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今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。
第8回 : それ恥ずかしくない?
シアトルにきてダンナの家族(白人アメリカ人)と住むようになって、こんなにがさつなあたしでも実は繊細だったのね、と自分を再発見してしまうことがよくあった。単にそれは脈脈と受け継がれる日本の文化のおかげであって、25年間も日本で生活していたのだから身に付いて当り前のことなのだけれど。
中でも「恥ずかしい」という感覚の違いについては、今でも興味深い。どこの国にでも「内気」な人は存在すると思うし、人前で「恥ずかしがる」気持はあると思う。それを抜きにしても、
「ねえ、それ、恥ずかしくないの?」
と思わず聞きたい衝動に駆られることが度々あるのだ。
例えば、私が洗面所を使っているときに、ごく当り前のように用を足すのに驚いた。と言うより、
「使ってもいいけど、それより誰かがいるところで平気で用を足すことを 恥ずかしく感じないのかなあ?」
と疑問に思っていた。ダンナに言わせると、
「なんで恥ずかしいの?結婚してるのに」
と言うのだが、いや、結婚しててもあたしは人の見てるところで用を足すのは いやだ。よく考えてみれば、洗面所とトイレと浴室が一緒に くっついているのだから、いちいち家族の誰かが使っているのを待ってい るのは、朝の忙しい時間帯には不便だろう。おもしろいことに、うちのダンナは大便に関してはひとりでないとはずかしいようだ。私が洗面所を 使っていると、そわそわと私のまわりをうろつきだし、
「まだ?」
と無言で 訴えながら私が終るのを待っている。ということは、一応用を足すこと に多少の羞恥心はあるということだ。別に小も大も変わらないからあたしが いても気にせずどうぞ、と言うのだが、本人はガンとして私が終るのを待っている。
恥ずかしくないの?と聞く以前に、「すげーなーパチパチ」と圧倒されることもある。例えばプールのシャワー。近くのコミュミティセンターのプールで繰り広げられる光景に最初は圧倒された。みな当然のごとくすっぽんぽんでナイスバディを惜しげもなくさらけだしながら、その上、MYシャンプーやら MYソープを持ち込んで、となりの人となにやら談笑しながらシャワーを浴びているのだ。
また、Stevens Pass近くの温泉に行った時のことだ。温泉、と行ってもホットタブみたいな感じで、みんな水着でお湯につかってる のかなあ、と思い水着を持参した。しかし、私がみた光景は、私の予想を大幅 に裏切っていた。いもの子を洗うがごとく、浴槽にびっしりとすっぽんぽんの男女がつまってい た・・・。お湯からあがって、ほてった体を休めている人々も、あられもなく裸を堂々とさらけだし、どこを隠すということもなく、おだやかに笑っ て会話をしている。そのそばを、ちぎれんばかりにしっぽを振って犬が走り、浴槽の真中に瞑想を気取って裸でぷかぷか浮いてる女性もいる。うーん、す、すごい。 しかも今回は、男も女もみーんな裸ではないか。き、君たち恥ずかしくないのか?いや、そんな愚問をするわけにはいかない。恥ずかしいわけないよなあ、この様子じゃ。
「日本にも混浴露天風呂があるでしょ?」
とダンナは言う。
「 ええ、確かにあるよ。でもね、男性諸君の期待を裏切るようで 悪いけど案外おばーちゃんしかいなかったり、時間によって男性だけ、女性だけ、と 時間制限をしている露天風呂も最近は多いから、若いおねーちゃんの裸を拝める 機会なんてあるようでないもんなんだよ」
最大の違いは、隠すという行為があるかないかである。 銭湯でも温泉でも、1か所か2か所を手ぬぐいで隠す人が多い。ま、女ばっかりだか らいいじゃない、と隠さない人もいるが、男性がいることを意識すればほとんどの女性は隠すだろう。 こんなにあけっぴろげに男女で裸になるのなら、なぜ男女別更衣室が必要なのか?なぜプレイボーイのような男性誌が必要なのか?無料で実物が見れるではないか。それとも、ただ単に皆、体に自信があるからなのか?こんなくだらないことがぐるぐると頭の中を駆けめぐった。
「恥ずかしい」という感覚は、要は「他人の目をどれくらい気にするか、気にしないか」で決まってくるのではないだろうか。そして何が恥ずかしいか、というのも その人の生活している環境、文化によって大きく違ってくるものなのだろう。また、どれだけ自分に自信があるか、という要素もかなり大きい。 私でさえ、私が恥ずかしいと思わないことを他人が恥ずかしがっていたら、
「何が恥ずかしいの?」
と不思議に思うのだから、ましてやダンナにとっては私は未知の生物に見えるに違い ない。あー、とか、おー、とか驚きながら、いちいち、
「ねえ、それはアメリカでは当り前のことなの?それともあんたの家族の習慣?で、恥ずかしい気持はないの?」
とリサーチを始めるのだから、さぞかしうっとうしいことだろう。
人の目を気にしすぎるのも疲れるが、25年も日本漬けになった脳味噌は確実に「恥ずかしいと感じる範囲」が広く固定されてしまって、もはや修正不可能 の感がある。しようがないので修正可能なところは、おりゃ、と一発奮起トライし てみるが、ダンナには相変わらず、
「You are too shy!」
と半ばあきれられている私なのであった。
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最終回
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第53回
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第52回
家を買うことにした "もうこれでいいや"
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家を買うことにした "3度目のオファー・2度目のインスペクション"
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第50回
家を買うことにした "3回目のオファーを出す前に"
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第49回
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第40回
「人の話を聞いてるの?」 (後編)
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「人の話を聞いてるの?」 (前編)
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第38回
「効率的」と「がさつ」の境界線
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第37回
要はしつけ次第
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第36回
新年の抱負は達成されるか?
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第35回
ガイジンの私と移民局(その2)
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第34回
ガイジンの私と移民局
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