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第24回 : 不良少女Aになりたいアタシ 最近、妙に不良少女になりたくて仕方がないの。中森明菜が全日本有線放送大賞の新人賞を獲得した1982年、まだ小学生だったアタシは心の中で彼女を応援しながら、授賞発表のラジオ放送が流れるいつもの床屋で、スポーツ刈りをしてもらっていたのを覚えてるのよね。 あの頃の我が家では年末に散髪をするのが習慣だったの。年末に散髪をしそびれるとアタシのママは決まって「この子、去年から散発してないのよぉ〜。」とまるで昨年1年散髪しないで髪ボーボーみたいに正月で家に来る親戚に言うのよね。低学年の時はいつも父が毎週バリカンで丸刈りにしてくれてたけど、高学年になってちょっとおしゃれがしたくなってからは、唯一許されたおしゃれな髪型はスポーツ刈り、いわば角刈りになったのよ。床屋さんに行って角刈りを初めてお願いした時のことったら今でも覚えているわぁ。 母「ちょっとこの子スポーツ刈りにしてもらえますかぁ?」 床屋「う〜ん、ちょっとスポーツ刈りにはまだ短いかなぁ、何とかやってみるけどねぇ。」 自分では一生懸命我慢して結構長くなるまで待ったつもりではいたけど、スポーツ刈りの角を作るにはまだ短かったらしい。そうしてでき上がった髪型はスポーツ刈りと丸刈りの中間みたいなものだったけど、それでもバランスの整った左右の角を鏡で確認してはルンルンだったアタシ。 明菜が歌う 『少女A』 の歌詞の意味は当時はわからなかったし、『少女A』がどういう意味なのかもわからなかったけど、なんともいえないキックのきいたあの音楽と、彼女の不良っぽい歌い方、そして社会を騒がせた彼女のカリスマは、角刈りをしていたアタシにもちゃんとわかったの。 散髪中に動いちゃいけないのは知ってた。でもね、当時のアタシったらスポーツ刈りで左右の角のバランスがどんなに重要なのかを知っていても、頭がどうしても明菜でいっぱいだったのよね。床屋の席で角刈りにされながらも鏡の前に映っていたアタシの目は明菜に影響されてとても不良してたの。 あのころから約20年がたったある日、いつもと変わらずコンピュータのモニターと睨めっこしながら仕事をこなしていたアタシの頭の中に、ふと明菜が戻ってきた。 「マチルダ、仕事中にごめんなさいね。」 アタシの気持ちとは裏腹に、エレキトリック・ギターの音がきいたあの 『少女A』 が流れてくる。始まっちゃったわ。心の奥に他の思い出と一緒にしまっていたあの不良マチルダが、歌と共に呼びかけてくる。だめよ、今は仕事中なんだから。そんな真昼間から不良になってる暇なんてアタシには無いの、だからお願い・・・。 仕事と私生活を快適にこなしている時に限って訪れる、この不良願望。今回はアタシをどんな不良にさせる気なのかしら。そうこうするうちに、それはアタシの中でどんどん大きくなってきた。仕事中だというのに。そうだわ、ラベンダーよ。アロマテラピーの力を借りて、心を落ち着けて!でもアタシの新しい友達、ラベンダーったら、今日も水をあげたのにまた虫の息で元気なしだわ。とりあえず、深呼吸よ。でも、ラベンダーを鼻に近づけて息をしようとしてみたけど、どうやらアロマの力が足りなかったみたい。仕事に戻りたくても、明菜がアタシを別の方向へと引っ張っていくの。まるでそれは明菜とアタシの綱引き。誘惑に引っ張られながらも仕事に復帰しようとしても、やっぱりだめ。だってどうしても明菜と一緒にマイクを握って少女Aを歌いたがっているアタシがそこにいるんですもの。 みなさんもこんな風に全然集中できない時ってあるかしら?そんな時にみなさんはどうやってそれと闘っているのかしら?あたしの場合、学生の頃にはこの不良願望が頻繁にあったの。宿題もクラスも何もかもすべてを投げ出してどこかへ行ってしまいたい気持ちって言うのかしらね、こういうの。で、自分の目の前に迫る締め切りを見て、ひぇ〜っと白目になってた。キャー、そんなこと考えただけでも胃液が逆流してきそうだわ! 社会人になってからは、そういう気持ちになることはとても少なくなった。朝起きて、会社で仕事して、帰宅して晩御飯を食べて、寝て、また翌朝の繰り返し。こうやって書いてしまうととてもさえない生活のように聞こえてしまうけど、この生活の一定のリズムはアタシの心を機能的に引っ張ってくれる、ある意味で良い解決法だったの。つまり、考える暇を与えないっていうことかしら。このリズムをしっかり守っていかないと、どうしても途中で何か考え事をし始めてしまって、答えが出ることのないままに、さらに深く考えてしまうと、そこから離れるのがもう大変。逃げ場がなくなっちゃう。それにしてもなんでアタシ今日に限ってこんなに不良少女Aになりたがっているのかしら?もしかして毎日が満たされていないのかしらん、なんてまた考えてしまった。 その日は仕事は何とか終わらせたけど、帰りの車の中でも明菜はアタシの頭の中で少女Aを歌っていたわ。アタシの体と心が何かを訴えようとしていて、でもそれが何かがわからない。仕事だと何か問題が生じると解決方法をすばやく発見して改善へとつながるはずなのに、アタシ個人のことになると、なんともそういうわけには行かないみたい。解決するというより、あえて破局に持っていこうとしてしまう見事な駄々っ子ぶり。これは重症だわ・・。 自分が求めている生活っていったい何なのかしら?家がほしいのかしら、良い仕事がほしいのかしら?趣味が必要なのかしら?ゴールを持てと人は言うけど、ゴールっていったい何なのかしら?そして、そのゴールってどれくらいの期間で達成できるようにすれば良いのかしら?よくわからない。 昔、若手芸能人のあるコメントを聞いたアタシの周りの大人達が「若いわね〜、あの子、ちょっと常識がないんじゃない?」と呟いくのを聞いて、「へぇ〜常識が無いんだぁ」って自分の中でイメージしていたその芸能人が、最近のテレビ番組では立派な熟女に大変身して、神様のように崇められていた。人の価値観って時代によってさまざまに変わるものね。アタシの価値観も時と共に変わっているのかしら。 幼い頃、悩み事があると私はいつも心の中で「どうせ3年後には思い出話になって笑ってるに決まってるわ」って無理に自分を慰めながら、大人になったらいろんな悩み事はすべて解決すると思っていたの。とんだ間違いだったわ。あっ、でも一度克服した問題が再発した時に対処をするのが楽になるのは確かかしら。でも新たに感じたのは、いくつになっても年に応じた問題があるということよ。 あら、っていうことはアタシの『少女A』チックな不良願望って、別に少女じゃなくてもいいってことなのかしら?ババアでも不良になれるってこと?じゃあアタシは少女Aぶってる "お婆Z"?そんなの全然かわいくないじゃない。それに、アタシの中でむずむずしているこの噴き出しそうな気持ちっていったい何なのかしら?新たな吹き出物?そんなのいやよぉ! また来月! マチルダ 注)当ページに記載されている内容は個人の一意見です。この情報に基づいて行動した結果なんらかの損害が発生した場合においても、執筆者およびジャングルシティは一切責任を負いません。記載された情報を活用される場合は、あらかじめ専門家に照会するなど必要な確認を行った上、ご自分の責任で判断していただきますようお願い申し上げます。 |
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