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フランス映画ファンはきっと、その一コマ一コマの芸術性はもちろん、哀しさや孤独や愛情といった感情の表現の繊細さや巧みさに心を奪われるのだと思います。『The Diving Bell and The Butterfly(邦題:潜水服は蝶の夢を見る; 原題:Le scaphandre et le papillon)』もそんなフランス映画の良さを存分に含んだ作品です。
溺れて意識を失い、目覚めたら眼球以外を動かせない、"locked-in syndrome"(閉じ込め症候群)になってしまっていたフランスの有名ファッション雑誌 『Elle』 の元編集者、ジャン・ドミニク・ボビー(Jean-Dominique Bauby)が、瞬きだけで書きあげた自伝を基に作られた映画です。喉から管がつながれ、口はゆがみ、話すこともできない、変わり果てた彼の姿に周囲は戸惑いを隠せません。それでもそれぞれの接し方で愛情を注ごうとする姿勢が、このテーマ特有の感動を誘います。特にジャンから女として何の愛情も注がれなかった妻の葛藤は自然に描かれており、だからこそ一層伝わって来るものがありました。ジャンが病床に就く前から公然と浮気をしていた女からの電話を取り次ぎ、話すことができないジャンの変わりに、彼がまだ浮気相手を愛していることを伝える妻の、あふれでそうな感情を抑えようとする表情に思わず嗚咽がもれてしまいました。話せなくても周囲の誰からも無視されることなく大事に扱われるジャンと、社会的には何の不自由もない妻が、その存在も気持ちもないもののように扱われる、皮肉なこの1シーンがスクリーンに映し出された瞬間、突発的に涙があふれ出て、こちらの胸まで痛いくらいに締め付けられるのを感じました。
重くなりがちなテーマですが、病床にあってもユーモラスな主人公のナレーションで軽快に物語は進みます。2007年カンヌ映画祭監督賞、高等技術賞受賞。アカデミー・インディペンデント・スピリット賞ノミネート作品。公開は11月30日から。(さ)
写真©Miramax Film
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