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  今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。    
       


第52回 : 家を買うことにした: もうこれでいいや


Heat Exchanger(熱交換器)の亀裂は生命に関わる重要な欠陥だから、これくらいは直してもらえるわよね、と何の疑いも抱いてなかったが、当然のごとく断られてしまった。どうやら売り側は修理する気なんてさらさらなかったらしい。

ううっ、これは立派なメンテナンスの怠慢ですぞ。年一度の定期検査で当然修理されるべき問題ではありませんか。壊れたものを知らんぷりして売りつけようとするとは、なんとふてーヤローだ。その上、人を雇って検査したけれど、異常は見当たらなかったわ、と売り手側は言い張った。一体、どんな人雇ってるんだよ〜。建物検査に立ち合ったズブの素人のダンナでさえ確認できたほどの亀裂を見逃すとは、どこに目をつけてんでぇ!

しかし、一酸化炭素の混じった空気を吸って気づかないうちに体が蝕まれては遅いのよ。どうにも売り手側が「何の異常もない」と言い張るので、しょうがなくこちらの費用で調査員をもう一度派遣し、検査することにした。結果はやはりこちらの指摘した問題が見つかり、売り主はいやいやながらその問題を認め、修理することにようやく合意してくれた。

もう、嫌じゃ・・・。シアトルの売り手は強気すぎて、あまりこちらの言い分を聞いてくれないのね。この交渉状況が気に入らなければまた他の物件を探せばいいのだが、2度目のオファーの時も同じような展開だったし、どの家を選んだとしても同じように強気で交渉してくるのだろう。私たちとしても、この家に決めてしまいたかった。色々な物件を見て来たが、シアトル市内の希望の地域の家は古いものが多く、修理の必要のない家なんてきっと見つからない。ボロな建物をチマチマと修理していくのが唯一の道なのだ。

そういえば、オファーを出してから気づいたのだが、この家には皿洗い機がついていなかった。怠け者主婦の私にとっては必須アイテムだったのに〜。
「来年の私の誕生日プレゼントに買ってくれ。」
とダンナに頼むと、
「高すぎる・・・多分クリスマスかな・・・」
と苦しげに呟いた。「おい、私の誕生日よりもクリスマスの方が格上なのか!?」とくだらないことで一瞬憤ったが、問題は他にあるのだ。皿洗い機本体はそれほど高価なものではないが、それを取り付ける際、キッチンを少々リフォームしなければならない。何よりこの家は配管設備が古く、2カ所で同時に水道を使うことができない。例えば誰かがシャワーを浴びている時にキッチンで皿を洗う、ということができないので、皿洗い機を取り付けるとなると家全体の配管を新しいものに換えなければならないらしい。うーむ、皿洗い機の野望は数年先までお預けだな・・・。

2人とも家探しには疲れてきたので、これでいいや〜、決まり!と、とっとと終わらせたかった。交渉の部分はリアルターがやってくれたので、私たちが疲れるようなことはないはずだったが、正直言ってだんだん面倒くさくなってきたのである。

"Sell by Owner" の物件もあることはあったが、私たちはリアルターがいて本当に助かった。当初ダンナは、
「リアルターの仕事なんて、客を連れて家を見せて歩くだけ。簡単だよ。」
などと軽口を叩いていたものの、思いの他売り手は強力で、リアルターには交渉面で頼りっきりになった。初めての家の購入、ということもあり無知丸出しの私たち。あんな強気の売り手側との交渉をリアルターなしには乗り切れなかっただろう。金持ち客に振り回されるならまだしも、私たちのような若造から入る手数料なんて大したものでもないだろう。私たちは常々、
「こんな安い予算の私たちに3ヶ月も振り回されているリアルターも大変だよなあ。」
とやや彼女に同情気味であった。

交渉が終わってクロージングまでの間、あの家が自分たちのものになり、そこに住む姿がまったく想像できなかった。ただ、引っ越しメンドーだな、と思いつつ何もしないまま、クロージングの前日になった。

さまざまな書類にサインしていった。ああ、こんなすごい金額を本当に払い切れるのかしら。今日から住宅ローン族の仲間入り。頭金が購入価格の20%未満だったので、抵当保険(mortgage insurance)を月々払うのだが、うほっ、これが結構高い。こんなにしてまで今一軒家を買った方がいいのかな、とこの場に及んでまで疑問が頭によぎるが、決めてしまったものはしょうがない。

家を買ってもこれからがまた、修理費・維持費との戦い。ハウス・プロジェクトは一生終わることはないのだ・・・。


(またもや、つづく)


■ ■ ■

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最終回 ふと気がつけば5年目
第53回 家を買うことにした "買った後の修理費"
第52回 家を買うことにした "もうこれでいいや"
第51回 家を買うことにした "3度目のオファー・2度目のインスペクション"
第50回 家を買うことにした "3回目のオファーを出す前に"
第49回 家を買うことにした "迷い"
第48回 家を買うことにした "強気な売り手"
第47回 家を買うことにした "2度目のオファー・初めてのインスペクション"
第46回 家を買うことにした "ふりだしに戻る"
第45回 家を買うことにした "初めてのオファー"
第44回 家を買うことにした "住みたい場所、見つけた"
第43回 家を買うことにした "物件を探し始める"
第42回 家を買うことにした "序章"
第41回 「2人単位」
第40回 「人の話を聞いてるの?」 (後編)
第39回 「人の話を聞いてるの?」 (前編)
第38回 「効率的」と「がさつ」の境界線
第37回 要はしつけ次第
第36回 新年の抱負は達成されるか?
第35回 ガイジンの私と移民局(その2)
第34回 ガイジンの私と移民局
第33回 里帰り
第32回 服を買いに行こう
第31回 ケーキ作りへのあくなき挑戦
第30回 I'm honest, but I'm not popular.
第29回 ダブルカヤック
第28回 イベント
第27回 オリンピック
第26回 これは・・・使えるな
第25回 今年の正月
第24回 お金に対する感覚
第23回 Pink slip
第22回 嫌われる国際結婚女
第21回 言い訳できないアメリカ
第20回 夏の生活
第19回 親知らずを4本抜いた
第18回 ライバル登場
第17回 アメリカのOtakuたち
第16回 ハイキング
第15回 シアトル化
第14回 私の家族との初対面
第13回 今年の正月は日本に行ってやるぞ
第12回 2人でカウンセリングに行きました
第11回 日本ぽい料理
第10回 人の嫌がることはしないようにね
第 9回 カタカナと正しい発音
第 8回 それ恥ずかしくない?
第 7回 良いサービス?悪いサービス?
第 6回 コミュニケーションのデジタル化
第 5回 Rob the cradle
第 4回 We are in the same boat
第 3回 言葉摩擦
第 2回 気遣いスイッチ
第 1回 国際結婚、はじまりはじまり・・・
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