タイルは輸入コストの関係でアメリカで生産する必要があり、まずはその図面を書かねばなりません。アメリカ事情に適したタイルの種類と形状をまず
A 氏が図案化し、それを2人で煮詰めます。A 氏は在宅で仕事をしてもらっていましたので、彼の家でその作業をしていると、2階から降りて来た奥さんが、「とてもいいコンビね。2人の会話を聞いているだけでわかるわ」と言ってくれたりしました。仕事が進むときはいろんなアイデアがどんどんと出てくるものです。ほどなく必要なタイル図面ができあがりました。
また、大手タイルメーカーの E 社が紹介してくれた販売代理店候補を訪問し、ミーティングをしました。まだ日本語パンフレットとサンプルしかなかったのですが、基本原理は簡単ですので、商品理解にそれほどの説明を要しません。どの会社も非常に興味を持ってくれ、いろいろなアドバイスをしてくれました。今から考えると、当時の私は米国の代理店の特質や行動原理を分かっていたとは言いがたいのですが、そういった代理店候補を数多く回れたことはよい経験になりました。あとで「あの時、代理店の質問の真の意図はこうだったんだ」と分かることもあり、そういった経験は今の仕事に強く生きています。
いずれにせよタイル製造の遅れには参りました。タイルができないと、建築基準法をパスするためのテストもできず、パンフレットの写真も撮れないため、仕事がストップしてしまうのです。そのような状況でも
A 氏の給料は毎月支払わなくてはなりませんし、私も最低限の給料は必要です。今のような仕事をするようになって、アメリカに進出する日本企業が同じような問題に直面しているのを何度も見聞きしました。許認可を取ることに予想外の時間がかかったなど理由はいろいろですが、とにかく計画どおりに進まないのです。実際、諸事情で目の前の仕事ができないということはよくあります。そこでただ無為に過ごす人もいますが、私はそうなりたくありませんでしたし、無為に過ごす余裕もありませんでした。