
午前6時30分: 午前6時30分に起きたときは船内はとても静かだった。ナナイモ沖にすでに到着し、碇を下ろしているらしい。着替えてキャビンから出て6階まで降り、甲板に出てみると、遠目にも木々が茂っているのがわかる陸と島が見えた。
バンクーバー島最大の都市ビクトリアの北111キロ(約70マイル)にあるナナイモは、人口7万8,271人の都市。もともとはカナダの先住民が村を作っていたところで、その名前はコースト・サリッシュ語の
"Sney-ny-mo"(the meeting place)から来ている。1874年にカナダに併合されたナナイモはブリティッシュ・コロンビアでは3番目に古い都市。石炭鉱業によって成長し、現在は観光・港湾産業などがその経済を支えている。歴史的建造物もたくさんあり、1日は歩いて見て周ることができそうだ。ゴルフが好きならゴルフ場だって北へ約5キロ(約3マイル)のところにある。
ワイヤレスでインターネットにアクセスするべく、同じく6階のランデブー・スクエアに来てみるが、ホットスポットがあるはずなのになぜかアクセスができない。シグナルはあるのだが弱すぎるようだ。早朝は私と同じく、ラップトップを持ってうろうろしている(シグナルの強いところを探しているのだろう)人や、タイプしている人がちらほら。
午前7時42分: 日の出。数分前からカメラを構えていたので、きれいな日の出を撮影することができた。
午前8時30分: 友人
K もすっかり回復し、「今日はビッグ・ブレックファストを食べよう!」と、ブレックファスト・ビュッフェに向かう。今日のメニューは作りたてのオムレツ(こちらが選んだ具で作ってくれる)、クロワッサン、ベーコン、フルーツ各種、ヨーグルト、オレンジジュース。普段は食べないベーコンを3枚も食べてしまった。とにかくいろいろな食べ物が用意されているクルーズは、用意されていればあれもこれもと食べてしまう私のような人にはキケンだ。しかし、それと同時に自分では用意ができないほどのフルーツやジュース、オートミール、シリアル、牛乳、カロリー低めのパンもあるので、ヘルシーな食事を徹底することもできる・・・。とは言え、やはり私は「普段は食べないカロリー高めの食事」に満足感いっぱい。食後は太陽が降り注ぐデッキを歩いて、少し運動をする。
午前9時30分: ナナイモの港周辺の海は浅く、大型の客船は港に船を付けることができないので、客船からは30人乗りのボートで港へ向かわなければならない(tender
service)。6階のセレブリティ・シアターで整理券(tender ticket)をもらうが、すぐに順番が来てボートに乗り込んだ。
ものの10分程で港に到着。クルーズ・カードとパスポートをちらりと見せるだけで上陸できた。今日のナナイモは快晴で、最高気温は20度。小さなウォーターフロントはかわいらしく、地元の学校のブラスバンドがにぎやかな音楽で出迎えてくれた。小さなみやげ物店が並び、コーヒースタンドにはあっという間に行列ができている。
私と友人
K は、ファーマーズ・マーケットへ行ってみる。「ナナイモのことなら何でも聞いてください」というような文章がプリントされた黄色い T シャツを着た、親切そうな地元の人たちが、クルーズ客など観光客の質問に答えるためにあちこちを歩いている。その中に、子馬を連れている女性がいた。「これは馬なの?」と興奮気味の友人
K は動物好きだそうで、子馬とツーショットに収まった。飼い主の女性は「夫が犬を飼っちゃいけないっていうもんだから、馬にしたのよ。馬は飼っちゃいけないとは言わなかったからね」と笑っていた。
しばらく歩いてバスチョン・スクエアやアート・ディストリクトなどを見て、ショッピング・センターをチェックし、今日のエクスカーションに参加するため、再びウォーターフロントへ戻る。
午前11時30分: ウォーターフロントは各種ツアーの集合場所となっている。私たちが参加するのは、"Cowichan
Valley Wine Tour"(カウチン・バレー・ワイン・ツアー)。肥沃な土地が広がる低地、カウチン・バレーはバンクーバー島のワイン造りの中心地で、ワイナリーが点在している。今回はそのうちの2ヶ所を訪れるという、4時間もかかるツアーだ。参加者は約40人。
歩いて大型バスまで行き、それぞれ好き勝手に座る。最初に訪れるワイナリーは、ナナイモから約50分のチェリーポイント・ヴィンヤードだそう。窓の外に見える山並みは緑に覆われているが、そこかしこが紅葉しており、秋を感じさせる。途中でガイドがワイナリーの説明などをしてくれた。
午後12時30分: チェリーポイント・ヴィンヤードに到着。このワイナリーは先住民カウチン族が最初の経営者から購入したもので、駐車場の正面にあるギフトショップも、その向こうにあるイベント会場も、カウチン族伝統のログハウスだそうだ。
まず、ガイドのトムさんに連れられて、全員でブドウ畑に入る。葉っぱが黄色く紅葉した葡萄の木が遠くまで続くブドウ畑は既に収穫が終わっており、木には葡萄は残っていない。トムさんが葡萄の木の成長や栽培方法などについて熱心に話してくれ、参加者も自由に質問することができる。次はワインが製造される建物へ。ここでの見所は、ソレラ・ルーム(Solera
Room)と呼ばれる貯蔵場。樽の上にはコースト・サリッシュのアーティストが手がけたお面が飾られている。ソレラ方式とは、醸造年度が異なるワインをブレンドして品質を安定させる方法の1つだそう。たとえば、樽で熟成しているワインを一部だけ抜いたら、抜いた分量と同量の新しいワインを足していくそうで、このワイナリーではブラックベリー・ポートの製造に使われている(残念ながら、これは今回テイスティングのリストに含まれていない)。
ひとしきり説明を受けたあとは、イベント会場に戻ってテイスティングをする。まずは、フルーティーな味わいのピノ・グリ(2004年)。これはノースウェスト・ワイン・サミットで銀メダルを受賞したもので、人気が高い。次はオルテガ(2004年)。少し甘みがあるが、「フルーティーな中に少しスパイスの効いた味で、シーフードとあう」と書いてあるので、これまたカウチン族伝統の焼き方で作られたというスモークサーモンを、クリームチーズをつけたクラッカーといただく。うまい。友人
K も「このしっとりした食感が最高!」と、すぐに2つ目に手を出している。あちこちから手が伸びて、サーモンは瞬く間になくなってしまた。私も合計5つは食べただろうか。なにせランチが出ないことを計算に入れていなかったので、午前中にあんなにたくさん朝食を食べたにも関わらず、もう空腹感に襲われ始めていたから仕方がない。そして、今年のノースウェスト・ワイン・サミットで金賞を受賞したというピノ・ノワール(2004年)、さらにアグリア(2002年)をテイスティング。私自身は赤ワインは苦手なのだが、友人
K はじっくり味わっているようだ。個人的には今年のカナダ・ワイン・チャンピオンシップで最優秀賞を受賞したという Gewurztraminer(ゲヴェルツトラミネール)を試したかったが、売り切れということでお目にかかれなかった。
出発前にギフトショップをチェックしてみる。商品数はあまり多くない。絶品のスモークサーモンは、ものすごく小さなパックしかなかったので、買うのをやめた。
午後2時: 次は、少しナナイモ寄りにあるゴッドフリー・ブラウネル・ヴィンヤードへ。ここでは屋外で4種類のワインをテイスティングするそうだ。ハイウェイ1号線から西へ西へとどんどん内陸に入っていく。こんなところにワイナリーがあるのだろうかと思わせられるような住宅地を通るが、約15分後にその入り口に到着した。
一軒家を改造したような風情は、ヤキマのキオナというワイナリーを思い出させるが、ここは農場もやっているので、土地面積は12エーカーもあるという。屋外に設置されたテーブルと椅子にそれぞれ自由にすわり、オーナーによるワインの説明を聞く。フレンチ・オークで熟成されているというこのワイナリーでは、ピノ・グリ、シャルドネ、バッカス、ピノ・ノワール、マーシャルフォッシュなどが人気だそうだ。しかし、最初にテイスティングしたピノ・グリとシャルドネは気の抜けたドリンクのような味で口にあわず、一口でやめた。この頃になると、それほどアルコールに強くない私と友人
K は少ししか飲めない。とは言え、せっかくお金を払って参加しているのだからと、用意されたチキンのグリルとサラダ、スモークサーモンを食べてみる。しかし、最初に訪れたチェリーポイント・ヴィンヤードがワインもスモークサーモンも私と友人
K にとってはとてもおいしかったため、このワイナリーには少々がっかりしてしまった。それでも友人 K は最後のベリーのワインはおいしいと言って最後まで飲んでいる。
帰り道のバスの中では、どちらのワイナリーが良かったかという話があちこちでなされていたが、「2番目のワイナリーは1番目と比べてそれほどよくなかった」とガイドに指摘する、ワイン通のようなカップルがいた。「2番目のワイナリーの白ワインは特に酸化しきっていた」というのがその理由のようだ。
午後4時30分: ウォーターフロントへ戻り、クルーズカードとパスポートを見せて、客船まで連れて行ってくれるボートに乗り込む。午後5時にナナイモを出発するため、午後4時45分には客船に戻っていないといけないからだ。どんどん客船に近づいていくが、なんだか我が家に戻ってきた気分だ。昼食はスナックだけだったのでそのまま最上階のプールサイドへ行き、作りたてのハンバーガーを友人K
と半分ずつ食べる。なかなかボリュームがあって、意外においしい。ここでは他にフレンチフライとホットドッグがある。
午後6時: マンハッタンレストランでのディナーへ。毎回同じテーブルにつくはずだが、今日初めて会う顔ぶれがいる。どの人もクルーズ経験者で、これまで乗ったクルーズの話に花が咲く。今日はメインディッシュにダックの入ったパスタを選んだ。夫が脂っこいダックは好きではないので普段はなかなか食べる機会がないから・・・という普段の生活が出ている選択だが、パスタはちゃんとアルデンテ。ダックの風味たっぷりで、かなり気に入った。
今回乗っている客船マーキュリーは7万トン級なので、9万トン級以上の客船が航行している今では「小さめ」である。セレブリティ・クルーズが所有する9万トン級の客船でクルーズを楽しんだという夫婦は、暑いカリブ海を航行する船の上でアイススケートやロッククライミングをしたそうで、「クルーズのいいところは船を降りなくても一通りのものが揃っていることで、地上では体験できないサービスを受けられることだよ」と、再び熱く語ってくれた。
確かにサービスについては私も大いに同意するところがある。このクルーズでは世界50カ国で採用された900人の職員が働いているそうだが、とにかくとても親切で、決められた以上のことをやってくれる。たとえば私たちがナナイモの町へ行くためにジャケットを着てキャビンから出てきた時、それを見た掃除係の男性が
"Have a great time outside!" と、手を振りながら言ってくれた。これがもし日本のいいホテルだったら、「行ってらっしゃいませ」と、足を揃えてお辞儀をされるだろうから、そんな日本流のサービスを日本国外で日本人以外の人に期待するなら期待はずれに終わるだろうが、このフレンドリーさと、ジャケットを着ているから外へ行くのだと判断して挨拶をしてくれたということに驚かされるのである。このマンハッタン・レストランでこうしてコース料理を食べる時にサーブしてくれる担当者のウェイター、アレグザンダーにも脱帽だ。言われる前に気づいて対応するという
"至れり尽くせりのサービス" を実践し、それもうわべだけでなく、優しさまで感じさせてくれる。いったいどうしたらこんなサービスができるようになるのか、その教育現場を見てみたいものだと、テーブルにいた全員が感心するほどだ。私の隣のすわった男性は、"They
really do go out of their way to help you. And, they are happy to do that." と言い、その奥さんも、"They
treat you like a king or a queen." と、感心するようにため息をついた。
午後9時: 今日は
『And The Winner Is...』 という、歌と踊りのショーなのだが、その前に、クルーズで働くたくさんの職員を舞台に呼んで、乗客がそのすばらしさを称えるというイベントが開催された。この時、職員たちは
"セレブリティ・ファミリー" と呼ばれ、キャプテン(船長)はもちろん、乗客と直接コミュニケーションをする機会のあるサーバー、そしてあまり目につかないが部屋をすばらしく清潔にしてくれる掃除係までが、盛り上げ役の司会者であるクルーズ・ディレクター、ドリュー・パブロフ氏の音頭で次々に舞台に上がっていく。シアター内はほぼ満席で、乗客は拍手をし、最後はスタンディング・オベーションとなった。「すばらしい職員たちでしょう!彼らを家に連れて帰りたいですか?」というパブロフ氏の呼びかけに、あちこちから強い拍手と
"Yes!" といった叫び声があがる。ちょっとくさい演出だが、拍手を受ける職員たちは誇らしげで、とても素敵な笑顔をしている。私と友人 K
も「アレグザンダーを連れて帰りたい!」と盛り上がった。
午後11時45分: そして、いよいよ "La Grand
Buffet"。これはどのクルーズでも開催されるものだそうで、「とにかく、すごいんだ。どうやってこれを海の上で作ったんだろうというようなものが出てくるよ」と、夕食の時に同席した人や友人
K から聞いたが、何なのかよくわからない。しかし、とにかくすごい食べ物が出ること、最初の30分は写真撮影だけで食べることはできないことは理解できた。なぜ真夜中にやるのかはわからないが、ゴージャスな食べ物を食べられるならいつでもいい・・・。
午後11時45分、マンハッタン・レストランの扉が開いた。ぞろぞろ入っていくと、いつもなら明るいレストランが、少し暗めのライトに照らされ、まったく様相が異なっている。クラシックの三重奏をバックに、司会の女性が「40人のシェフが48時間かけて完成させたこの食の祭典を、心ゆくまでお楽しみ下さい!」と、盛り上げている。そこには下からライトアップされた氷の彫刻が並び、チョコレートの楽譜やマジパンの動物たち、ハムなどで作られた竜、お菓子の家、パンでできた塔、果物でできた鳥など、色とりどりのアペタイザーやデザートが数百種類!いったいこれをどうやって、いつ作ったのだろう。"La
Grand Buffet" を過去に経験している友人 K も、「ほぅ〜」と口を半開きにして氷の彫刻を見上げている。ゆっくりと歩きながら、ほぼ全員がカメラを構えてパチパチ写真を撮影するのもおもしろい。しばらくするうちに、「食べるのがもったいない!」と同時に、「食べないともったいない!」という気持ちにさせられてしまった。あまりにも贅沢で、あまりにもたくさんあって、逆にこれを無駄にしてはいけない、と。
午前12時15分: 写真撮影の時間は30分で終了し、いったん全員がレストランの外に出されたが、午前12時15分に再びドアが開いた。今度は食べる番である。私はさすがにシーフードや砂糖漬けのものを食べる気分にはなれなかったので、無難そうなアペタイザーとパンばかりにしたが、友人
K はキャビアやシーフードのゼリーなどを堪能したようだ。隣の夫婦はクリームがたくさん乗ったケーキやマジパンの動物などを、パクパク食べている。これはバフェなので、好きなだけ食べていい。私はパンとチーズをしっかりお代わりしてしまった。また、こんな夜中になってもサービス精神旺盛なサーバーが水やドリンクを持ってきてくれるのはありがたい。
午前1時: 再び重くなった胃を抱えてキャビンへ戻る・・・。
1日目
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ナナイモの日の出。
 ボリュームたっぷりの朝食ビュッフェ。
 太陽の光が気持ちいい屋外デッキ。
 ナナイモ。予想以上に大きい。
 ボートに乗って岸へ向かう。
 ナナイモのウォーターフロント。
 バスに乗ってのエクスカーション。


 チェリーポイント・ヴィンヤードでのテイスティング。

 ゴッドフリー・ブラウネル・ヴィンヤードでのテイスティング。
 船に戻るボートから。
 ダックのブロスの風味たっぷりのパスタ。
 デザートのプチケーキ。
 クルーズで働く職員たちは、"セレブリティ・ファミリー"
と呼ばれる。


 ミッドナイトの
"Le Grand Buffet"。 |