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「『NOddIN』の新たな役割が見えてきた」 東京発フィルムメーカーコレクティブ 『NOddIN』 シアトル発表会レポート

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去る8月、原子力問題と日本政府の対策、憲法第9条を守ること、特定秘密保護法、集団自衛権、沖縄の米軍基地移転などさまざまな社会問題をテーマとして取り上げ、東京を拠点に活動しているフィルムメーカーコレクティブ 『NOddIN』(ノディン)の米国初の作品上映会とレセプションが、シアトルのキャピトル・ヒルで行われました。「『NOddIN』 が日本だけに留まっていたらもったいない」と、その実現に尽力した、シアトルを拠点に活動するアーティストで 『NOddIN』メンバーでもある市川江津子さんに、お話を伺いました。

NOddIN

Photo © Lincoln Potter

– 今回のイベントを企画した理由と、どういった結果を引き出したいとお考えでしたか?江津子さんご自身、そして『NOddIN』 の考えをお聞かせください。

企画をした何よりの理由は、『NOddIN』の存在、作品、さらにはその活動や哲学を、今まで焦点を当てていた日本という枠組みから飛び出し、アメリカで紹介し多くの方に知っていただきたいという思いからです。それぞれの作品に込められたメッセージは、日本人に限らず世界中の人々に通じるものだと信じていますし、『NOddIN』が取り組んでいる戦争や原発、そして世界平和をテーマにした作品群は、今、アメリカで発表することにとても大切な意味があると思いました。

アメリカに長年住んでいる私個人としては、一番ピッタリくる言葉は「もったいない」だったんです。『NOddIN』 が日本だけに留まっていたらもったいない、そんな思いが企画の根底にありました。2013年に第1回発表会が行われ、その後、数多くの映像作品やワークショップ、パフォーマンスなどが世の中に送り出されました。私は2014年の第2回発表会から参加しているのですが、その打ち上げで「『NOddIN』をアメリカに紹介するぞー!」と叫んでいたのを覚えています(笑)。それがやっと3年後に実現したわけです。

NOddIN

Photo © Lincoln Potter

– 参加者はどういった方だったのでしょうか?

今回 Northwest Film Forum で行った 『NOddIN』 のプログラムは二つありました。一つ目は上映前に2時間の枠組みで行われたプレゼンテーションとディスカッション、二つ目は3時間の枠組みで行われたメインの上映会、質疑応答、そしてレセプションです。最初のプログラムに参加してくださった方々は25名程度で、年齢層は20代後半から60代後半、大半が30~50代だったように思います。人種はさまざまでしたが、日本人、日系アメリカ人の割合が多かったように記憶しています。このプログラムに参加された方々は、日本の原発問題や政治動向、それに関わる社会性のあるアート(Socially Engaged Art)などにすでに興味を持っている方々、さらにはご自分で活動されている方がほとんどだったと思います。ワシントン大学の日本芸術研究や活動家のネットワークから来てくださった方もいましたし、映像作品だけではなく『NOddIN』の活動についてもっと深く知りたい方々が来てくださったように思います。

NOddIN

Photo © Lincoln Potter

メインの上映会の方は、概算で130人程度、本当にたくさんの方々がいらしてくださいました!皆さんに温かく迎えていただき、本当に 『NOddIN』 一同感激しました。117席のシネマが満席になり、階段まで立ち見でいっぱいになった会場をステージから見たときには、感謝で胸が熱くなりました。後で知ったのですが、チケットが完売して残念ながら入れなかった方もいらしたそうです。参加者の年齢層は前期のプログラムよりさらに幅が広がり、20代から70代、人種も多様化し、日本人、日系アメリカ人が多いという印象はなくなりました。ポートランドやバンクーバーなど遠方から駆けつけてくださった方もいらっしゃいました。

これは私の主観ですが、Northwest Film Forum のネットワークで映像作品に興味があり来てくださった方々と、日本関連の社会的アート、もしくは政治色のあるアート(socially engaged art / politically charged art)に注目しているコミュニティが良い感じで混ざっていたように思います。

NOddIN

Photo © Lincoln Potter

– 上映前後に参加者と日本から来られたメンバーが交流する企画がありましたが、参加者から投げかけられた質問の中でメンバーが想定していた内容、想定していなかった内容、今後の何かにつながりそうな気づきを得たことがあれば教えてください。

数々の質問をいただいた中で一番印象に残っているのは、タコマ在住の日本人フィルムメーカーの方からの質問で、「日本人の立場から見た作品作りだけでは片手落ちなのではないか、例えば過去の戦争を経て韓国人や台湾人が日本に対して抱いている思いなどを描くなど、違う側面からの視点で作品を作ることも必要ではないかと思うが、どうでしょう?」と、とても大切な投げかけをいただきました。

これはメンバー一同うなずくところがあり、また自分の言葉でしか語れない世界を伝えることの大切さと、自分の言葉だからこそある重み、そしてまったく違う方角から見つめるて作り伝えることができる力量と、両方必要と思います。

イベント終了後、日本から来たメンバーからの、「上映後のレセプションで、とにかく感謝された。そして、謝られた。それに対して僕も謝った」「『NOddIN』の新たな役割が見えてきた」「シアトルの皆さんに本当に温かく迎えていただいて感動した」といった感想が印象に残りました。

NOddIN

Northwest Film Forum の秘密のフィルムリールストレージで
ディレクターのコートニーを囲む、『Noddin』 のメンバーたち。
Photo © Lincoln Potter

– 今後のシアトルや日本での活動で、上映会以外で予定されていることはありますか?

Northwest Film Forum のエグゼクティブ・ディレクターのコートニー・シーハンが協力を申し出てくれ、今回シアトルで発表した『NOddIN』 のプログラムをアメリカの数都市でツアーしようという話が出ています。まだ具体的にはなっていませんが、実現するように思います。

『NOddIN』 チームが制作した 『戦争のつくりかた』 のビデオをより多くの方に見ていただきたいです!

– ありがとうございました。

NOddin
3.11(東日本大震災)によって価値観が覆され、映像の作り手として物の見方を変えなければという思いが、『NOddIN』 としての活動の原点。原子力問題と日本政府の対策、憲法第9条を守ること、特定秘密保護法、集団自衛権、沖縄の米軍基地移転などさまざまな社会問題をテーマとして取り上げ、2013年から日本国内で上映会やトークセッションなどを展開。現在、28人がメンバーとして活動しています。公式サイトはこちら

掲載:2017年9月

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