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シンフォニー便り
シンフォニー便り
       
  筆者紹介:蒲生彩子さん(がもう・あやこ)
シアトル・シンフォニー/第1バイオリニスト
4歳のころにバイオリンを習い始め、8歳で桐朋学園大学の音楽教室へ。桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学を経て、1998年にボストンのニュー・イングランド音楽院学士課程に編入。2001年に同音楽院を優等で卒業し、同年にジュリアード音楽院修士課程へ。2003年の卒業と同時にオレゴン・シンフォニーに第1バイオリニストとして入団。2005年にシアトル・シンフォニーに第1バイオリニストとして入団し、現在に至る。詳細は、2005年12月の 『ぶらぼおな人』 で。
   
       


第4回 : リハーサル

先月は数週間にわたってオペラの暗くて狭いオーケストラ・ピットで演奏していたのですが、やはりお客様に見えないところで弾くのと、ベナロヤ・ホールでのコンサートで弾くのとでは気の持ちようが違います。オペラでは回を重ねるごとに(全9公演)緊張感が無くなってしまったので、オペラ明け初めてのオーケストラのコンサートはいつも以上にエンジョイできました。

前回からコンサートに至るまでの過程を書いていますが、今月は主にリハーサル風景をお伝えしたいと思います。ここでは2月の第1週目にあったコンサートを例に、リハーサルの様子を順を追って説明していきます。

まず、プログラムの内容は「Weber: Overture to Oberon, Beethoven: Violin Concerto, Schumann: Symphony no.2」で、目玉となるのは2曲目に演奏されるコンチェルト。なぜなら、滅多に来ない有名なソリストによって演奏されるベートーベンのバイオリン協奏曲(3大バイオリン協奏曲の1つと言われる)を生で聴くことのできる滅多にない機会だからです。世界的に有名なソリスト達の演奏を日常的に聴くことができるのはオーケストラで弾く楽しみの1つでもあります。

リハーサルはコンサート初日の2日前から始まります。どの曲をいつ練習するか予定が組まれていて、まず第1日目午前は序曲とシューマンの交響曲。大概コンサートの1曲目は場を盛り上げる役目もあることから、10分足らずのエキサイティングな曲がよく取り上げられます。あまり重点が置かれない(他の曲に比べて)のでさっと通して問題点を直したり(リズムや音程が合わないなど)、指揮者の最低限希望するスタイルに応じて次の曲に進みます。しかし、今回の客演指揮者は音楽的に深く掘り下げ、細部まで妥協せずに要求してくるタイプで、例えば同じ音量一つとってもその表現の仕方やそれに伴う技術がいつもと勝手が違うので、それに応えられるようになるまで大分時間がかかりました。もっとオーケストラの器が大きければ、即行柔軟に要求に応じられるのでしょうけれど・・・。

そんなわけで1日目は予想以上に1曲目に時間を費やしたために交響曲はほぼ全曲さっと通したところで時間切れになってしまい、指揮者も計算外の進み具合に気分を損ねたのではないかと心配でした。そして、その心配は次の日には現実の物となりつつありました。

コンサート前日は午前と午後の計5時間で、交響曲とコンチェルトのリハーサル。午前中は前日の続きで交響曲の細部にもっぱら専念しました。指揮者の欲している音色や流れは指揮以外にも口頭や身振りで説明されて、それに応えることのできた時のオーケストラは良い響きをしていて自分達でも驚くほどでした。でも、油断するとすぐに指揮者の欲しい音からずれが生じて同じことを注意されるの繰り返しで、楽団員も段々フラストレーションが溜まってきたのには参りました。指揮者が爆発寸前まで何とか持ちこたえて午後はコンチェルトの合わせへ。

今回は、数年前に某有名コンクールで優勝して以来、着実にキャリアを築いている若手バイオリニストがゲストです。私がオレゴン交響楽団に在団していた時にも一度来たことがありましたが、その時はそれほど感動しなかったため、正直なところあまり期待をしていませんでした。でも、音合わせが始まってみると、自分の耳を疑ってしまいました。というのも、音色が全然違うのです。ホールのアコースティックが良いのも理由のうちでしょうが、それだけではないような気がして隣の人にそのことをそっと聞いてみたら、最近彼は楽器を変えたらしい(かの有名な名器、ストラディバリウス)とのこと。楽器が変わったことによって、音楽性がさらに成長したのは一目瞭然でした。久々にほれぼれする演奏を聴けて嬉しかったのは私だけではなかったようで、全楽章通し終えたところで楽団員の拍手が起こりました。基本的にベート-ベンのようなコンチェルトはソリストに耳を傾けていれば指揮者に頼らなくて済むように書かれているので、合わせること自体は難しくありません。ただ、例の指揮者のこと、初めにオーケストラのみの間奏部分などに大分時間を費やしたため、最終楽章は一度通しただけで時間切れになってしまいました。というわけで、詳細は次の日に(本番初日の朝)に持ち越されることに。

本番前の最後のリハーサルはドレス・リハーサルと呼ばれ、最終確認が主な目的なので、さっと全曲通して簡単に手直しをしてお終いというのが普通です。でも今回は、前日間に合わなかったコンチェルトの最終楽章に時間をかけ、序曲や交響曲もぎりぎりまで調整が続いたので、普段どおりのリハーサルになりました。ドレス・リハなのだからここまでする必要なし、との声もありましたが、妥協してコンサートを迎えるのは不安であり、気分の良いことではないので、私はこのようにやる気を起こさせてくれる指揮者が好きです。

さて、次回はコンサートの運びや舞台裏のささいなことについてお話します。


(2006年3月)



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第 9回 楽団員は指揮者を見ているか?
第 8回 オーディション(2)
第 7回 オーディション(1)
第 6回 楽器と飛行機
第 5回 コンサート当日
第 4回 リハーサル
第 3回 オーケストラが公演に至るまで
第 2回
第 1回 オーケストラの構成と配置
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