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ベンチャー企業奮闘記!
ベンチャー企業奮闘記!
       
  筆者紹介:大澤裕さん(おおさわ・ゆたか)
ピンポイント・マーケティング・ジャパン/代表
慶応義塾大学経済学部卒。米国バンカーストラスト銀行企業金融部勤務(企業米国進出支援業務)を経て、米国カーネギーメロン大学経営学大学院に留学し、MBA 取得。1997年に起業し、2000年にシアトルへ。詳細は、2003年7月の 『ぶらぼおな人』 で。
   
       


第7回:決裂

タイル・ビジネスの売却を決めてしばらくした頃、売却先候補との交渉の進捗状況を確認するために A 氏のオフィスを訪問しました。しかし、ミーティングは最初から妙な雰囲気で、売却に関する交渉の進展をこちらは聞きたいのに A 氏は黙ったまま腕組みしています。しばらくして書類の束を私に差し出しました。

見るとそれは、タイルの貼り付け工法に関するいくつもの米国特許の書類でした。ほとんどが日本の会社が出した特許で、我々の特許を真似たものばかりです。我々の特許を侵害することを避けようとするために全て不自然な工法になっています。

「調べてみたら類似特許がこんなに沢山あるじゃないか」と、A 氏。

「すべて我々の特許を見て追随した特許だろう。我々の特許が素晴らしいからこそ真似をした特許が出る。しかし我々が一番早く特許を取得しているし、基本原理は押さえている。こんなガラクタのような特許を気にする必要はないじゃないか」と私は答えました。

それでもA氏は「こんなだとは思わなかった」とか不満げにブツブツと言っています。私には妙な難癖を付けられているようにしか聞こえません。業を煮やした私は「一体、何が言いたいんだ?」と尋ねました。

意を決したように A 氏は「この特許の売却に協力できない」と一言。2人の間に沈黙が流れました。続いて「どうしても売却したいのなら俺に売れ」と1枚のエクセル・シートを机の上に滑らせました。そこには価格が簡単に書かれていました。今、思いつきで書いたようなメモのようなものでその数字は到底同意できるものではありませんでした。私はA氏のオフィスを黙って出ました。

A氏は米国市場向けの製品開発や英文マニュアル作りを担当しており、売却先候補との接触もしていました。その時点で彼なしで売却交渉を進めるのは非常に困難でした。彼がサボタージュすればどうしようもないのです。そういったことを十分に分かった上での行動に違いありません。相当に高額な給料や条件を与えてきた私にすれば本当に裏切られた気分でした。今でも思い出すと腹が立つのですが、当時は腹が捻じれるような感覚でした。

その後、A氏から手紙が送られてきました。我々の事業売却決断の経緯を非難し、自分の行動を正当化する内容のものでした。弁護士に手紙を見せて A 氏を訴えることも含めて相談しましたが「あまり意味がない」とのことでした。A 氏に解雇の通知を出すと同時に彼の手紙への反論を記しました。出す前に弁護士にその反論内容を見せると「この手紙を出すことで君の怒りが多少なりとも収まるなら出した方がいいだろう」と諦め顔で言っていたのを思い出します。

この事件は私にいろいろな教訓を与えてくれましたが、やはり人を使う難しさというものを痛感させられました。米国、特に建築業界は訴訟が多いので、「訴訟に巻き込まれたくない」ということを A 氏に何回か話したことがあり、そういった人との争いごとを嫌がる気持ちの足元を見られたのかとも思いました。妻は「あなたにしては珍しく、いつもまでも根に持ってるのね」と言います。生きているとこんなこともたまにはあるでしょう、と自分に言い聞かせていますが、この事件を思い返すと、今もって何ともいえない気持ちになります。

(2007年7月)



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第22回 提携・パートナーシップについて
第21回 日本での出張
第20回 実力と外見
第19回 プライベート展示会の成功
第18回 米国企業とのミーティングいろいろ
第17回 面接の受け方
第16回 ベンチャー企業が育つ場所
第15回 瞑想の効用
第14回 インターン
第13回 (株)カネコ
第12回 篠田プラズマ
第11回 素晴らしい日本のベンチャー企業
第10回 ビジネス・スクールは役立つか?
第9回 コンサルティングの難しさ
第8回 初めてのセミナー
第7回 決裂
第6回 撤退の決断
第5回 新しいビジネス・チャンスの発見
第4回 自社の販売網構築
第3回 特許ライセンス vs. 自社販売網構築
第2回 会社設立準備
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