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第13回 : 「お団子ちゃん頑張れ、お団子ちゃんは大きいから大丈夫よ!」 マチルダの母、日本からの応援の巻 皆さん、こんにちは。とうとう戦争が始まってしまったわね。戦争で亡くなった方、その遺族の方々に、深くお悔やみ申し上げます。早く問題が解決して皆が落ち着いて心地よく生活できる日が来ることをお祈りします。 さあ、アタシは先日ハニーを救急治療室へ連れて行くことになって、とても大変でした。うちの人ったら、夜中にいきなり唸りだしてね。でも真夜中でアタシも寝惚けていたので、始めはこの人がシャワーを浴びているとばっかり思っていたの。うちの人ったらシャワーでいつも歌ったり唸ったりしているもんだから。あらやだ、別に変なことしているわけじゃないんですよ。単にジジーになって、何するにも和田アキコのように一発気合を入れているだけなの。また今回のもそうなんだろうと思ってボーッとしていたんだけど、どうやら今回はとても気持ちよい唸りには聞こえなくて、そうこうしているうちに突然とてもか細い日本語で、 「ウ〜、イィ、イィタァ〜イデ〜ス・・」 「ウ〜、イィ、イィタァ〜イヨゥ〜・・」 あら、アタシねぼけてこの人を蹴っちゃったのかしら?それにしてもこいつの日本語可愛いの〜、なんて思いながらそれでもアタシはウトウト。でもやっぱり今回は少し様子が違う。あまりに唸っているから目を開けてみると、彼は腰の痛みで一定の体勢に留まることが出来なくて、腰に手を置きながら歩き回っている。 「ちょっとお団子ちゃん、どうしたの?」 彼の推測では、どうやら以前経験した腎臓結石と同じ痛みらしい。あらやだ、覚えてるわよ。かれこれ3年前もこれで大変だったわ。痛い痛いと叫ぶお団子ちゃんの横で911に電話して救急車を手配することに。いくら英語が話せるようになっても救急車手配となると「ア〜Ah... ウ〜Uh...」と頭が真っ白になってどもってしまってね。電話で医療関係の単語がバンバン飛び交って、質問されても「ア〜ウ〜」。当時この人と一緒になって3年が過ぎてたけど、自分ってこの人のことこんなに知らないのね、と自信を失いながらも、普段は自分たちの寝室に他人がどんどん入ってくることなんて無いから、お団子ちゃんの容態も心配しつつ、救急車が来るまで寝室の整理もして。病院に行ったものの、年の差やらその他いろいろな理由でアタシたちの関係を証明できず、家族として見られることもなくて大変でした。 さて、以前はハニーの会社からの保険があったんだけど、今回は保険無しということもあって、アタシが自家用車で救急室に運ぶ事に。まずは病院に電話をし、手続きを済ませて早速車で送迎。病院に到着直後、彼の症状や病歴などの質問事項があったけど、今回はアタシ準備バッチリ。毎日服用している薬の瓶もしっかりお医者さんに説明出来たわ。でも看護婦さんたら、アタシたちの関係も聞かずに "Don't worry, your dad is going to be all right." えっ。アタシのパッパッパパ?思わずズッコけちゃったわ。パパですって、アタシの。アタシったら思わず噴出しちゃったけど、そんな看護婦さんの誤解を正すことなく、思わず話をあわせて「ありがとう」って言って流す事にしたの。もちろん落ち着いてからはハニーがしっかりと誤解を解いてくれたけど。アタシはそれよりもこの看護婦さんが3年前に経験した病院とは違って、少なくともアタシたちにとってのお互いの重要性を認識してくれた事にほっとした。数十年前まではきっと彼とアタシの肌の色違いや年の差、それに同性となっちゃ、家族のような関係を想像することすらなかったこと。そんな中でアタシ達の互いの関係の重要性を親子としてでも察してくれた看護婦さんに乾杯してしまった。時間がかかってはいるけど、社会はどんどん成長していってるのね。 さて、今回のハニーの腎臓結石、前回の治療と違うのは保険が無いということ。結石は試験によると8mmのものらしい。超音波で散らすという方法も医者から紹介されたけど、保険が無いと治療費用は100万円近くに。しかもそれまでの検査費、緊急治療費、薬代、そしてその他の費用で既に医療費を手配できない状態になっていたアタシたちには、とてもじゃないけど手の出ない治療方法だった。民間治療に頼るしかないのね、今回は。それは、クランベリージュースなどの酸味が強いものを飲んで、痛み止めを常時服用しながら結石の溶解を待つというもの。もちろん最後には尿道から結石を出すことになるんだけど、この方法で気を失う人もいるらしい。 以前アタシの会社から提供されている保険に扶養家族として加入していたけれど、昨年半ばに会社の状況が悪化した際に見事に廃止になってしまったドメスティック・パートナーの保険特典。会社の中で唯一アタシだけがこの特典を利用していたということもあって、とても大変だった。 アタシの会社はH1-B(就労ビザ)を援助してくれた。その恩があるから、会社にハニーの保険のことを抗議をするのがものすごく気が引けて。もし抗議してクビになって日本に帰ることになったら、アタシのハニーと別離しなくてはならない。クビにならずとも、アタシのハニーの保険を援助することで会社がまた不安定になったら・・・。会社が加入している保険の詳細によると、ドメスティック・パートナーの援助を与えるには、会社に膨大な追加費用がかかってしまうらしい。 そんないろいろな不安を抱きながらも、社会に出てから同性愛者としての差別に、この時また直面したような気がする。もしハニーとの関係が法的に認められていたら、こういった差別はあってはならないものだから。 そんな悩んでいる時にアタシのボス、イメルダは言ってくれたの。 「失うものは何も無い。まず発言してみないことには何も始まらないよ」 そんな彼女の一言を胸に、自分の気持ちを社員全員の前で発言することにしたの。その時の緊張ったら大変だったわ。 最初から与えられていなかった特典なら、こういった気持ちは絶対生まれなかった。入社時にその特典を与えられて、しかもその特典を充分に活用してた私とハニーには、保険を奪われた時の打撃はとても大きかったの。だって医療費が全然違うんですもの。薬の費用は保険があれば一瓶約15ドル、保険無しだとまったく同じもので90ドルから150ドルもする。しかもそんな高価な薬を数種類毎日服用するとなると、いくら家計のやりくりをがんばってもついていけない。一生懸命、一家の主野郎になって働いても、医療費でどんどんお金が羽を付けて飛んでいく。 でも、会社はアタシたちの状況を察して、一生懸命アタシたちに役立つ医療情報を提供してくれた。州が提供している低収入者向けの医療団体を紹介してくれるなど、会社側も責任感一杯で私たちを支援してくれた。 日本にいるアタシの家族は、やはりこういった日米での医療保険事情の違いを頭では理解してはいても、やはり実際問題になると保険の為に超音波治療ができないということに苛立ちを隠せなかった。そんな中、腎臓結石で尿道から石を出して完治した経験があるアタシの父が、シブシブの一言。 「ありゃ〜痛いけど、男だったら気合入れれば大丈夫だ。がんばれと言っといてくれ」 「気合入れたって、しかも男だって痛いものは痛いのよ〜、パパ」(アタシの心の中の声) そしてアタシのママも、 「あら〜、お団子ちゃん可愛そうね。ちゃんと面倒見てあげてるの、貴方。ママがマチルダ産んだ時は大変だった・・・blah blah blah...」 とまあアタシがちゃんと面倒見てるかネホリハホリと偵察。ママ、これは妊娠じゃないのよ。赤ちゃんが尿道からこんにちはしてくるわけじゃないの。 そんなアタシのママったら最後に一撃必殺のこんな一言。 「でもね、お団子ちゃんはアメリカ人で大きいはずだから、石もスルスル〜って大丈夫よ。ね、ね。スルスル〜ッと」 ね、ねって貴方。何言ってるかと思ったら、ウチのママったらトンでもないことをサラっと言いのけて国際電話を切ったわ。さすが彼女、だてにアタシの母親やってるわけじゃないわね。 そんなうちのママは最近電話してくる度に、 「お団子ちゃんはもう石出たのかしら〜?」 と暢気に確認して。心配しないでママ。石が出た暁には"It's a boy!"のポストカードと共に、赤飯炊いてお祝いさせていただくわ。 保険が無くて医療費の支払いに追われ、火を噴いている今日この頃なアタシ達だけど、同僚やら両親やらに励ましてもらって、がんばって強く生きていくわん。 それでは皆さん、また来月! マチルダ。 注)当ページに記載されている内容は個人の一意見です。この情報に基づいて行動した結果なんらかの損害が発生した場合においても、執筆者およびジャングルシティは一切責任を負いません。記載された情報を活用される場合は、あらかじめ専門家に照会するなど必要な確認を行った上、ご自分の責任で判断していただきますようお願い申し上げます。 |
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