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マチルダです。1年間の休暇を経て帰って参りました。現在米国でアタシの人生第3章目を満喫しております。1年の休暇でしっかり充電。もう誰もアタシのこと止められない。そんなアタシのバスルーム・コラム、がんばってお風呂にコンピュータ持ち込んでマッタリと読んで下さいな。感電しないよう、お気をつけあれ!
 
       
 


第21回 : そこには死があって、そして新たな生があった。皆さんサル年よ!の巻

皆さん、遅ればせながらあけましておめでとうございます。今年もよろしくね。昨年の暮れからお団子ちゃんの健康問題や友人の不幸などで何かとばたばたしているうちに、あっという間にきてしまった新年。気がついたら紅白も終わっていたわ。

年末のある日、お団子ちゃんが心臓の痛みを訴え病院に検査も含めて、1日入院した。病院のベッドでなかなか寝付けない彼は、食事も制限されてなんとも満足できない状態。アタシしかいないアパートに帰宅した直後に携帯電話に彼からの電話が来た。

「お腹がすいたからチャーハンか何かを持ってきてほしい・・・」

お願いしている本人もさすがに病院の先生に注意されるのを承知で、まるでおいたをして飼い主に叱られた猫がごめんなさいを訴えているような上目使いになってアタシの反応を伺いながら、チャーハンが食べたいと訴えていた。アタシの心の中で葛藤が生まれた。

「だめよマチルダ、お団子ちゃんに餌を与えちゃ駄目。ここは愛の鞭よ。明日は身体検査ですもの。ここは強くびしっとガマンさせるの!」

「あ〜ぁ、やっぱり病院食じゃ我が家の僕ちゃんは満足できるわけないわよね。ひもじい思いをしているのかしら。ちょっとかわいそう。彼の声も少し弱っているし・・・。何か持っていってあげようかしら・・」

「いや、マチルダ。よく考えて。これはグレムリンよ。どんなにギズモがかわいくか細い声で訴えても、決して何も与えちゃ駄目!我慢させなさい。びしっと突っ返すのよ!1日くらいガマンガマン!」

心の中の葛藤は続いた。でもやはりひもじく、そしてか細い声を上げてチャーハンを要求しているお団子ちゃんの様子を電話で伺うと、どうしてもほうっておくことが出来なかった。心臓の関係で入院をしているから、油物は避けなければということが頭に浮かび、何気なくアタシの視界に入ってきたのは蒸しパンだった。
「蒸してるからだいじょうぶっ」
ナース・マチルダのなんちゃって論理とともに、蒸しパンの配達大作戦は開始された。

ジャンジャン♪ジャジャージャン、ジャンジャン♪ジャジャージャン♪(スパイ大作戦より)

面会時間はもう終わっていたから、「先生、ごめんくださいまし」と心の中でお詫びをした。お団子ちゃんの病室にたどり着くためには・・・。アタシの気持ちの中は、チャーリーズ・エンジェルズのルーシー・リューにも負けないくらいのスペシャル・エージェントぶり。一歩間違えたら警備員に病院からつまみ出される。そんなことになったらお団子ちゃんに蒸しパンは渡せないわ!失敗は許されなくってよ。

お団子ちゃんの病室忍び込み作戦が刻々と進む。病院に到着して壁越しからスーッと顔を出して誰もいないのを確認すると、くのいちマチルダは流し目をしながら周りの状況を把握して、着々と彼の病室へ。正面玄関の鍵がかかっていたので、救急治療室の入り口からのもぐりこみ作戦を選んだ。「アタシって頭いい〜!」と思っていたんだけど、後で友人が言うには、自分も以前同じようにして病院に潜入したことがあるとか。オリジナルだと思ったのにぃ。

アタシの緊張とは裏腹に、お団子ちゃんの病室潜入は友人が言ってたように案外簡単だった。なぁ〜んだっといった具合に無駄に費やした緊張感がとてもアタシのリズムを崩した。

彼の病室に入った時の彼の驚いた顔といったらとてもコダック・モーメントだった。面会時間終了の報告を受けたお団子ちゃんは、アタシがお見舞いには来れないだろうとあきらめていたの。甘いわね、お団子ちゃん。アタシは一度行こうと決めた所なら、それが月だとしても赤いカーペットを敷いて一歩一歩進むのよ。何年一緒にいるのよ、アタシのハードコアな性格を理解していただけて?

こうして蒸しパン配給作戦は無事終了して、なんと検査結果も問題なく翌日退院。心臓を壊すなんて、今あの人に逝かれちゃこまるのよ、アタシ。無事で良かった。たった1日の入院だったけど、お団子ちゃんの退院を祝ってファミリー・レストランで外食することに。その晩御飯の最中に電話が鳴った。お団子ちゃんの大学時代の学友ジョージの彼氏マイクからだった。

「ジョージが心臓発作で、昨日から入院しているんだ」

お団子ちゃんの状態とは違って、ジョージの容態は悪化し、現在昏睡状態だとか。お団子ちゃんが無事退院してホッとしていたけど、あたし達はまた緊張することになった。

アタシ達の壮絶な12月の始まり始まり。それからはずっとジョージのお見舞いの毎日だった。ジョージには家族もいないらしく、身内はフィリピン育ちのマイクだけ。

でも、あたし達の看病の悔いもなく、彼は12月19日の朝に息を引取った。生命を維持するために体につけていた13種類以上の機器を取りはずして元気になりかけてから2日目に、ジョージはあたし達にさよならも告げず息を引取っていった。1ヶ月前まではあんなに元気だったのに。また友人の1人があたし達の友達の輪から姿を消していった。

お団子ちゃんとジョージ。同じ大学を卒業して、同じ分野の職業につき、そしてそれぞれ同じくらい年の離れたアジア人の彼氏を持ち、そして同じ日に心臓発作の関係で病院に入院した。お団子ちゃんは翌日ファミリー・レストランでアタシと無事退院を祝い、一方でジョージは病院から帰ってこなかった。2人の人生の別れ道。酷なもんね。

こんなに偶然って重なるものなのかしら、皆さん。とても人事には感じられなかった。クリスマス直前の友人の不幸は、アタシのハートを動揺させた。

マイクは大丈夫なのかしら。ジョージが息を引取った翌日、ジョージのコンドミニアムに住んでいるマイクを家に招待して、夕飯を共にすることにした。マイクはジョージとの関係を現在形で話し続けた。まるでジョージがまだ病院に入院していて、明日にでもまたお見舞いに行くかのように。身内がそばにいないマイク、あたし達が家族になって彼を支えていかなくちゃだわ。

年末のさまざまな行事もあって、ジョージのお葬式はクリスマス後の週末に行われることになった。ジョージの家族を電話帳などで一生懸命探したけど、東海岸に住んでいる遠い親戚が1人見つかっただけだった。何十年も連絡をとっていなかったらしいけど、親族ということで葬式に参列してもらうことになった。葬式の前にお団子ちゃんとマイクがジョージのコンドミニアムを掃除して、遺言を探したり、アルバムを整理したりした。また、親戚がジョージのコンドミニアムを訪れてびっくりしないように、ちゃんとエッチ本などのお遊び道具を処分したりもした。こういうのって、あたし達の社会ではありがち。

人が死ぬ時って、生年月日から出生地、学歴に生活形態まで、その人のさまざまな情報など、その人の人生の歴史が一気に公開される。そして、他界していった人達の所持品が形見となってどこかの誰かに受け継がれる。こうして歴史は塗り替えられていくのかしらね。

以前アタシのママが、きれいな下着を購入するたびに言っていたっけ。

「きれいな下着で死にたい」

病院に運ばれて汚れた下着を見られるのがいやだそう。死んだらそんなの何も自分ではわからないのに、しかもアタシにそんな新しい下着姿を披露してくれなくって結構ざんすっ、と、いつも呆れながら聞き流していたアタシはまだ10代だったけど、もうそういう細かいことを気にし始めてもおかしくない年頃になっているのかしらね。

クリスマスが終わって2日目の土曜日の昼に、ジョージのお葬式が行われた。ジョージが天国から口出しすることはできないけど、その日は亡くなったジョージを見送るために、教会にはたくさんの人々が訪れた。聞こえてくる会話は、ジョージはこうだった、ああだった、といったジョージ・オン・パレード。ジョージは思いっきりスポットライトを浴びていた。そしてその人ごみに囲まれた、ジョージの親族とマイク。マイクはアタシとお団子ちゃんを見つけると、そっとあたしの腕を握って、

「これからはあんた達が、アタシの家族だから」

一瞬、3人で目を潤ませて、新しい家族の絆を深めたわ。またアタシに叔母が1人増えてしまった。アタシは姪っ子で、かわいい末っ子はいつだってアタシ。そこのところ、マイクは理解してくれているのかしら。まあでも旦那の葬式の時ぐらい、マイクにはかわいい末っ子の座を譲ってあげるわ。アタシってそこまでかわいい子の座に飢えてるわけじゃないの。

葬式が終わって、お腹がすいたあたし達は行き着けのカフェで外食して、一息入れることにした。そこはあるゲイバーが別室で経営しているレストランなんだけど、赤ちゃんの声がアタシの背後から聞こえてきた。あら、こんなところに赤ちゃんが?振り返ってみると、まん丸で、くりっとした目をして、ちょっと天然パーマの髪がおしゃれにかわいくスタイルされて、ピンクのおベベをまとった1歳くらいの女の子が微笑んでいる。すると、

「サマンサ・・・、新しいお友達を見ているのかい?」

そばにいたカッコイイ父親が、そのサマンサという女の子の頭をやさしくなでて、微笑んだ。すると、もう1人のカッコイイ父親が横から現れて、ちょっと照れ笑い。そう、それはカッコイイ父親2人に見守られた、その光景の歴史的な重要性にまだ気づいていない、無邪気な女の子だった。この子もまた歴史を背負って生きていくのだわね。

「この子が20歳になるころには、社会がもっと理解にあふれていて、平和であってほしいものねっ。でも、アタシもこのカッコイイ父親2人に囲まれたいかもぅ・・・うふっ:)」

アタシはそんな邪念と共に優しい期待を胸に抱いて、デザートのプリンの最後の一口を終わらせた。

そして、アタシが気がつく前に、もうサル年にこんにちわしてたざんす。

さぁ、今年はどんな年になるかしらねぇ。あ、アタシはちょっくらお団子ちゃんのバレンタインのプレゼントでも買ってこようかしらん。それじゃ、ごめんくださいませ。また来月!

マチルダ


注)当ページに記載されている内容は個人の一意見です。この情報に基づいて行動した結果なんらかの損害が発生した場合においても、執筆者およびジャングルシティは一切責任を負いません。記載された情報を活用される場合は、あらかじめ専門家に照会するなど必要な確認を行った上、ご自分の責任で判断していただきますようお願い申し上げます。
 



Matilda!

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新しい友達、アロマテラピーに守られて
髪の毛
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