
約4万年前にできたとされるマウント・セント・へレンズは、カスケード山脈の火山の中では火山活動が最も活発な火山。1980年5月18日の大爆発は、世界史の面から見ると例外というほどの規模的ではなかったものの、米国本土での噴火では1914年にラッセン・ピークが爆発して以来だったことから、大きな注目を浴びた。それまで、マウント・セント・へレンズは、「アメリカの富士山」(Fujiyama
of America)として知られていたが、この噴火後、その優美な姿は見る影もなくなっている。しかし、ジョンストン観測所の少し手前にあるルーウィット・ビュー・ポイント(見晴台)から観測所までの短いトレイル(約1マイル)の両側に草や花が生えている様子は、自然の偉大さを感じさせてくれる。噴火前の美しい風景が完全に戻るには何百年もかかるかもしれないが。
ネイティブ・アメリカンはこの山を "Louwala-Clough"(smoking mountain)と呼んでいたが、ここでもまたイギリス海軍の探検家ジョージ・バンクーバー船長が1972年にマウント・セント・へレンズと名づけたのが、現在も使われている。セント・へレンズというのは、当時イギリス大使としてスペインに派遣されていた同船長の友人セント・へレンズ男爵、アイレン・フィッツハーバートにちなんだもの。同船長はその他にも、ベーカー、フッド、レーニエに、イギリス海軍の軍人の名前をつけている。
米国地質調査所によると、マウント・セント・へレンズはカスケード山脈にある他の火山と同じく、溶岩や火山灰などの火山噴出物が左右対称の円錐状に何層にも重なってできたいわゆる成層火山(stratovolcano)で、噴火が大規模になる傾向がある。ハワイに見られる傾斜が緩やかな盾状火山(shield
volcano)は、一般的に噴火が爆発的ではなく、活発な火道(vent)から液状の溶岩が長い距離を流れるという、ワシントン州の火山とは特徴が異なっている。
噴火時刻: 1980年5月18日(日)午前8時32分 この大噴火が起きる2ヶ月前から付近では地震が1万回以上、蒸気の噴出が100回以上も発生し、北側の側面が80メートル以上も外側にせり出すなどの大きな変化が確認されていた。そしてついに5月18日、リヒタースケールでマグニチュード5.1の地震が発生したのを受け、大噴火が発生。上部約1,300フィート(約400メートル)が吹き飛び、北側斜面が有史以後最大規模という地滑りを起こし、数分後には火山灰が上空約6万フィート(約19キロ)まで噴出、5億4千万トンの火山灰が風に乗って米国西部5万7千平方キロまで運ばれたことが確認されている。また、噴火は9時間にわたって続き、ガス・蒸気・岩屑が時速1,100キロの速度で流れ、頂上周辺の雪や氷は溶けて川になり、周辺230平方マイルの森林が壊滅状態になった。鉄道・高速道路・建物・橋などが大きな被害を受け、死者の数は57人と確認されている。1982年には調査・レクリエーション・教育を目的に火山国定公園(National
Volcanic Monument)に指定され、その園内は手付かずとなっている。
1980年以後は火山活動はおさまっていたが、2004年9月に再び小規模の地震が繰り返し起きるようになり、10月1日には水蒸気や火山灰が噴出し、翌日にはより規模の大きな爆発が発生。警戒レベルは最大の3に引き上げられ、避難命令が出された。10月6日には警戒レベルは引き下げられたが、10月11日には地表近くにまで上昇したマグマが1980年の大噴火で形成された溶岩ドーム(lava
dome)のすぐ南側に新たな溶岩ドームを形成しつづある。翌2005年3月8日には噴煙が20〜30分ほどにわたって立ち昇り、マグニチュード2.5の地震が観測されるなど、活動が活発になった。しかし、ほとんどの噴火はガスによって引き起こされると見られており、現在は溶岩に含まれるガスが少量であることから、噴火が起きる可能性は低いと見られている。2006年7月18日午前にはマグニチュード3.6の地震が起きているが、2006年7月21日には登山が解禁となり、現在は1日100人までが登山を許されている。
●ハイキング
●登山 火山活動が再開したと見られる2004年9月から登山は禁止されていたが、2006年7月21日に解禁となった。登山をするには、マウント・セント・へレンズ・インスティチュート(Mount
St Helens Institute)からオンラインで許可証を事前に購入する必要がある。5月15日〜10月31日の間は、1日に先着100名のみ。登山道は標高8,365フィートの火口縁(crater
rim)まで片道5マイル。登山口との標高差は4,500フィート。所要時間は平均7〜12時間。火口に入ることは厳重に禁止されている。許可証は登山の前日、または当日の到着時に
Jack’s Restaurant & Store (州道503号線沿い・I-5 の Woodland から東へ23マイル)で受け取ること。また、登山開始前には同店の外にある登録用紙に記入すること。
■Jack's Restaurant & Store 13411 Lewis River Road,
Ariel, WA 98603 >> Map
Phone: (360) 231-4276 営業時間: 月〜金 6am-9pm; 土・日 6am-10pm ■マウント・セント・へレンズ・インスティチュート
| ・ | 4月1日〜10月31日のみ |
| ・ | オンラインでのみ購入可 |
| ・ | 登山日の午前零時から24時間有効 |
| ・ | 団体は12名まで |
| ・ | 許可証1枚22ドル(許可証15ドル+サービス料7ドル) |
| ・ | 許可証購入後に登山が禁止された場合、許可証費15ドルは返金されるが、7ドルのサービス料は返金不可 |
| ・ | 質問受付:
Phone (360) 449-7861 | 
| ■ | ジョンストン・リッジ観測所
マウント・セント・へレンズから約5マイル離れた地点にある観測所。噴火に関する展示や、マウント・セント・へレンズの北側側面の全景を見ることができる。また、劇場では噴火に関する映画も見ることができる(上映時間16分)。施設の内外の立ち入りには入場料がかかる(大人$3;
子供 0-15歳は無料)。入場が有料となっている他の観測所にも行く場合は$6。詳細は米国地質調査所の公式サイトで。 |
| ■ | ウェアハウザー・フォレスト・ラーニング・センター(Weyerhaeuser
Forest Learning Center) 木についてさまざまなことを学べる学習施設。劇場ではセント・へレンズの噴火についてのドキュメンタリー
『The Eruption』 を繰り返し上映している。施設横にはエルクを見ることが出来る見晴台がある。開館時間は5〜10月の毎日10am-6pm。入場無料。詳細はウェアハウザー社の公式サイトで。 |
| ■ | スピリット湖(Spirit
Lake) かつては森林に囲まれていたスピリット湖は、1980年の大噴火で大きな影響を受けた。大噴火で噴出された火山堆積物でノース・フォーク・タートル・リバーとの接点がブロックされ、周囲の森林は壊滅状態となった。今でも吹き飛ばされたり、解けた雪や氷などで流されてきた木々が湖面や湖岸に投げ出されている。しかし、雨などで湖水のレベルが上昇して火山堆積物によるダムが崩壊しそうになったため、1982年には
US Army Corps がノース・フォーク・タートル・リバーとの新しい接点を設置し、水が流れるようになった。詳細は米国地質調査所の公式サイトで。 |
| ■ | ホフスタッド・ブラフ・ビジター・センター(Hoffstadt
Bluffs Visitor Center) ガラス製品の制作過程を見ることができる。マウント・セント・へレンズ周辺を空から眺めるヘリコプター・ツアーはここから出発している。ギフトショップでは、マウント・セント・へレンズの噴火でできた岩粉(rock
dust)を使って作られた石、マウント・セント・へレンズ・エメラルドも販売している。レストランではフィッシュ&チップスやハンバーガー、サラダ、チャウダー、アイスクリームなどアメリカの定番軽食が食べられる。詳細は公式サイトで。 |
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エメラルド マウント・セント・へレンズの噴火でできた岩粉(rock dust)を使って作られた石。イヤリング・ネックレス・ブレスレットなどさまざまな商品が作られている。
灰入りのオーナメント ワシントン州産のさまざまな商品を販売している Made In Washington では、マウント・セント・へレンズの火山灰を入れた手作りのガラスのオーナメントを販売している。Made
In Washington の詳細はこちら。 |
写真 © Jason Racey
行き方: シアトルからは I-5 を南下し、Exit 49でハイウェイ504号線(Spirit Lake Memorial Highway)で東へ向かう。このハイウェイが約50マイル先で終わる地点がジョンストン観測所になっている。詳しい地図はこちら。
観光のベスト・シーズン: 国立公園は年中オープンしているが、観光に最適な季節は通常7月中旬〜9月上旬。マウント・レーニエと一緒に訪れるのもよいが、運転する距離は短くても実際には2時間かかることもある。十分に計画してから出かけよう。
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