような手続きが必要なのか
外国人を採用した経験の豊富な企業であれば、ビザ申請に必要な書類や手続きを把握しているだろうが、外国人を採用した経験がまったくない、あるいは少ない企業であれば、ビザ申請に関する知識は限られている。上記の1〜3をきちんと把握して説明することで、就職活動の際に雇用主に余計な不安を与えることなく、責任感のある人材だという良い印象を与えられるだろう。

なお、移民法は頻繁に改正されるため、数年前や数ヶ月前とは事情が異なる可能性があることも理解しておこう。古い情報を知識として持つことは良いが、自分のケースへのアドバイスとして鵜呑みにするのは避けるようにしよう。


H-1Bビザ申請の手続き
H-1B ビザの申請は、米国労働局(US Department of Labor)、米国移民局(US Citizenship and Immigration Services)、国務省(米国大使館・領事館:US Department of State)の3つの政府機関が関与し、3段階で行われる。ここではそのステップを簡単に説明しよう。

ステップ1:労働局に労働条件申請証(LCA)を申請
外国人労働者の職名と職務内容をもとに職務コードを決定し、実質給与額と平均給与額を決定する。予定給与額と雇用条件を記載した LCA を労働局に提出する。現在はオンラインで申請するため、即時に労働条件申請証を取得できる。
※LCA:Labor Condition Application

ステップ2:移民局に H-1B ビザを申請
就労者の勤務地を管轄する移民局のサービス・センターに、必要書類を提出し、認可通知書を待つ。

ステップ3:国務省に入国査証を申請
認可通知書は、米国への入国許可が下りたことを意味するわけではない。外国人労働者が米国に再入国する場合、改めてアメリカ大使館・領事館(日本、カナダなど)にパスポートへのビザ発給申請を行う必要がある。


H-1B ビザの最大の難点:年間発給枠
申請基準はあくまでも前提条件であって、「これさえ揃っていれば誰でも H-1B ビザが取得できる」というわけではない。なぜなら、H-1B ビザは年間発給数に上限があるからだ。米国移民局の会計年度である10月1日から翌年9月30日までの1年間に発給できる H-1B ビザの数は6万5千件のみ。つまり、アメリカでの就労を希望して申請されたケースの中から、実際に就労できる人は6万5千人しかいないのだ。さらに、そのうち6,800件は貿易協定によりチリとシンガポール国籍保持者に優先的に割り当てられるため、日本人が含まれる一般枠は実質5万8,200件。この他に、米国で修士号、あるいはそれ以上の学位を取得した者用に2万件の特別枠が設けられている。申請は先着順なので、申請開始日の4月1日に申請できるよう、雇用先が決まり次第、雇用主に早く準備してもらうことが重要だ。なお、就労ビザは求職者が申請するものではなく、「この人を雇いたい」という雇用主が移民法専門弁護士と相談して申請するもの。これを、「企業がビザをスポンサーしてくれる」と言う。申請には時間も労力も金銭もかかるので、それだけのことをしても自分を必要としてくれる雇用主を見つけることが大切だ。

年間発給数 6万5千件
チリとシンガポール国籍保持者用 6,800件
一般枠 5万8,200件
修士号・特別枠 2万件


2005年の H-1B ビザ発給状況
2006年11月に出版された最新の統計によると、2005会計年度(2004年10月1日〜2005年9月30日)において人種ではインド人が圧倒的に多く、全体の約40%を占めており、中国、カナダ、フィリピン、韓国、イギリス、日本、台湾と続く。人種の順位は毎年入れ替わるが、日本人は全体の2〜3%。役職ではコンピュータ関連が1位で全体の約40%を占め、それに続いて、教職(大学教授を含む)、会計、エンジニア、医療関係などと続く。また、25〜34歳が全体の65%を占める。


H-1B ビザ保持者の米国滞在期間
H-1B ビザ保持者の米国滞在期間は3年。延長は3年で、合計6年まで滞在することができる。しかし、労働認定証(レイバー・サティフィケーション)、または移民ビザ申請を開始してからすでに365日以上経過している場合は、 H-1Bビザ保持者の6年以降のステータスを1年づつ延長できる。また、すでにI-140雇用ベース移民ビザ申請が認可されている場合は、現在のようにPriority Date(永住権申請における優先順位)が現行でない場合にかぎり3年づつ延長できる。


情報提供: 琴河・五十畑法律事務所

(掲載日:2008年5月1日)
 
 

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