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ベンチャー企業奮闘記!
ベンチャー企業奮闘記!
       
  筆者紹介:大澤裕さん(おおさわ・ゆたか)
ピンポイント・マーケティング・ジャパン/代表
慶応義塾大学経済学部卒。米国バンカーストラスト銀行企業金融部勤務(企業米国進出支援業務)を経て、米国カーネギーメロン大学経営学大学院に留学し、MBA 取得。1997年に起業し、2000年にシアトルへ。詳細は、2003年7月の 『ぶらぼおな人』 で。
   
       


第12回:篠田プラズマ

前回に続いて、我々がお付き合いさせていただいている日本の素晴らしいベンチャー企業をご紹介しましょう。

幼い頃、ウルトラマン・シリーズで TV 電話付きの腕時計で交信する隊員を見てわくわくしたものです。そういった SF ドラマによく出てくる装置に宇宙船の司令室に巨大スクリーンがあります。スタートレックでは不気味な敵将とカーク船長が巨大スクリーンを通して初対面するといったシーンがよくありました。また、宇宙戦艦ヤマトでは360度スクリーンの娯楽室で、雪が降る故郷の景色の中に佇んでいる船員のシーンもあったとおぼえています。こういった巨大で湾曲できるディスプレイパネルを本当に作っている神戸のベンチャー企業と我々は仕事をさせていただいています。

その会社は篠田プラズマ。世界で初めてフルカラーのプラズマ・ディスプレイを開発した元富士通フェロー・広島大学教授の篠田傳氏を中心として設立されたベンチャー企業です。この会社は富士通から「カーブアウト」という手法で今年4月に正式に独立しました。「カーブアウト」とは「切り出す・分割する」といった意味を持っています。親会社から特許技術や従業員を引き継ぎ良好な関係を持ちつつも、外部の資本や経営資源を積極的にとりいれるのです。親会社に完全に管理される社内ベンチャー、そして勝手に飛び出してしまうスピンアウト(またはスピンオフ)とは異なる新しい独立形態で、最近注目を集めています。

NHK 『プロジェクト X』 の主人公にもなった篠田氏と一緒に富士通を退職した技術者・研究者が約20名、それに神戸の元ベンチャー企業経営者を初めとする経営管理の専門家・事務員が集まり、現在では40名近い所帯になっています。皆、篠田プラズマの夢と可能性に賭けた人々です。その製品は従来の一枚ガラスでは製造の難しい150インチ以上のプラズマディス・プレイ。基本的にはプラズマ・テレビと同じ動作原理ですがガラス板の代わりに直径約1ミリで長さ約1メートルの軽量なガラス管とフィルム電極を使います。これが篠田プラズマの持つ中核技術で、製造設備への巨額な投資を必要としません。

これでプラズマ・ディスプレイの持つ自発光型の高画質な映像表示という特長を引き継ぎながら、150インチ以上の巨大ディスプレイができます。重さはプラズマや液晶の約10分の一。「軽く、薄く、曲がる超大画面」で、おまけに消費電力も格段に低くなりました。視野を覆う大画面は、人がその映像の中に入り込むような体験を可能にするため、今までの単純なテレビ映像の出力装置といった分野を超えたさまざまなアプリケーション(応用分野)が考えられています。我々もアメリカ市場調査・開拓をさせていただいているのですが、特にデジタル・サイネージと呼ばれる広告分野で大きな需要がありそうです。

順調な船出をしたものの、篠田プラズマはまだ独立したばかりです。本当に成功するまで幾多の難関が当然あるでしょう。しかしこういった独立が可能になったということ自体に変わりつつある日本を感じます。職業柄、私にはよく分かるのですが、今まで本当に多くの独創技術が日の目をみないまま消えていきました。「よい製品や技術は自然に広がる」なんていうのは、1万分の1の確率です。中小企業で販売力がないために広がらなかったもの、大企業の経営方針と合致せずに市場に出されなかった試作品など、数え切れません。

今回の篠田プラズマはカーブアウトという、いわば「大企業からの円満退社」という方法で独立し、外部の資本・人材を取り入れることで世界に羽ばたこうとしています。企業の技術製品で埋もれているものは相当にあるはず。篠田プラズマが成功すれば、日本中の技術者にも大きな夢を与えるでしょう。そのためにもがんばれ、篠田プラズマ!

篠田プラズマ
www.shi-pla.com

(2007年12月)



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