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座談会
 
他の都市との比較

【ジャングルシティ】 田村さんのインタビューでは、「ニューヨークに来なくちゃ」とニューヨークの友人に言われるということでしたが。

【田村】 ええ、シアトルでもある程度のところまではできると思います。でも、自分の作品が限界に達した時に新しいインスピレーションや空気を入れるには、複雑なネットワークがすでにあるニューヨークなどに行く、と。つまり、ニューヨークは人の出入りが激しいので、新しい情報を入手しやすく、自分が動かなくても他から膨大な情報が入ってくるということなんです。ですからある程度まではこもってでもできますが、リジェネレーションのスピードがだんだん落ちてくると、「喝を入れにニューヨークに行かなきゃ」という感じになります。シアトルは風景にも人間関係にも温かみがあります。だからその中でホッとできる空間があるということは、私にとっては落ち着いてしまいがちになるんです。

【市川】 ニューヨークに住むとなったらやっぱり大変だよね。

【田村】 私は住んだことがないのでなんとも言えないんですけど、向こうはみんなとんがってるから。この間、日本に行った時にミュージシャンと話をしてたんですが、彼らが「やっぱり地方都市じゃなくて、東京に来ないとね」って言うのと同じだと思うんですよ。それぞれのエリアでもそういう関係ってありますよね。ワシントン州内だったら「シアトルに来ないと」って言われるし、中心っていうのは避けられない。

【恒岡】 僕は独立する前にニューヨークのイラストレーターと連絡を取って、「やはり、ニューヨークに行かないとだめですかね」って聞いたら、「やっぱりそうです」と言われたんですよ。でもインターネットのおかげで、わりと仕事はあるんです。ただインスピレーションを受けるといった意味ではそういうところに行かないといけないと思うんですけど、思っていたよりもインターネットの力が大きくて、独立前に言われたほどでもないですね。仕事がなくなったら本気でニューヨークに行こうと思ってたんですが、この状況ならまだいいかなと。できることならここにずっといたいんですが。

【粥川】 私は最初はシアトルと日本を行き来して、シアトルに住もうと思ってたわけじゃなくて、日本から絵をこっちに送って・・・と、これはインターネットのおかげですね。私は北海道の田舎で育ったというのもありますが、田舎が好きなんです(笑)。ポップ・アートの場合は、ギャラリー同士がインターネットでかなりリサーチしあっていて、「このアーティストがこの町でショーをやるのはこのギャラリーです」という暗黙の了解ができるので、早い者勝ちみたいになっているところがあります。さらに、今、ポップ・アートでは日本のアーティストが注目されていますよね。ここ数年で日本のアーティストに影響を受けたアメリカ人アーティストも増えていて、ギャラリーも日本人のいいアーティストの獲得に積極的です。ですから、ある意味、田舎に住んでいたとしても仕事はできるんじゃないかなと思ってます。私が都会は苦手だからっていうのもあるかもしれないけど。それに、都会よりもテレビとか身近なものから受けたりしているんです。そもそも日本だと東京から全部発信というところもありますが、東京は都会過ぎて好きではないですし、めまいがします(笑)。

【田村】 地方と中心というコンセプトですが、ニューヨークの友人には、日本で例えば大阪のミュージシャンが「大阪だって東京に負けへんで!」と言い、東京のミュージシャンが「じゃあ東京に来てやってみろ」という、都市同士で張り合うという感覚ではなくて、「地方に住むなら地域に貢献するという自覚を持って活動をすることに注意を向けたら」と言われたんです。「この地域の人間で、この地域でやっていくんだ、全世界に発信したいというならニューヨークに来なさい」と。シアトルはやはりニューヨークやロスを意識しているところがあるんですよね。でもそれは前からずっと続いているノースウェストの態度だと思います。

【市川】 シアトルはそれなりに個性がありますよね。だからロスのようにはならないし、ニューヨークにもならない。この座談会に参加できなかった中村さんはシアトルを拠点に発信していくというものすごくはっきりした考えがある人だった。私は1ヶ月前にニューヨークに行って友達のアーティストと会ってスタジオに行ったりとか一緒にギャラリーまわりをしたんですが、どの町でもやってることは同じだと思うんですよ。でも、大都市なら見に来る人は多いから、可能性もチャンスも多い、というところが違う。

【恒岡】 ニューヨークはギャラリーの敷居が高いとは感じませんか?他の都市ではわからないんですが、シアトルは僕のような新しい人にもオープンです。ニューヨークは数が多いけれど、入りにくいといった印象があるんですが。

【市川】 どうなんだろう。私の会った友達のほとんどは、すでにニューヨークに友達とかがいて、ニューヨークの大学を卒業してそのままスタジオをみんなで持って作品を発表してるというパターンなので、そういう意味では外から入っていくのは誰かしら知っていないと難しいかも。ギャラリーの数は比較にならないほど多いですけどね。

【田村】 私の印象では、若手で無名の作家の作品を買う人が多いので、チャンスをつかみやすいとは思いますね。でもイメージとしてはやっぱりグループに入る苦労があるのかもしれない。

【市川】 日本に帰ろうと思う人っています?

(全員が首を横に振る)

【市川】 こっちの方が作家としてやりやすい?

(全員が首をうなずく)

【恒岡】 こっちの方がやりやすい気がします。でも・・・仕事抜きにしたら、日本に帰りたいですね(笑)。

(全員が笑って、口々に「わかる、わかる!」と言う)

【市川】 日本は若手アーティストが育たないようにしているような気がしますよ。一生懸命にお金を貯めて、年に1回か2年に1回の個展を自己負担で開催して、売れても売れなくても、見せることが嬉しいといった感じ。とにかく見せたいだけ。それでも何十年もやっていても、なんかツライなあと。

【市川】 こっちの方が作家としてやりやすい?

【粥川】 そうですよね、日本では「絵描きはいつまでも貧乏!」みたいな、そんな感じにされてます。「絵を描いてても生活していけないでしょ?」といった固定観念まであるし。

【黄田】 日本だと、アーティスト自身が営業もしないといけませんよね。こちらだとギャラリーは「作品を売ります」という覚悟があって、アーティストをせっせとPRしてくれます。ですからアーティストが作品に集中できていいんですよね。

【粥川】 他の国のことは知らないけど、「お金をもらえなくてもいいの!」という精神って日本だけですか?やっとインターネットが発達して、絵で食べていける人が増える時代が来たような気がするんですよね。それできっと日本の作家が「アメリカなら食べていける」と、アメリカに流れてくるのかなと思いました。

【ジャングルシティ】 ではシアトルのアートの未来は明るいということでしょうか?

【恒岡】 今聞いた日本よりは明るそうですよ。

(全員が笑う)

【市川】 日本のアート・シーンも変わってくれたらいいんですけどね。

【黄田】 日本にはたくさんのアーティストがいるのに、チャンスがなかなかめぐってこない。もったいないですよね。日本に帰ってギャラリー・ウォークをすると、そう思います。そういう意味で、ここで作品を作ることができるチャンスをいかすことができるのはありがたいです。

ありがとうございました。


シアトルのアート・シーンの今と昔
ポートフォリオを見せ合う
シアトルのアート・シーンの変化
他の都市との比較
 
 

ガラス、ピルチャック、チフーリが
シアトルの接点

市川 江津子

絵を描くということが
今も昔も一番大好きなこと

粥川 由美子

シアトルはガラス作家にとって
情報が入りやすい場所

黄田 正美

将来はろくろのある
陶芸スタジオを作りたい

神 里美

個人ではできないスケールで
いろいろな人と関わって仕事をしたい

田村 麻紀

今の状態に満足せず
昨日よりもいいものを作る努力を

恒岡 淳一

シアトルを拠点に、日本も含めて
国際的なプロジェクトを手がけたい

中村 由紀

死ぬまでに自分の作品に出会うために
絵を続けている

山本 純子

日本人若手アーティスト6人が
シアトルのアート・シーンについて語る

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