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Seattle Waldorf School
2728 NE 100th Street
Seattle, WA 98125
Phone: (206) 524-5320
公式サイト
朝からクラス全員が校庭でなわとび。教室に戻ると教科書を手にする代わりに歌ったり輪になって踊ったり、椅子に座ると今度はリコーダーを取り出して大合奏。今日の授業は「Language(言語)」だったはずなのに…。
これがSeattle Waldorf School(以下、SWS)の通常の授業風景です。初めて同校の授業を見学した人は、子供たちが机に向かっているばかりではなく、室内をあちこち動き回る機会が多いことに驚かされるかもしれません。しかし、「ムーブメント」を取り入れたこの教授法こそ、同校の教育方針の根底をなすものなのです。
■生徒が教科書を「作る」
シアトル市中心部から北へ車でおよそ15分の閑静な一角にあるSWSは、1〜8年生まで各学年1クラスずつが設置され、全校生徒はおよそ200人。校舎の目と鼻の先には、付属幼稚園の建物も見えます。
1年生の生徒数は25人。科目は言語と算数の「メインレッスン」に加え、外国語も学びます。メインレッスンは、それぞれの教科を3週間連続で交互に実施し、授業時間は2時間。一方外国語は日本語、スペイン語の2カ国語で、卒業年次まで継続してカリキュラムに組まれています。昨年入学した1年生は、教員数の関係で日本語のみでしたが、基本的には日・スペイン語それぞれ45分間、週2回の授業です。
1年生の言語の授業は、基本となるアルファベット26文字の修得、さらに単語や熟語などを学習します。しかし授業では指定の教科書はなく、先生が1冊の童話本を元に進めていきます。1年生担任のJanet
Jewell先生が選んだ物語の内容は、動物や植物など自然界の動きを通して四季の移り変わりを描いたもの。先生が朗読する間、生徒達は熱心に耳を傾けていますが、誰も本は手にしていません。読み書き学習に入る前に、まず耳で言葉を覚える手法です。
話が一段落するとJewell先生は、ある歌の一節を少しだけ口にしました。すると、すぐに生徒達の歌声が続き、あっという間に教室内は大合唱。歌詞の中には、例えば「秋さん、おはよう。夏さん、お休み」というフレーズが出てきます。これで「夏」や「秋」といった単語だけでなく季節の順序を、歌を通して覚えていくのです。時には教室の後ろに全員が集まり、輪になって歌いながら手足を動かしたり、フォークダンスのように踊ったりします。
教室の壁には、Jewell先生自作の絵が貼りつけられています。アルファベットの「M」をかたどった山や、炎のように燃える「F」などユニークな絵ばかりですが、実はこれらは「お手本用」。机に戻った子供たちが一斉に広げた「メインレッスンブック」と呼ばれる大きなスケッチブックには、各自が模写した絵がずらりと並んでいました。もちろん色遣いや線の引き方、アルファベットの大きさまで十人十色ですが、その違いを尊重することが各人の個性を伸ばす有効な方法と、同校では重視しています。
元々は白紙のメインレッスンブック。その1枚1枚に描かれた絵や、アルファベットの書き方練習の成果は、後に復習用として利用できる教材となります。このようにSWSでは、子供たち自身が教科書を「作る」のです。
■五感を使って学習能力を高める
「リズムに合わせて歌ったり踊ったり、体全体を使うことが、学習能力の開発を促進するのです」と、Jewell先生。言語の授業でも、まず先生の朗読を生徒は耳で聞いて内容を把握し、続いて歌や動き、さらには楽器を使うなど、五感を通して理解を深め、書き取りは最後です。言葉を無理に暗記するのではなく、ストーリー、歌、音楽、ダンスなど様々なアプローチから学習を進めていくのです。「子供たちの想像力を豊かにしながら、言語能力を身につけていく、優れた教育方法です」とJewell先生は胸を張ります。
外国語の指導法も、メインレッスンと同じ。日本語クラスを受け持つ平田直樹先生は、歌や絵を使ってひとつひとつ言葉を教えていきます。
特に生徒達に人気なのが「じゃんけんゲーム」。平田先生の合図で各自が相手を見つけ「じゃんけん、ぽん」。5回勝ったら先生に報告し、早い順に先生から名前を発表されます。呼ばれた生徒は得意満面。じゃんけん以外にも、子供たちは「かごめかごめ」や「花いちもんめ」を教えられます。平田先生によると、これら「遊び」を通して日本の文化を紹介し、さらにはゲーム性を取り入れて授業にリズムを作り、生徒を飽きさせないことが目的とのこと。じゃんけんの最中、教室内は蜂の巣をつついたような大騒ぎになりますが、終われば各自机に戻って授業を聞く態勢を取ります。このようなアクティビティで、低学年のうちに「切り替え」をすることが身につくという効果も期待できるようです。
授業中の会話から歌の歌詞まで全て日本語ですが、時にはおずおずと「英語で質問してもいいですか」と先生に許可を求める姿も。しかし大半の時間、子供たちは臆することなく大きな声で日本語の発音にチャレンジしています。
■世界中に広がるシュタイナー教育
SWSの教育理念は、オーストリアの思想家Rudolf Steiner(1861−1925)が考案した、いわゆる「シュタイナー教育」が柱となっています。これは知識よりも子供の個性を伸ばすことに重点を置き、芸術や心の育成を中心に据えた教育法です。Steinerは1919年、最初のWaldorf
Schoolをドイツ・シュツットガルトに設立。以後ヨーロッパ各国で支持を集め、1928年にはニューヨークで北米第1号のWaldorf
Schoolが開校しました。今日では北米でおよそ100校がシュタイナー教育を実践、また日本をはじめ世界各国にも着々と浸透しています。
SWSには日本人生徒の姿も見られ、学校側としても今後さらに外国人を増やしていきたいと考えています。入学にあたっては面接を重視。定員が25人と決まっており、学年によっては在校生の「欠員」が出るまで待つ場合もあるとのこと。例年1、2月頃に生徒募集に関する問い合わせが増え、春に応募書類の受付を実施しています。
体全体を使って学び、自然に触れ合うことを奨励するシュタイナー教育。平田先生によると、特に低学年レベルでは時間をかけて学習能力の基礎を築くため、一般の公立校などと比べて緩やかなペースで授業を進めているとのことですが、進級するにつれ、逆にスピードが上がっていきます。このため、SWSにおける教育内容を完全に吸収するためには、8年間在籍し続けることが望ましい、とアドバイスしています。
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